収穫祭 その2
巨大イノシシは、
ピースケと力比べをしたまま――
ぐぅぅぅぅぅ。
ものすごい音でお腹を鳴らしました。
沈黙。
ショウタが遠い目をします。
「最近、敵のだいたいの目的が“空腹”なんだよな……。」
サヨはちょっとかわいそうな顔。
「おなかすいてたんだ。」
巨大イノシシは苦しそうに鼻を鳴らしました。
「ブモォ……。」
将軍が鉄板を持ったまま言います。
「焼キソバノ匂イニ釣ラレタナ。」
ベルフェルがうなずきました。
「食欲は強い。」
しかし。
問題があります。
イノシシ、デカすぎる。
普通サイズの焼きそばでは全然足りなさそうでした。
ショウタが青ざめます。
「これ何人前必要なんだ……。」
そのとき。
サヨの目がキラッと光りました。
「収穫祭の大鍋!」
全員が振り向きます。
広場の中央。
収穫祭用の巨大鍋。
本来はスープ用ですが、まだ空っぽでした。
将軍がニヤリ。
「……作ルカ。」
ベルフェルも腕まくり。
「やるぞ。」
ショウタが叫びます。
「なんで戦闘から料理イベントへの切り替えが早いんだよ!!」
こうして――
“巨大イノシシ用・超特大焼きそば作戦”が始まったのでした。
広場は一気に大騒ぎ。
ゴブリンたちが野菜を運びます。
「キャベツ追加ー!」
「肉モ持ッテコイ!」
サヨとショウタもお手伝い。
ピースケは巨大鍋を運搬。
魔王はなぜか薪割り担当。
ドゴォン!!
薪が一撃で真っ二つ。
村人たち拍手。
「魔王さんすごーい!」
魔王、ちょっと満足げ。
一方。
巨大イノシシは広場の端で待機していました。
ちゃんと座っている。
お腹すいてるだけなので、わりとおとなしい。
ショウタが笑います。
「待ってるのかわいいな。」
クロノワールがぼそっと言いました。
「食への執念だな。」
やがて――
ジュワァァァァ!!
巨大鉄板で焼きそば完成。
とんでもない量です。
香ばしい匂いが広場いっぱいに広がりました。
イノシシの目がキラァァン!!
「ブモォォォ!!」
サヨが笑います。
「目が輝いた!」
将軍が巨大ヘラを掲げます。
「完成ダァァ!!」
大歓声。
そして。
超巨大皿へ盛り付け。
山のような焼きそば。
ピースケがそっと前へ置きました。
「どうぞ。」
巨大イノシシは一瞬止まり――
ガツガツガツガツ!!
ものすごい勢いで食べ始めました。
ショウタが爆笑。
「食うの速ぇぇ!!」
ゴブリンたちも大興奮。
「完食ペース速イ!」
「飲ミ物ミタイニ食ッテル!」
ベルフェルは真剣な顔。
「よい食べっぷりだ。」
数分後――
巨大焼きそば、完食。
イノシシは満足そうに座り込みました。
「ブフゥ〜。」
サヨが笑います。
「満足してる!」
すると。
巨大イノシシはゆっくり立ち上がり、
ピースケたちへ向かって頭を下げました。
「ブモ。」
ショウタが驚きます。
「お礼言ってる?」
クロノワールがうなずきました。
「そうだろうな。」
そのとき。
小さなイノシシが三匹、
森の陰からぴょこっと顔を出しました。
サヨが声を上げます。
「赤ちゃん!」
どうやら親だったようです。
巨大イノシシは子どもたちを守るため、
必死に食べ物を探していたのでした。
広場の空気がやわらかくなります。
ショウタも苦笑しました。
「なんかもう毎回そういう理由だな。」
ピースケは静かに笑います。
「大切なものを守りたい気持ちは同じですねぇ。」
巨大イノシシは最後にもう一度頭を下げると、
子イノシシたちを連れて森へ帰っていきました。
夕日が広場を赤く染めています。
そして――
村人たちから大歓声。
「収穫祭ばんざーい!!」
音楽再開。
屋台も復活。
ショウタは笑いながら言いました。
「結果的に今年の収穫祭、一番盛り上がったな。」
ベルフェルもうなずきます。
「焼きそばが伝説になった。」
将軍は腕を組みました。
「祭リ王ダ。」
「肩書き増えてる!!」
サヨは空を見上げながら笑いました。
「なんだかんだ、楽しい収穫祭だったね!」
ピースケも静かにうなずきます。
秋の風が吹き抜け、
広場には笑い声が響いていました。
どうやら今年もまた――
にぎやかで、少し不思議な収穫祭になったようでした。




