収穫祭 その1
秋晴れの朝――
村はいつもよりずっとにぎやかでした。
今日は年に一度の収穫祭。
広場には色とりどりの旗。
焼きトウモロコシの香り。
音楽。
笑い声。
そして大量の屋台。
ショウタは朝から大興奮です。
「祭りだぁぁ!!」
サヨも目を輝かせています。
「わたあめ食べたい!」
ピースケは、いつもの馬車で広場へ向かっていました。
しかし今日の荷台は荷物ではありません。
大量のパン。
ベルフェル特製・収穫祭限定パンです。
『秋のほくほくカボチャパン』 『リンゴはちみつパイ』 『超巨大焼きそばパン』
ショウタが最後を見て言いました。
「名前だけ普通じゃないな。」
ベルフェルは真顔。
「祭りには勢いが必要だ。」
エリシアはため息です。
「最近パン屋として完全に定着しましたね……。」
広場へ到着すると、
村人たちが集まってきました。
「ピースケだ!」 「でっかいニワトリ!」 「パンだー!」
子どもたちがわいわいしています。
ゴブリンたちも屋台を手伝っていました。
頭にバンダナ。
ちょっとかわいい。
「イラッシャイマセー!」
「焼キタテダヨ!」
ショウタが笑います。
「馴染んでるなぁ。」
すると。
ドドドドド!!
遠くからすごい音。
みんなが振り向きました。
現れたのは――
ゴブリン将軍。
なぜかエプロン装備。
巨大な鉄板を持っています。
サヨが吹き出しました。
「将軍さんも!?」
将軍は真顔でした。
「焼キソバ担当ダ。」
「似合いすぎる!!」
しかも大人気。
豪快な鉄板さばきで、
次々に焼きそばを作っていきます。
ジュワァァ!!
村人たち大歓声。
「うまそうー!」 「将軍焼きそば追加!」
将軍は少し照れていました。
「フ……。」
ベルフェルがぼそっと言います。
「完全に祭りの職人。」
そのとき――
広場の中央で、村長が鐘を鳴らしました。
カーン!カーン!
「それでは今年の収穫祭を始める!」
大歓声。
楽団が演奏を始めます。
子どもたちは走り回り、
屋台は大忙し。
平和そのものです。
サヨはりんご飴を持ちながら笑いました。
「楽しいね!」
ピースケも穏やかにうなずきます。
「ええ。」
しかし。
その直後――
ズシン。
地面が揺れました。
ショウタが止まります。
「……ん?」
ズシン。
ズシン。
遠くの森が揺れていました。
クロノワールの耳がぴくり。
「……来る。」
次の瞬間。
森の奥から飛び出してきたのは――
超巨大イノシシ。
三メートル級。
目が赤い。
しかも猛烈な勢い。
村人たち悲鳴。
「うわぁぁぁ!!」
サヨが青ざめます。
「でっか!!」
ショウタも叫びました。
「祭りに乱入してきたぁぁ!!」
巨大イノシシは屋台へ一直線。
ゴブリンたち大パニック。
「逃ゲロォ!!」
将軍が鉄板を持ち上げます。
「止メル!!」
しかしイノシシは速い。
ズドドドド!!
そのとき――
ピースケが前へ出ました。
「皆さん、下がってください。」
巨大イノシシが突進。
土煙。
大歓声どころではありません。
ショウタが叫びます。
「ピースケぇぇ!!」
しかし。
ピースケは静かに腰を落としました。
巨大ニワトリVS巨大イノシシ。
祭り会場が静まり返ります。
そして――
ドゴォォン!!
正面衝突。
衝撃で旗が揺れ、
焼きトウモロコシが飛びました。
サヨが目を見開きます。
「止まった!」
ピースケは踏ん張っています。
イノシシも必死。
土が削れました。
そのとき。
ショウタが気づきます。
「あっ!」
イノシシの視線。
向いている先は――
焼きそば。
将軍屋台。
ベルフェルがぽつり。
「……腹減ってるだけでは?」
沈黙。
イノシシ。
ぐぅぅぅぅ。
盛大なお腹の音。
ショウタが力抜けた声を出しました。
「またそのパターン!?」




