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ピースケの休日

ある晴れた休日の朝――


ピースケは、めずらしく荷車の前に立っていませんでした。


馬小屋の前には、小さな木の札。


『本日お休み』


ショウタがそれを見て目を丸くします。


「うわ、本当に休む日あるんだ。」


サヨもびっくり。


「ピースケ、今日は荷物運ばないの?」


ピースケは干し草の上でのんびりお茶を飲んでいました。


「ええ。たまには休日も必要ですからねぇ。」


こっこが羽をばさっと広げます。


「ついに休みを覚えたコケ!」


「前から知ってはいましたよ。」


今日は空も青く、風も穏やか。


絶好の“何もしない日”でした。


ショウタが聞きます。


「で、休日って何すんの?」


ピースケは少し考えました。


「……散歩でしょうか。」


「地味!!」


しかしピースケは気にしません。


「では行きましょう。」


「オレたちも行く流れなの!?」


結局。


サヨ、ショウタ、こっこ、そしてなぜか魔王までついてきました。


魔王は黒マント姿で腕を組んでいます。


「休日とは興味深い。」


ショウタがつっこみます。


「魔王って休みあるの?」


「昔はなかった。」


「ブラックすぎる……。」


クロノワールは塀の上を歩きながら、小さく笑いました。


「今日は平和そうだな。」


一行は村の外れの丘へ向かいます。


草原には黄色い花。


風はぽかぽか。


遠くでは羊がのんびり歩いていました。


サヨがうれしそうに走ります。


「きもちいいー!」


ピースケも静かに空を見上げました。


「……いい天気ですねぇ。」


しばらく歩いていると、小さな池が見えてきます。


水面は鏡みたいに空を映していました。


ショウタが石を投げます。


ぴょん、ぴょん、ぴょん。


「お、三回!」


魔王もやってみました。


ビシャァァァン!!


水しぶきが大爆発。


サヨが笑い転げます。


「ぜんぜんできてない!」


「なぜだ。」


ピースケは池のほとりへ座りました。


風が羽をゆらします。


何も急ぐ必要のない時間。


それは、ピースケにとって少し新鮮でした。


すると。


サヨが隣に座ります。


「ピースケ。」


「はい?」


「いつも大変じゃない?」


ピースケは少し考えました。


「……そうですねぇ。」


馬車を引き、


荷物を運び、


迷った存在たちを助け、


不思議な出来事に巻き込まれる毎日。


「でも。」


ピースケは池を見ながら静かに笑いました。


「みなさんといるので、案外楽しいですよ。」


サヨはにこっと笑います。


ショウタも少し照れくさそうに言いました。


「まあ、退屈はしねーな。」


そのとき――


ぐぅぅぅぅ。


またしても、お腹の音。


全員が振り向きます。


魔王が真顔で言いました。


「腹が減った。」


ショウタが笑います。


「毎回それだな!」


サヨはリュックを開けました。


「今日はお弁当あるよ!」


キャベツサンド。


卵焼き。


焼き魚。


そして特製キャベツパン。


魔王の目が輝きます。


「キャベツパン!!」


みんなで池のそばに座り、お弁当を食べ始めました。


風が吹き、


草が揺れ、


鳥の声が聞こえます。


クロノワールは木陰で丸くなり、


こっこはパンくずをつついていました。


ピースケはその光景を静かに眺めます。


戦いもない。


迷宮もない。


誰かを探す旅でもない。


ただ、みんなで笑っているだけ。


でも――


そういう時間も、とても大切なのだと感じました。


サヨが突然聞きます。


「ピースケの夢ってある?」


「夢、ですか。」


ピースケは少し驚いた顔をしました。


考えたことがなかったのかもしれません。


しばらく風の音だけが流れます。


そして、ピースケは穏やかに答えました。


「……ずっと先まで。」


みんなが顔を上げます。


「みなさんが、笑って旅を続けられるといいですねぇ。」


ショウタが少し笑いました。


「なんかピースケっぽい。」


魔王も腕を組みながらうなずきます。


「悪くない夢だ。」


夕方になるころ。


空はオレンジ色に染まっていました。


帰り道。


ピースケはいつもの荷車を引いていません。


でも、不思議と心は満たされていました。


休日とは――


体を休めるだけじゃなく、


“大事なものを確かめる日”なのかもしれません。


そんなことを思いながら、


ピースケは夕焼け空を静かに見上げるのでした。

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