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ダンジョン その5

カチ、カチ、カチ……。


巨大な時計の音が、静かな広間に響いていました。


さっきまでの冷たい空気は消え、忘却の地下迷宮はゆっくり光に包まれていきます。


天井から、白い粒が雪みたいに降っていました。


ショウタがぽかんと口を開けます。


「……終わった?」


クロノワールは静かにうなずきました。


「ああ。」


サヨはリナの手を握ったまま、ほっと息を吐きます。


「よかったぁ……。」


魔王も翼をたたみました。


「なかなか疲れる迷宮だったな。」


そのとき――


ゴゴゴゴゴ……。


広間がまた揺れ始めました。


ショウタが飛び上がります。


「えっ、まだなんかあるの!?」


クロノワールが天井を見上げました。


「崩れる。」


「うわああやっぱり!!」


石の天井にヒビが走ります。


バラバラと岩が落ちてきました。


ピースケは落ち着いた声で言います。


「急いで戻りましょう。」


「もっと早く言って!?」


みんなは一斉に走り出しました。


暗い通路を駆け抜けます。


後ろでは迷宮がどんどん崩れていく音。


ドォン!!


ガラガラガラ!!


サヨが叫びました。


「出口どっち!?」


クロノワールが前を走ります。


「こっちだ!」


魔王は巨大な岩を片手で押しのけました。


「どけぇい!!」


ショウタが息を切らします。


「なんで魔王が一番頼りになるんだよぉ!!」


そのとき。


リナが立ち止まりました。


「……あっ。」


ピースケが振り返ります。


「どうしました?」


リナは通路の横を見つめていました。


そこには、小さな青い光。


ふわふわ漂っています。


『……ありがとう。』


『……おやすみ。』


小さな声たち。


忘却の迷宮に閉じ込められていた、“忘れられた記憶”でした。


サヨが目を丸くします。


「……きれい。」


青い光たちは、迷宮の崩壊とともに空へ昇っていきます。


まるで、帰る場所を見つけたみたいに。


ピースケは静かに立ち止まりました。


そして、やさしく頭を下げます。


「……お元気で。」


ショウタが叫びます。


「感動してる場合かー!!天井落ちるー!!」


ドゴォン!!


巨大な岩がすぐ後ろへ落ちました。


「ひぃぃぃ!!」


全員、全力疾走。


そして――


眩しい光。


ドサァッ!!


ピースケたちは、地上へ飛び出しました。


その瞬間。


ズズズズズ……。


ダンジョンの入口はゆっくり閉じていきます。


やがて地面は元通りになり、何事もなかったように草原だけが残りました。


静かな風。


青空。


鳥の声。


ショウタは地面に寝転がります。


「はぁぁぁぁ……生きてる……。」


サヨもぺたんと座り込みました。


「つかれたぁ……。」


魔王は腕を組みます。


「悪くない冒険だった。」


「お前ちょっと楽しんでただろ。」


クロノワールは尻尾をゆらしました。


「……終わったな。」


リナは空を見上げています。


青い光たちが、まだ遠くで空へ消えていくのが見えました。


「みんな、帰れたのかな。」


ピースケは静かにうなずきます。


「ええ。」


風がやさしく吹き抜けます。


「忘れられていたとしても、“つながり”は消えていませんでしたから。」


そのとき。


ぐぅぅぅぅ。


大きなお腹の音。


全員が振り向きました。


魔王が真顔で言います。


「腹が減った。」


ショウタが吹き出します。


「緊張感返せ!!」


サヨも笑い転げました。


ピースケは穏やかに笑います。


「では、帰ったらごはんにしましょうか。」


「キャベツパンある!?」


「ありますよ。」


「やったー!」


夕日が草原を赤く染めていきます。


長い冒険のあと。


みんなは並んで村への道を歩き出しました。


忘れられた記憶も、


迷っていた存在も、


少しずつ帰る場所を見つけていく。


そしてピースケは、静かに思うのでした。


“運ぶ”ということは――


物だけではなく、


誰かの心を、帰る場所へ届けることなのかもしれない、と。

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