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悪魔 その1

ある曇り空の日。


ピースケは、いつものように馬車で荷物を運んでいました。


荷台には野菜、布、樽、それから魔王用の大量キャベツ。


ショウタが荷物の上で言います。


「最近、“現れる系”多くね?」


サヨもうなずきます。


「この前はダンジョンだったしね。」


ピースケは穏やかに笑いました。


「平和な日が恋しいですねぇ。」


その瞬間――


ボンッ!!


道の真ん中に、紫色の煙が噴き出しました。


「うわぁっ!?」


煙はぐるぐる回りながら、大きな魔法陣になります。


そして――


パサァッ。


黒い翼。


長いしっぽ。


赤い目。


やたら派手な黒いコート。


ひとりの“悪魔”が現れました。


ショウタが叫びます。


「また出たぁぁ!!」


悪魔は優雅に一礼します。


「フフフ……驚いたか、人間ども。」


サヨがピースケの後ろに隠れました。


「悪魔……。」


悪魔はニヤリと笑います。


「我が名はベルフェル。」


そして、片手を広げました。


「契約をしに来た。」


ショウタが顔をしかめます。


「絶対ヤバいやつじゃん。」


ベルフェルは気にせず続けます。


「願いを叶えてやろう。」


「願い?」


「金、力、名声、不老不死……なんでもだ。」


怪しい。


ものすごく怪しい。


ショウタが小声で言います。


「こういうの、絶対あとで代償あるだろ。」


ベルフェルはにやり。


「もちろん。」


「やっぱり!!」


悪魔は楽しそうに笑いました。


「魂を少しもらうだけだ。」


サヨが青ざめます。


「魂!?」


ピースケは静かにベルフェルを見つめました。


「ちなみに、“少し”とは?」


「耳かき一杯ほど。」


「例えが嫌ですねぇ。」


ベルフェルは翼を広げます。


「さあ、願え。」


風が吹きました。


どこか不気味な空気。


しかし――


魔王が前へ出ました。


「断る。」


ベルフェルが止まります。


「……え?」


「我は元魔王だが、そういう契約はおすすめしない。」


ベルフェルが目をぱちぱちさせました。


「元魔王?」


ショウタが説明します。


「なんかキャベツパンで改心した。」


「なんだそれ。」


ベルフェルは困惑しています。


その間に、サヨが小さく聞きました。


「ベルフェルは、なんで契約してるの?」


悪魔は少し黙ります。


「……仕事だからだ。」


「仕事。」


「契約ノルマがある。」


沈黙。


ショウタがゆっくり聞き返しました。


「……ノルマ?」


ベルフェルは真顔でうなずきます。


「今月まだ二件。」


「悪魔界シビアすぎるだろ!!」


ベルフェルは深いため息をつきました。


「最近の人間は警戒心が強い。」


「そりゃそうだよ!」


「昔はもっと気軽に魂を売っていた。」


「昔の人どうなってんだ!」


悪魔はしょんぼりしています。


サヨが少しかわいそうになってきました。


「……大変なんだね。」


ベルフェルは空を見上げます。


「我も好きでやっているわけではない。」


ピースケは静かに聞きました。


「転職は考えないのですか。」


ベルフェルが固まります。


「……転職?」


「ええ。」


「悪魔が?」


「案外向いている仕事があるかもしれませんよ。」


ショウタが吹き出しました。


「悪魔にキャリア相談始めた!」


ベルフェルは真剣に考え込みます。


「……考えたこともなかった。」


そのとき――


ぐぅぅぅぅ。


お腹の音。


全員がベルフェルを見ました。


悪魔は静かに目をそらします。


「……昼を抜いただけだ。」


ショウタが即答しました。


「腹減ってるじゃん。」


サヨはリュックを開けます。


「キャベツパン食べる?」


ベルフェルがぴたりと止まりました。


「……よいのか?」


「うん!」


悪魔は恐る恐る受け取り、一口かじります。


もぐ。


その瞬間。


「……!!」


目が見開かれました。


「うまい。」


ショウタが笑います。


「またか。」


ベルフェルは夢中で食べ始めました。


「ふわふわだ……。」


魔王が誇らしげに言います。


「よいだろう。」


「お前が作ったわけじゃないだろ。」


風がやさしく吹き抜けます。


悪魔ベルフェルは、食べ終わったあと小さく言いました。


「……人間、悪くないな。」


ピースケは静かに笑います。


「まあ、いろいろいますからねぇ。」


ベルフェルは少し考え込みました。


そして。


「……転職、少し考えてみる。」


ショウタが笑い転げます。


「悪魔の人生相談回になってる!!」


曇り空の下。


荷物を積んだ馬車の横で、


悪魔はキャベツパンを食べながら、将来について悩み始めていました。


どうやら今日も――


いつもの“普通じゃない日”になりそうでした。

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