なくなった声
こっこと一緒に“なくなった声”を探すことになったピースケたち。
その夜は村で休み、翌朝――
「まずは、音がありそうなところだな。」
ショウタが言います。
「ええ、“声”はどこかに残っているはずですからねぇ。」
ピースケはそう言って、耳をすませました。
サヨも目を閉じて、じっとしています。
こっこは小さくつぶやきました。
「……風の中に、ちょっとあるコケ。」
その言葉を頼りに、四人は村のはずれの林へ向かいました。
木々のあいだを風が通り抜け、サワサワと葉が鳴っています。
「このへんか……?」
ショウタが言ったそのとき――
チリン。
ほんの小さな音がしました。
「……聞こえた!」
サヨが指をさします。
木の枝に、なにかが引っかかっています。
近づいてみると――
それは、透明な小さな“しずく”のようなもの。
中に、かすかな音が閉じこめられているように見えます。
こっこが震える声で言いました。
「……これ……!」
ピースケはそっと近づきます。
「触れてみてもよさそうですねぇ。」
サヨがそっと手を伸ばし、しずくに触れました。
すると――
ふわっ。
やさしい声が広がりました。
『……おはよう。』
その声はすぐに消えましたが、たしかにそこにありました。
サヨが目を輝かせます。
「声だ……!」
ショウタも驚きます。
「マジで“落ちてる”じゃん……。」
こっこはうなずきました。
「そうコケ。こうやってバラバラになってるコケ。」
ピースケは静かに言います。
「では、これを集めていけば……元に戻せるかもしれませんねぇ。」
こっこはぎゅっと目を閉じました。
「……うん。」
その後も、四人は林の中を探しました。
葉っぱの裏、石のすき間、風の通り道。
あちこちに、小さな“声のしずく”が見つかります。
『……ありがとう。』 『……まってる。』 『……だいじょうぶ。』
ひとつひとつは短いけれど、どれも大切そうな声。
サヨは大事そうに集めながら言いました。
「なんか……あったかい声ばっかりだね。」
ショウタもぽつりと。
「大事なやつ、って感じするな。」
ピースケはうなずきます。
「ええ、だからこそ残っているのでしょうねぇ。」
やがて、たくさんの“声のしずく”が集まりました。
こっこが言います。
「……これ、まとめる場所が必要コケ。」
「まとめる場所?」
ピースケは少し考えてから、言いました。
「最初に声を失った場所に行くのがよさそうですねぇ。」
こっこはすぐに答えます。
「わかるコケ。こっちコケ!」
ぴょんぴょんと先へ進むこっこ。
三人はそのあとを追いました。
やがてたどり着いたのは――
小さな丘の上。
風がよく通る、静かな場所です。
そこに、一羽のニワトリが座っていました。
じっと、空を見つめています。
サヨが小さく言います。
「……あの子?」
こっこがうなずきました。
「……そうコケ。」
ショウタがつぶやきます。
「ほんとに声出てないな……。」
ピースケはやさしく言いました。
「では、始めましょう。」
サヨが集めた“声のしずく”を、そっとその子の前に置きます。
すると――
ふわり、と光が広がりました。
しずくたちが、ゆっくりと集まっていきます。
風がやさしく吹き、音が重なっていく。
やがて――
ひとつの“声”になります。
静かに、その子の中へ――戻っていきました。
しばらくの沈黙。
そして――
「……コケ。」
小さな声。
こっこの目が大きくなります。
「……!!」
「コケ……!」
少しずつ、声がはっきりしていきます。
「こっこ……!」
サヨが笑顔になります。
「しゃべれた!」
ショウタもにやっとします。
「成功じゃん。」
こっこは走り寄りました。
「よかったコケ……!」
ふたりのニワトリは、嬉しそうに寄り添います。
ピースケは静かに見守りながら言いました。
「声もまた、“つながり”のひとつですねぇ。」
ショウタがうなずきます。
「ほんと、なくなると困るもんな。」
風がやさしく吹き抜けます。
丘の上に、あたたかい空気が広がりました。
こうして、“なくなった声”は無事に戻りました。
こっこは振り返り、言います。
「ほんとにありがとうコケ!」
ピースケはにこりとしました。
「いえいえ、お役に立てて何よりです。」
サヨも手を振ります。
「またあそぼうね!」
ショウタも軽く手を上げました。
「元気でな!」
夕日が差し込み、二羽の影が長く伸びます。
そして――
またひとつ、この村にやさしい“つながり”が増えたのでした。




