こっこ登場
海からの帰り道。
夕焼けに染まる空の下、ピースケは馬車をゆっくり引いていました。
サヨとショウタは荷台に座って、今日の出来事を楽しそうに話しています。
「海のやつ、また会えるかなー。」
「きっと会えるよ!」
そんな会話をしていると――
コケーーーッ!!
突然、どこからか元気な鳴き声が響きました。
「ん?」
ショウタが顔を上げます。
道の脇の草むらから、ばさばさっと何かが飛び出してきました。
そこにいたのは――
一羽のニワトリ。
でも、普通のニワトリよりちょっと小さくて、やけに動きが機敏です。
「やっと見つけたコケ!」
「え?」
そのニワトリ、なんと人の言葉でしゃべりました。
ピースケが目を細めます。
「これはこれは……お仲間ですねぇ。」
ニワトリは胸を張りました。
「ぼくは“こっこ”コケ!旅してるニワトリコケ!」
ショウタが苦笑します。
「また増えたよ、しゃべるニワトリ。」
サヨはうれしそうに近づきました。
「こっこ、どこから来たの?」
こっこは得意げに言います。
「いろんなところコケ!山も海も町も行ったコケ!」
ピースケが興味深そうにたずねました。
「それはすごいですねぇ。では、なぜここへ?」
こっこは少しだけ表情を変えます。
「……さがしてるものがあるコケ。」
「さがしてるもの?」
ショウタが聞き返します。
こっこはうなずきました。
「“おとしたこえ”コケ。」
サヨが首をかしげます。
「こえを落とすの?」
ピースケは静かに言いました。
「……声を失った誰か、ということかもしれませんねぇ。」
こっこは小さくうなずきます。
「しゃべれなくなった友だちがいるコケ。その声、どこかに消えたコケ。」
ショウタが顔をしかめます。
「また不思議案件かよ……。」
でも、その目は少し真剣でした。
サヨはすぐに言いました。
「いっしょに探そうよ!」
こっこの目がぱっと明るくなります。
「ほんとコケ!?」
ピースケもやさしくうなずきました。
「ええ、お手伝いしましょう。」
ショウタも肩をすくめながら、
「まあ、ここまで来たらな。」
こっこはぴょんぴょん跳ねました。
「ありがとうコケ!」
そのとき――
ヒュゥゥ……。
風がひとすじ、静かに通り抜けました。
どこかで、かすかな“音のかけら”のようなものが揺れた気がします。
ピースケが空を見上げました。
「……どうやら、“音”に関係がありそうですねぇ。」
ショウタがため息をつきます。
「最近ほんとジャンル広いなこの村……。」
サヨは笑顔で言いました。
「でも楽しそう!」
こっこも元気よく鳴きます。
「ぜったい見つけるコケ!」
こうして――
ピースケ、サヨ、ショウタ、そしてこっこ。
新しい仲間を加えて、
“なくなった声”を探す旅が始まりました。
夕焼けの道を、四つの影がのびていきます。
その先には――
まだ知らない“音の物語”が、待っているのでした。




