盗賊
地震のあとも村は少しずつ落ち着きを取り戻し、
ピースケはまたいつものように馬車で荷物を運んでいました。
「いやぁ、やはり日常が一番ですねぇ。」
そうつぶやいた、そのとき――
ザッ。
道の真ん中に、三つの影が立ちはだかりました。
「止まりな。」
フードをかぶった男たち。腰には剣やナイフ。
いかにも“盗賊”という雰囲気です。
ショウタが後ろの荷台から顔を出します。
「……うわ、ベタなの来たな。」
サヨも少し緊張した顔。
ピースケは足を止め、ゆっくりと首をかしげました。
「これはこれは、どのようなご用件でしょうか。」
真ん中の男がにやりと笑います。
「その荷物、全部置いていきな。」
もう一人が言います。
「抵抗すんなよ。ケガしたくなかったらな。」
ピースケは少し考えるように間をおいてから――
「うーん。」
そして、のんびりとした声で言いました。
「お断りします。」
ショウタが小声でツッコミます。
「即答かよ。」
盗賊たちの顔が険しくなりました。
「……ふざけてんのか?」
ピースケは首を振ります。
「いえいえ、仕事中ですので。」
その言葉に、盗賊のひとりが前に出ました。
「じゃあ力づくで――」
しかしその瞬間。
ピースケの影の中から――
「ちょっと待てって。」
声がしました。
「なっ!?」
盗賊たちが驚いて足元を見ると、影がゆらりと揺れます。
次の瞬間――
スッ。
影の中から、“あの存在”が姿を現しました。
淡く揺らぐ黒い輪郭。
青白く光る目。
ハザマです。
『……ナニヲ……トル……。』
盗賊たちは一瞬で顔色を変えました。
「な、なんだコイツ!?」
「ば、化け物……!」
ショウタが腕を組んで言います。
「まあ、味方側だけどな。」
ピースケは少し困ったように言いました。
「いやぁ、あまり怖がらせるつもりはなかったのですが。」
ハザマが静かに一歩前へ出ます。
『……トル……ヒツヨウ……ナイ……。』
その声が、じわりと空気に広がりました。
盗賊のひとりが後ずさります。
「く、くそ……引くぞ!」
「なんだよこの村……!」
三人はあっという間に逃げていきました。
静寂。
ショウタがぽかんとします。
「……早っ。」
サヨもほっと胸をなでおろしました。
「よかったぁ……。」
ピースケはハザマに向かって軽く頭を下げます。
「助かりましたよ。」
ハザマはゆらりと揺れます。
『……ツナガリ……マモル……。』
そして、すっと影に戻っていきました。
ショウタが笑います。
「なんかさ、頼もしくなってきたな、あいつ。」
ピースケもうなずきました。
「ええ、“つながり方”を覚えてくれたようですねぇ。」
サヨがにこっと笑います。
「みんな仲間だね!」
ピースケは少しだけ目を細めました。
「ええ、そうですねぇ。」
そして、何事もなかったかのように馬車を引き直します。
「では、配達を続けましょうか。」
ショウタが言います。
「切り替え早すぎだろ!」
ガラガラと馬車は再び進み出しました。
道の先には、いつもの景色。
でもその見えないところで――
確かにいろんな存在が、つながっている。
ピースケは小さくつぶやきました。
「いやぁ、今日も平和ですねぇ。」
ショウタが即ツッコミます。
「さっき全然平和じゃなかっただろ!」
笑い声が、道に広がっていきました。
そして――
この村の不思議でにぎやかな日常は、今日も続いていくのでした。




