地震 その2
裂け目の奥へ進むほどに、空気はひんやりと重くなっていきました。
ゴゴ……ゴゴゴ……。
足元から伝わる低い振動。天井の岩が、時おりパラパラと崩れ落ちます。
「足元、気をつけろよ!」
ショウタがサヨに手を差し出しました。
「うん……!」
ピースケはゆっくりと先頭を進みます。右足はまだ痛みますが、しっかりと踏みしめていました。
「どうやら、かなり深いところまで影響が出ていますねぇ。」
やがて――
視界が開けました。
そこには、巨大な空洞。
そして、その中央に――
ドクン……ドクン……。
ゆっくりと脈打つ、“大きな石”のようなものがありました。
しかしそれは、ただの石ではありません。
表面にはひびが入り、淡く光る線が不規則に走っています。
ショウタが息をのむ。
「……なんだよ、あれ。」
ピースケは静かに言いました。
「……おそらく、“大地の核”のようなものですねぇ。」
サヨが小さくつぶやきます。
「これが……壊れそうなの?」
そのとき――
ズキン!!
石が大きく脈打ち、空洞全体が揺れました。
「きゃっ!」
サヨがよろけます。
ピースケがすぐに支えました。
「大丈夫ですか?」
「う、うん……。」
石から、かすれた声が響きます。
『……タエラレナイ……。』
ショウタが顔をしかめます。
「しゃべった……!?」
ピースケはうなずきました。
「ええ、やはり“意思”がありますねぇ。」
『……ササエ……ヨワイ……。』
その言葉に、ピースケは考え込みます。
「支えが弱い……。」
ショウタが周りを見渡しました。
「でも、支えってどこだよ?」
ピースケは床を指さしました。
「この下、もしくは周囲のどこかに“バランスを保つもの”があるはずです。」
そのとき――
カラカラカラ……。
空洞の端のほうから、小さな音がしました。
振り向くと――
「いたいた!」 「遅かったぞ!」
小人たちです。
さらに、その後ろから――
ゴゴン、と重たい足音。
岩の精が、ゆっくりと姿を現しました。
「……サガシタ……。」
ショウタが驚きます。
「お前ら、来てたのか!」
小人のひとりが胸を張ります。
「下のほう、見てきた!」
「なんか割れてるやつあった!」
ピースケが目を細めました。
「案内してもらえますかねぇ。」
「まかせろ!」
小人たちはぴょんぴょんと走り出します。
三人はそのあとを追いました。
空洞の奥、さらに下へ。
そこには――
大きく割れた“柱”のような岩がありました。
その周囲には、崩れた石が散らばっています。
ショウタが言います。
「これ……支え?」
ピースケはうなずきました。
「ええ、おそらくこれが“バランスを取る要”ですねぇ。」
サヨが不安そうに言います。
「どうするの……?」
ピースケはしばらく考え――
そして、はっきりと言いました。
「戻しましょう。」
ショウタが目を見開きます。
「戻すって、どうやって!?」
ピースケは周りを見ます。
小人たち、岩の精、ショウタ、サヨ。
「力を合わせれば、可能です。」
ショウタがにやっと笑いました。
「……またそれか。」
「ええ、得意分野ですからねぇ。」
まず、小人たちが細かい石を運びます。
「ここ!」 「このすきま埋める!」
岩の精が、大きな破片をゆっくりと持ち上げました。
「……ササエル……。」
ショウタも必死に押します。
「おおおお!!」
サヨは位置を見て叫びます。
「もうちょっと右!そこ!」
ピースケは全体を見ながら指示を出しました。
「はい、そのまま――止めてください!」
ゴゴン……。
割れていた柱が、少しずつ元の形に戻っていきます。
その瞬間――
ドクン。
空洞の奥の“核”が、やわらかく光りました。
「……来ますよ。」
ピースケがつぶやいた直後――
ドンッ!!
強い振動。
しかし今度は――
揺れが、広がらない。
ピタリ、とその場で収まります。
ショウタが息をのむ。
「……止まった……?」
静寂。
そして――
奥から、やさしい声が響きました。
『……タスカッタ……。』
サヨがほっと息をつきます。
「よかった……。」
岩の精もゆっくりとうなずきました。
「……モウ……ダイジョウブ……。」
ピースケは空洞を見渡し、静かに言いました。
「どうやら、無事に保てたようですねぇ。」
ショウタはその場に座り込みます。
「今回マジで大変だったな……。」
ピースケはくすっと笑いました。
「ええ、なかなか揺れましたねぇ。」
サヨも笑います。
「でも、みんなでできたね!」
小人たちも大喜びです。
「やったー!」 「すごい!」
やがて、三人は地上へ戻りました。
空はもう落ち着き、村も静けさを取り戻しています。
ピースケはゆっくり空を見上げました。
「大地もまた、“つながり”で支えられているんですねぇ。」
ショウタがうなずきます。
「ほんと、全部つながってるな……。」
サヨもにこっと笑いました。
「だから、守れるんだね。」
夕日が、やさしく村を照らします。
揺れた大地も、またしっかりと戻りました。
そして――
この村は今日も、いろんな“つながり”に支えられているのでした。




