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影のドラゴン その2

空が、ほどけるようにゆがみ始めました。


家の輪郭がにじみ、木々の影が空へ引き上げられ、音までもが形を失っていきます。


ショウタは歯を食いしばりました。


「これ……止めないと、全部めちゃくちゃになる!」


ピースケは静かにうなずきます。


「ええ、“つながりすぎる”のは危険ですからねぇ。」


目の前で、影のドラゴン――ハザマがさらに広がります。


『……ヒトツニ……。』


その声に引かれるように、記憶の光や風の粒がどんどん集まっていきます。


ピースケは一歩前に出ました。


「さて……どう止めるか、ですねぇ。」


ショウタが叫びます。


「なんか考えあるのか!?」


ピースケは少し考えてから、ぽつりと言いました。


「ありますよ。ただし――少々ややこしいです。」


「今それ言う!?」


ピースケは続けます。


「相手は“境界そのもの”です。ですから、力で押し返すのは難しい。」


「じゃあどうすんだよ!」


ピースケはショウタを見ました。


「“つながり方”を変えます。」


ショウタが固まります。


「……は?」


「全部をひとつにするのではなく、“それぞれを保ったままつながる”形にするのです。」


ショウタは頭をかきました。


「難しいこと言ってるのはわかるけど、全然わからん!」


ピースケはくすっと笑います。


「つまりですねぇ――“混ぜる”のではなく、“並べる”んですよ。」


そのとき――


『……ムダ……。』


ハザマが低く響きます。


空がさらにゆがみ、ショウタの足元が消えかけました。


「うわっ!?」


ピースケが叫びます。


「ショウタさん!思い出してください!」


「なにを!?」


「これまでのことです!」


ショウタは必死に考えます。


風の精。音の精。水の精。影。記憶。そしてラグ。


「……つながってたけど……全部、別々だった……。」


「その通りです!」


ピースケの声が力を帯びました。


「それぞれが違うまま、関わっていた――それがこの村の形です!」


ショウタの目が変わります。


「……ああ、そうか!」


ピースケは翼を広げました。


「では、やってみましょうか!」


ピースケは地面を強く踏みしめます。


ドンッ!!


その衝撃で、地面に広がっていたゆがみが一瞬だけ止まりました。


「ショウタさん!あなたも!」


「どうやって!?」


「“違い”を思い出してください!」


ショウタは叫びました。


「風は風!音は音!影は影!全部ちがうだろ!!」


その瞬間――


バチッ!!


空に走るゆがみが、少しだけ裂けました。


ハザマが揺れます。


『……ナゼ……。』


ピースケはさらに声を張ります。


「ひとつになる必要はありませんよ!」


「違っていても――つながれるんです!」


ショウタも叫びます。


「全部まとめるな!!バラバラでもいいんだよ!!」


その言葉が、まるで鍵のように――


光、影、音、風、記憶が、それぞれの形を取り戻し始めました。


バラバラに、でもちゃんと存在しながら――ゆるやかに戻っていく。


ハザマが大きく揺らぎます。


『……ワレハ……ツナグ……モノ……。』


ピースケは静かに答えました。


「ええ、ですから――“つなぎ方”を変えましょう。」


しばらくの沈黙。


やがて――


ハザマの輪郭が、少しずつ安定し始めました。


暴れるような広がりではなく、静かに、空の“あいだ”へと溶けていきます。


『……チガウ……ツナガリ……。』


その声は、もう荒れていませんでした。


『……オボエタ……。』


そして――


スッ……と、消えました。


風が戻り、音が戻り、影が地面に戻ります。


村の景色が、ゆっくりと元に戻っていきました。


静寂。


ショウタがその場にへたり込みます。


「……終わった……?」


ピースケは空を見上げて、ゆっくりうなずきました。


「ええ、どうやら今回は、うまくいったようですねぇ。」


ショウタはため息をつきます。


「今回も、だろ……。」


ピースケは少しだけ笑いました。


「ええ、“今回も”です。」


空はすっかり元どおり。


ただ――


どこかで、見えない“つながり”が、前より少しだけやさしくなったような気がしました。


ピースケは静かにつぶやきます。


「違うまま、つながる……いい形ですねぇ。」


ショウタも空を見上げます。


「……なんか、ちょっとわかった気がする。」


夕日が村を染めていきます。


長い出来事のあとに訪れた、静かな時間。


けれどこの村はきっと、また何かと出会うのでしょう。


ピースケはいつものように言いました。


「さて――次はどんな不思議が来ますかねぇ。」


物語は、まだまだ続いていくのでした。

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