ピースケの誕生日
それからしばらくして――
村に、ちょっとだけ特別な日がやってきました。
今日は、ピースケの誕生日です。
しかし当のピースケは、いつもどおり馬車の手入れをしていました。
「いやぁ、今日もいい天気ですねぇ。」
のんびりとした様子。
けれどその裏で――
広場のはずれでは、サヨとショウタがひそひそと動いていました。
「なあ、それ本当にうまいのか?」
ショウタが小声で聞きます。
サヨは真剣な顔でうなずきました。
「大丈夫。ピースケ、キャベツ大好きって言ってたから。」
その手には――
少し不格好だけど、一生けんめい作ったケーキ。
ふわっとした生地のあいだに、刻んだキャベツがたっぷり入っています。上には葉っぱの形に飾られたキャベツのトッピング。
「……見た目はまあ、アリかもな。」
ショウタが腕を組みます。
「味は知らんけど。」
「だいじょうぶだってば!」
サヨは少しむっとしながらも、ケーキを大事そうに持ち上げました。
「よし……行こう。」
ふたりはこっそり広場へ向かいます。
そして――
「ピースケ!!」
「おや?」
振り返ったピースケの前に――
「おたんじょうび、おめでとう!!」
サヨがケーキを差し出しました。
ショウタも少し照れくさそうに言います。
「……まあ、その……おめでと。」
ピースケは、きょとんとしたあと――
ゆっくりと目を細めました。
「……これはこれは。」
しばらく何も言わず、ケーキを見つめます。
「キャベツの……ケーキですか。」
サヨが少し不安そうに言います。
「がんばって作ったの……。」
ピースケは大きくうなずきました。
「ええ、伝わってきますよ。」
そして、ひと口。
もぐもぐ……。
ショウタがじっと見つめます。
「……どうだ?」
ピースケは少し考えて――
にっこり笑いました。
「これはですねぇ……」
一瞬ためてから、
「なかなか斬新なお味です。」
ショウタが吹き出します。
「それ褒めてねーだろ!」
サヨがあわてます。
「えっ!?おいしくない!?」
ピースケはくすっと笑いました。
「いえいえ、とてもおいしいですよ。」
そして、もう一口。
「何より、“気持ち”がしっかり入っていますからねぇ。」
サヨの顔がぱっと明るくなりました。
「ほんと!?」
「ええ、本当です。」
ショウタも肩の力を抜きます。
「……ならよかった。」
そのとき――
広場のまわりから、村人たちがぞろぞろと集まってきました。
「ピースケさん、おめでとう!」 「これ、うちでとれた野菜だ!」 「こっちはパンだよ!」
さらに――
草むらから小人たちも顔を出します。
「おめでとー!」 「ちょっとずつ持ってきた!」
空からは、ふわっと風が吹き、やさしい音が響き、水のきらめきが光ります。
まるでこれまで出会ってきたすべてが、少しずつ集まってきたようでした。
ショウタが笑います。
「なんか……すげーな。」
ピースケは周りを見渡しました。
ゆっくりと、深くうなずきます。
「……いやぁ。」
そして、少し照れくさそうに言いました。
「こんなににぎやかな誕生日は、初めてですねぇ。」
サヨがうれしそうに言います。
「よかった!」
ショウタも笑います。
「主役なんだから、ちゃんと喜べよな。」
ピースケは、空を見上げました。
夕焼けが広がり、やさしい風が吹きます。
「ええ、しっかり喜んでいますよ。」
そして、静かにつぶやきました。
「こうしてつながっているのが、一番の贈り物ですねぇ。」
その夜、広場は笑い声でいっぱいになりました。
キャベツのケーキは少しずつみんなに分けられ――
「意外とうまいかも!」 「ほんとに!?」
なんて声も聞こえてきます。
星空の下。
ピースケはいつものように、でも少しだけ特別な気持ちで言いました。
「さて……次の一年も、楽しみですねぇ。」
こうして、にぎやかであたたかい一日が過ぎていきました。
そして――
この村の物語は、これからも続いていくのでした。




