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空の大陸 その6

雲が、


ばっくり裂けました。


その奥から現れたのは――


“口”。


ただひたすら巨大な口。


山より大きい。


牙みたいな雲。


渦巻く黒い空。


しかも。


近づくだけで、


周囲の浮遊岩が吸い込まれていきます。


ゴゴゴゴゴ……。


ショウタ、


顔面蒼白。


「ラスボス感が急に来たぁぁ!!」


メカリンが震えています。


「あれが……空食い艦隊の母艦……」


クロックが低く言いました。


『正式名称、“虚空喰らい”』


『空間そのものを捕食する存在です』


ショウタ。


「もう食欲のスケールがおかしい!!」


小さな黒い生き物たちも、


ぷるぷる震えています。


『お母さん起きちゃった……』


『怒ってる……』


『おなかぺこぺこモード……』


ショウタ。


「名称がかわいくて追いつかん!」


その瞬間。


巨大な口が開きました。


ゴォォォォ……!!


空そのものが引っ張られる。


雲。


岩。


建物。


スカイラッドまで吸い込まれ始める。


赤い鳥が必死に翼を広げます。


『だめ!』


『みんな落ちる!』


でも、


もう限界。


翼がひび割れ始めました。


メカリン絶叫。


「エンジンがもたない!!」


夜の龍も風に逆らえません。


『吸引ガ強スギル!』


白もふがころころ転がっていきます。


『吸われるー!!』


巨大猫がしっぽで回収。


『落ち着け』


ショウタは必死に岩にしがみつきながら叫びます。


「どうすんだよこれぇぇ!!」


静寂。


そのとき。


ピースケが、


巨大な口を見上げて言いました。


「……かなり空腹ですねぇ。」


ショウタ。


「感想!!?」


でも。


ピースケの銀のスプーンが、


今までで一番強く光っています。


ふわぁぁぁ……。


永遠のシチュー鍋も、


ぐつぐつ反応。


おたまが震えました。


『……足りない』


ショウタ。


「え?」


おたまは真顔。


『この子、“おなか”だけじゃない』


『“さみしさ”も空っぽです』


静寂。


巨大な口が、


一瞬だけ止まりました。


その奥から、


かすかな声。


ものすごく低くて、


遠い声。


『……ずっと』


『ひとりだった』


サヨが息をのみます。


「……!」


クロックが目を細めました。


『虚空喰らいは、古代空間に取り残された生命体』


『永遠に漂流していたのかもしれません』


巨大な口が、


また開きます。


でもさっきより弱い。


『……でも近づくと、みんな壊れる』


『だから食べるしか、わからない』


静寂。


ピースケは、


ふわっと風を起こしました。


あったかい風。


シチューの匂いが混ざった風。


「じゃあまずはぁ。」


「一緒に食べませんかぁ?」


全員停止。


ショウタ。


「このサイズ差で!?」


白もふ。


『おっきいスプーンいる』


「そこじゃない!」


すると。


永遠のシチュー鍋が、


ぼぅっと光りました。


ゴゴゴゴ……。


なんと。


鍋そのものが巨大化。


山サイズ。


湖サイズ。


ついには、


“空の海”みたいな大きさに。


ショウタ絶叫。


「対抗してデカくなるなぁぁ!!」


おたまも超巨大化。


『特盛りです!!』


黒い生き物たち大歓声。


『ごはんー!!』


『おかわりー!!』


しかし。


巨大な口――虚空喰らいは、


まだ不安そうでした。


『……本当に、食べてもいい?』


ピースケは笑います。


「はいですぅ。」


「ひとりじゃないごはん、おいしいですよぉ。」


静寂。


その瞬間。


虚空喰らいの巨大な目が、


雲の奥で、


ぽろっと涙みたいな光を落としました。

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