空の大陸 その5
静寂。
空を覆っていた“空食い艦隊”が、
ぴたりと停止しています。
さっきまで撃たれそうだった
空間崩壊砲も止まったまま。
そして。
円盤の奥から、
また小さな声。
『……おなか、すいた』
ショウタ、
完全停止。
「規模がデカいだけの腹ペコ集団!?」
メカリンもぽかん。
「えっ……」
クロックがモノクルを調整します。
『エネルギー反応を再分析』
『……たしかに“捕食行動”です』
「そこから!?」
夜の龍が低くつぶやきました。
『敵意デハナイ……』
赤い鳥も困惑しています。
『……壊しに来たんじゃ、ない?』
その瞬間。
空食い艦隊の一隻が、
おそるおそる近づいてきました。
巨大。
でも。
どこか元気がない。
ふらふらしてる。
円盤の下側がぱかっと開き、
中から――
小さな黒い生き物が顔を出しました。
丸い。
ふよふよ浮いてる。
目が眠そう。
ショウタ。
「かわいい寄り!?」
黒い生き物は、
ぺこりと頭を下げました。
『……すみません』
『空石、おいしくて……』
メカリンが崩れ落ちます。
「侵略じゃなかったのぉ!?」
白もふが近づきます。
『おなかすいてたの?』
『うん……』
『かわいそう』
ショウタ。
「懐柔が早い!」
でも。
問題は終わってませんでした。
クロックが空を見上げます。
『まずいです』
ショウタ。
「今度は何!?」
クロック。
『艦隊規模が大きすぎる』
『この数を満たすエネルギー源はありません』
静寂。
つまり。
このままでは、
結局スカイラッドが食べられる。
黒い生き物たちも、
しゅん……と縮こまりました。
『ごめんなさい』
『でも、おなかすく』
ショウタが頭を抱えます。
「悪いやつじゃないのが余計困る!!」
そのとき。
ピースケの銀のスプーンが、
またぽわっと光りました。
ふわぁぁ……。
そして。
空に、
あの匂い。
シチュー。
焼きたてパン。
温かいスープ。
全員がハッとします。
ショウタ。
「まさか」
次の瞬間――
空間が、
べりっ。
と開きました。
そこから、
“永遠のシチュー鍋”が、
ゆっくり飛んできたのです。
ドン。
空中に浮かぶ巨大鍋。
しかも。
しゃべるおたま付き。
『おかわりの気配を感じました!』
ショウタ絶叫。
「来るなぁぁぁぁ!!」
白もふ大歓喜。
『救世主!』
エルドランの幻影は頭抱え。
『鍋が自力移動しとる……』
でも。
黒い生き物たちは、
匂いをかいだ瞬間。
目をきらきらさせました。
『……いい匂い』
『あったかい』
『食べていい?』
おたまが胸を張ります。
『もちろん!』
『争う前に、まず一杯!』
ショウタ。
「料理番組みたいに言うな!!」
すると。
赤い鳥が、
そっと翼をたたみました。
暴走していた光が静まる。
スカイラッドの落下も、
少し止まる。
ピースケは笑います。
「やっぱりぃ。」
「おなかいっぱいだと、落ち着きますねぇ。」
その瞬間――
空食い艦隊の一番奥。
今まで隠れていた、
“超巨大な影”が動きました。
ゴゴゴゴ……。
クロックの顔色が変わります。
『……待ってください』
『まだ“母艦”がいます』
ショウタ。
「母艦?」
雲が割れます。
そこから現れたのは――
山より大きい、
“巨大な口”でした。




