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ドラゴン その5

空気が、ぴたりと張りつめました。


次の瞬間――


ズドンッ!!


銀のドラゴンが地面を蹴り、一気に距離を詰めます。


「来ますよぉ!」


ピースケは大きく翼を振り、横へ跳びました。

そのすぐあとを、鋭い爪がかすめていきます。


ガギィン!!


岩が砕け、破片が飛び散りました。


「うわっ!!」


ショウタが思わず身をかがめます。


一方、ラグは黒いドラゴンとぶつかり合っていました。


ドンッ!ドンッ!


体当たりの衝撃が何度も響きますが、ラグは押され気味です。


「くっ……!」


青いドラゴンはその上空から様子をうかがい、隙を狙っているようでした。


「……これは分が悪いですねぇ。」


ピースケはつぶやきながらも、冷静に周囲を見ます。


「ショウタさん!」


「な、なんだよ!?」


「“戦わない方法”、まだありますよ。」


ショウタは一瞬きょとんとしましたが、すぐにハッとします。


「……まさか。」


ピースケはにやりとしました。


「ええ、そのまさかです。」


そのとき――


銀のドラゴンが再び突っ込んできます。


「終わりだ。」


「いいえ、まだですよぉ!」


ピースケはギリギリでかわしながら、大声で叫びました。


「ラグさん!空へ!」


ラグが驚きます。


「……ムリダ!」


「いえ、できます!ショウタさん、お願いします!」


ショウタは歯を食いしばり、近くの岩に駆け上がりました。


「おおおお!!」


ラグの背中に飛び乗ります。


「何する気だ!?」とラグ。


「いいから一回跳べ!!」


ラグは一瞬迷いましたが――


「……ッ!!」


地面を蹴ります。


バサッ!!


まだ完全ではない翼が、大きく風をつかみました。


ふわり、と体が浮きます。


その瞬間――


ショウタが叫びました。


「見せてやれよ!!お前がちゃんと飛べるって!!」


ラグの目が見開かれます。


「……!!」


もう一度、強く翼を振る。


バサァッ!!


今度ははっきりと、空へ上がりました。


銀のドラゴンが動きを止めます。


青いドラゴンも、黒いドラゴンも、空を見上げました。


ラグはふらつきながらも――確かに飛んでいます。


「……トベル……。」


小さく、でも確かな声。


ショウタが笑います。


「ほらな!!」


ピースケが静かに言いました。


「彼は戻れますよ。」


銀のドラゴンは黙ってその姿を見つめていました。


風の中で、ラグはもう一度翼を広げます。


ぎこちないけれど、確かな飛行。


「……オレ……カエレル……。」


その言葉に、空気が変わりました。


長い沈黙のあと――


銀のドラゴンが口を開きます。


「……ならば。」


ゆっくりと翼をたたみました。


「掟に従い、“戻る者”として扱う。」


ショウタがぽかんとします。


「……え、終わり?」


黒いドラゴンが不満そうにうなりますが、銀のドラゴンは一瞥するだけ。


「異論は許さん。」


青いドラゴンも静かにうなずきました。


ラグはゆっくり地上に降ります。


まだ息は荒いですが、顔にははっきりとした意志がありました。


「……カエル。」


ショウタが少し寂しそうに笑います。


「そっか。」


ピースケはうなずきました。


「ええ、それがいいでしょう。」


ラグはふたりを見ます。


「……オマエタチ……ワスレナイ。」


ショウタが言います。


「こっちもな。」


ピースケもやさしく言いました。


「またどこかで会えますよ。」


ラグは大きく翼を広げます。


そして――


バサァッ!!


今度はしっかりと空へ舞い上がりました。


銀のドラゴンたちもそれに続きます。


やがて、三つの影は空の彼方へと消えていきました。


静寂。


風だけが残ります。


ショウタが大きく息を吐きました。


「……なんとか終わったな。」


ピースケはいつもの調子に戻り、のんびりと言います。


「ええ、今回はうまくまとまりましたねぇ。」


ショウタは苦笑しました。


「“今回は”って言うなよ……。」


ふたりは山を下りながら、空を見上げます。


遠く、高いところに――小さくドラゴンの影が見えた気がしました。


ピースケはつぶやきます。


「つながりは、場所を越えますねぇ。」


ショウタも小さくうなずきました。


「だな。」


夕焼けが広がり、村への道がやさしく照らされます。


こうしてまたひとつ、大きな出来事が静かに幕を閉じました。


――けれど。


空のずっと向こうで、新しい風が動き始めていることを、まだ誰も知りませんでした。

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