賢者の埋蔵金 その13
『方向を失えぇぇぇ!!』
無数の目玉付きコンパスが、
ぶわぁぁっと飛び回ります。
針がぐるぐる。
目玉ぎょろぎょろ。
しかも全部しゃべってる。
『左が右ぃぃ!!』
『上が斜めぇぇ!!』
『前が後ろぉぉ!!』
ショウタ大混乱。
「説明が全部ややこしい!!」
サヨもふらつきます。
「うわっ、目が回る……!」
クロックが時計を構えました。
『認識干渉型の迷宮防衛装置!』
トンネル博士だけは大興奮。
「実在したぁぁ!!」
巨大猫、ぼそっ。
『うるさい』
すると。
巨大猫が軽く“にゃあ”と鳴いただけで、
周囲の音が一瞬静まりました。
目玉コンパスたち停止。
『……はっ』
『静寂系だ!』
『まずい逃げろー!』
ショウタがツッコミ。
「お前ら感情豊かだな!?」
しかし次の瞬間――
コンパスたちの針が、
一斉にピースケを指しました。
『あいつだ!』
『方向感覚を失ってないやつ!』
『イレギュラー!!』
ピースケはのんびり。
「風まかせですからねぇ。」
クロック、小声。
『それで突破できるの理不尽です』
コンパス軍団が突撃してきます。
ぐるぐる回転しながら、
方向感覚を狂わせる光線発射!
ショウタが叫びました。
「うわぁぁ!!」
でも。
ピースケが羽をぱたっと動かすと、
風が迷宮中を流れます。
ふわぁぁ……。
すると。
回りまくっていたコンパスたちが、
急に静かになりました。
『……あれ?』
『風の向き分かる』
『北って安心』
ショウタ、停止。
「落ち着いた!?」
ピースケは笑います。
「迷ったら、とりあえず風を感じるといいですよぉ。」
コンパスたち、
じーん。
『……深い』
『風ってすごい』
『就職したい』
「コンパスが!?」
その隙に、
サヨが逆さ家へ走りました。
「今助ける!」
青年は涙目です。
『ありがとうぉぉ!!』
しかし。
家へ近づいた瞬間――
ゴゴゴゴ!!
迷宮全体が、
また回転を始めました。
ショウタ絶叫。
「またぁぁぁ!!」
空間がねじれます。
家が回る。
橋が反転。
コンパスたちも大パニック。
『上下が上下じゃない!』
『哲学だぁぁ!!』
白もふは楽しそう。
『遊園地!』
夜の龍が翼を広げました。
『全員、掴マレ!』
巨大猫はショウタをしっぽでキャッチ。
『落ちるぞ』
「ひゃぁぁ!!」
でも。
逆さ家だけが、
崩れながら落ちていきます。
青年が叫びました。
『うわぁぁぁぁ!!』
サヨが手を伸ばします。
「届かない!」
その瞬間――
ピースケがふわっと飛びました。
風をまとい、
回転する迷宮の中を一直線。
ショウタが叫びます。
「ピースケぇぇ!!」
迷宮の重力がめちゃくちゃになる中、
ピースケは青年へ向かって手を伸ばします。
でもそのとき。
迷宮の最深部から、
低い声が響きました。
『……また騒がしい客か』
静寂。
迷宮全体が、
ぴたりと止まりました。




