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賢者の埋蔵金 その7

カチリ――。


その小さな音は、


なぜか妙に響きました。


温かな食卓。


湯気の立つ料理。


笑い声。


でも、


その音だけが少し違う。


クロックが、


ぴたりと動きを止めます。


少女のモノクルが、


淡く光りました。


『……おかしい』


ショウタが振り向きます。


「え?」


エルドランも眉をひそめました。


『今の音は、“進んだ音”ではない』


静寂。


カチ。


今度は、


全員の目の前で、


壁の時計の針が――


“逆回転”しました。


サヨが息をのみます。


「時間が……戻ってる?」


その瞬間。


食卓の湯気が、


するすると料理へ戻っていきます。


スープが冷たく戻る。


パンが焼ける前へ戻る。


白もふが悲鳴。


『ごはんが逃げるぅぅ!!』


ショウタ絶叫。


「そこ!?」


時計塔全体が、


ゴゴゴゴ……と揺れ始めました。


時計妖精たちが大混乱。


『非常事態ですー!』


『誰かが時流に触ってます!』


『禁止事項ー!』


クロックが鋭く振り向きます。


『誰です』


静寂。


そのとき――


塔の最上階から、


ゆっくり拍手が聞こえました。


パチ。


パチ。


パチ。


全員が見上げます。


暗い吹き抜けの上。


そこに立っていたのは――


“黒いクロック”。


クロックとそっくりな少女。


でも。


髪も服も真っ黒。


モノクルの針が、


逆回転しています。


ショウタ、青ざめ。


「増えたぁぁぁ!!」


黒い少女は、


にこっと笑いました。


『お久しぶりです。』


『お姉ちゃん』


静寂。


サヨが目を見開きます。


「え……姉妹?」


クロックの顔が、


初めて大きく揺らぎました。


『……リバース』


黒い少女――リバースは、


楽しそうに階段を降りてきます。


カチ。


カチ。


彼女が歩くたび、


周囲の時間が逆流していく。


壊れた時計が直り、


逆に新しい時計が古びていく。


ショウタ、半泣き。


「現象がややこしい!!」


リバースは食卓を見て、


ふっと笑いました。


『またそれ?』


『“みんなで仲良く”』


『そんなの、一番壊れやすいのに』


夜の龍が低くうなります。


『敵意ガアル』


巨大猫も片目を開けました。


『……眠れなくなるやつだ』


エルドランが静かに問いかけます。


『何をしに来た、時逆の管理者』


リバースは、


くるりと時計を回しました。


逆回転する針。


すると――


塔の壁に、


無数の“失敗した未来”が映し出されます。


仲間同士が争う未来。


離れ離れになる未来。


空が壊れる未来。


一人ぼっちになる未来。


サヨが顔をこわばらせました。


「これ……」


リバースは静かに言います。


『時間を見続ければ分かる』


『楽しい時間は、必ず終わる』


『なら最初から止めればいい』


静寂。


ショウタが小さくつぶやきます。


「……だから時間を戻してるのか」


リバースはうなずきました。


『壊れる前に戻す』


『失う前に止める』


『それなら、永遠に悲しくならない』


白もふが不安そう。


『でも、おなかすく』


ショウタが思わず吹き出します。


「この状況でそこ!?」


しかし。


ピースケは、


ずっとリバースを見ていました。


静かな風が吹きます。


そして、


のんびり聞きます。


「……楽しかった時間、ありましたぁ?」


リバースの笑みが、


ぴたりと止まりました。

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