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賢者の埋蔵金 その6

時計塔の中が、


静まり返りました。


カチ……カチ……。


無数の時計の音だけが響きます。


ショウタは固まります。


「世界中の願いを一つ……?」


サヨも真剣な顔。


白もふは考え込み。


『おやつ……いや、みんなでおやつ……』


夜の龍は静かに目を閉じています。


巨大猫は半分寝ながら、


しっぽだけ揺らしていました。


エルドランは急かしません。


ただ、


やさしく待っています。


『どんな願いにも代償はある。』


『だからこそ、願いはその者を映す』


ショウタが頭を抱えます。


「重ぉぉい!!」


そのとき。


塔の床に、


光の輪が現れました。


そこに映し出されたのは――


“願いが叶った未来”。


ショウタが「大金持ちになりたい」と考えた瞬間。


光の中に、


豪華な城が映ります。


でも。


ショウタは一人。


広い食卓に、


誰もいない。


ショウタが青ざめました。


「またこのタイプ!?」


サヨが「失われた知識を全部守りたい」と思うと、


巨大図書館が現れます。


でも、


彼女は一生そこから出られない。


夜の龍が「誰にも恐れられない夜」を願うと、


世界から“夜そのもの”が消えます。


白もふが「おやついっぱい」を願うと、


世界中の食べ物がお菓子になります。


ショウタ絶叫。


「それはダメぇぇ!!」


白もふ、しゅん。


『やりすぎた』


エルドランは静かに言いました。


『願いとは、強すぎれば世界を歪める』


『だから最後に必要なのは――』


その瞬間。


賢者の視線が、


ピースケへ向きます。


『おぬしの答えじゃ』


静寂。


全員がピースケを見ました。


ショウタが小声。


「頼んだぞ……」


ピースケは、


しばらく考えていました。


時計の音。


風の音。


みんなの気配。


それを静かに感じながら。


やがて、


ぽつりと答えます。


「みんなで、ちゃんと明日を迎えられるといいですねぇ。」


静寂。


ショウタが瞬き。


「……それだけ?」


ピースケはうなずきました。


「おなかいっぱい食べてぇ。」


「ちゃんと寝てぇ。」


「また朝になってぇ。」


「それで、また誰かと笑えたら十分ですぅ。」


風が吹きました。


時計塔の時計たちが、


一斉に静かになります。


カチ……。


エルドランは、


目を細めました。


『……そうか』


その瞬間――


塔全体が光り始めます。


ゴォォォォ……!


ショウタが慌てます。


「うわぁぁ!?」


時計の針が高速回転。


光が天井まで駆け上がる。


そして。


最奥の扉が、


ゆっくり開きました。


中にあったのは――


金銀財宝ではありませんでした。


小さな部屋。


丸いテーブル。


あたたかい光。


そして、


人数分の椅子。


テーブルの上には、


まだ湯気の立つ料理が並んでいます。


ショウタ、ぽかん。


「……え?」


エルドランは、


少し照れくさそうに笑いました。


『宝というのはな。』


『最後に誰かと囲む食卓が、一番価値あるものなんじゃよ』


静寂。


白もふが、


うるうるしています。


『……いいにおい』


巨大猫もぼそっと。


『……悪くない』


夜の龍は、


星みたいな目を細めました。


サヨが笑います。


「なんか、ピースケっぽい答えだったね。」


ピースケはのんびり。


「ごはん大事ですからねぇ。」


ショウタ、ついに笑い出します。


「結局そこに戻るのかよ!」


その瞬間――


時計塔のどこかで、


また小さく、


カチリと音が鳴りました。

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