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賢者の埋蔵金 その3

市場の空気が、


ぴたりと止まっています。


人々は笑顔。


でも、


誰も瞬きをしない。


風も吹かない。


焼きたてのパンの湯気すら、


空中で静止していました。


ショウタ、ガクガク。


「帰りたい帰りたい帰りたい……」


サヨも顔をこわばらせます。


「これ、幻……?」


すると。


市場の人々が、


再び同時に言いました。


『欲しいものを選んでください』


その瞬間――


目の前に、


無数の“扉”が現れます。


金色の扉。


銀色の扉。


木の扉。


空に浮かぶ扉。


全部違う。


全部から、


魅力的な光が漏れていました。


クロックの声だけが、


どこからか響きます。


『賢者エルドランの試練。』


『本当に求めるものを選びなさい。』


ショウタが叫びます。


「普通の宝探しじゃないぃぃ!!」


すると。


扉が一つ、


ショウタの前へ近づいてきました。


中には――


山積みの金貨。


巨大な城。


豪華な料理。


ショウタの目が泳ぎます。


「うっ……」


黒いヒヨコには、


“世界一巨大なたまごサンド”。


白もふには、


“無限おやつ空間”。


サヨには、


“失われた古代図書館”。


夜の龍には、


“誰にも恐れられない夜空”。


巨大猫には、


“永遠に静かな昼寝場所”。


それぞれの願いに合わせた扉。


サヨが息をのみます。


「これ……心を読んでる」


そのとき。


ピースケの前にも、


一枚の扉が現れました。


静かな木の扉。


ふわっと風が漏れています。


ショウタが聞きます。


「ピースケの欲しいものって何なんだ?」


ピースケは首をかしげました。


「なんでしょうねぇ。」


「そこ曖昧なの!?」


すると。


木の扉がゆっくり開きます。


中に見えたのは――


“誰もいない食卓”。


静寂。


広い部屋。


湯気の立つ料理。


でも席は全部空。


サヨが小さくつぶやきます。


「……え?」


ピースケはその光景を見て、


しばらく黙っていました。


風だけが静かに吹きます。


クロックの声が響きました。


『選べば、その願いは叶います。』


『ただし、一度選んだら戻れません。』


ショウタが青ざめます。


「絶対ヤバい契約!!」


その瞬間――


市場の空が、


ぐにゃりと歪みました。


扉たちが、


ゆっくり近づいてきます。


まるで、


「選べ」と迫るみたいに。


白もふが不安そう。


『……なんか、こわい』


夜の龍も低くうなります。


『欲望ノ固定化カ』


クロックの声が静かに響きました。


『賢者は知っていた。』


『人は、“欲しいもの”に閉じ込められると。』


静寂。


ショウタが一歩下がります。


「……つまり?」


サヨが答えました。


「叶った瞬間、そこから動けなくなる」


その瞬間。


金貨の扉の向こうで、


“動かなくなった冒険者たち”が見えました。


笑顔のまま。


永遠に。


ショウタ絶叫。


「ホラーぁぁぁぁ!!!」

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