夜空 その3
『……うるさい』
その声が響いた瞬間――
天海の光が、
ぴたりと止まりました。
白もふの輝きも、
夜の龍の星空も、
全部が静止。
まるで世界が「しーっ」されたみたい。
ショウタ、小声。
「こわい。」
天海の奥。
ゆらぁ……っと、
何かが起き上がります。
最初は小さな影。
でも近づくにつれ、
全員の顔が引きつりました。
巨大。
とにかく巨大。
雲より大きい、
“眠そうな猫”。
ふわふわの長い毛。
半分閉じた目。
尻尾が揺れるたび、
空間がゆがみます。
ショウタ絶叫。
「猫ぉぉぉ!?!?」
サヨは逆に目を輝かせました。
「かわいい……!」
雲竜は真顔。
『“静寂の獣”』
ショウタが頭を抱えます。
「毎回名前だけラスボス級!!」
巨大猫はあくびしました。
ふぁぁぁ……。
その瞬間、
天海に浮かぶ波が全部止まります。
クジラの歌まで止まりました。
ルゥ……ン……(停止)
ショウタ青ざめ。
「世界が一時停止した!?」
少女――空の管理者が震え声で言います。
『音と動きを静める存在……』
『眠りの調停者』
白もふはぷるぷる震えました。
『怒らせた』
夜の龍も静かに目を伏せます。
『……昼ガ騒ギスギタ』
巨大猫は眠そうな目で全員を見回しました。
そして――
ピースケの頭の上の白もふを見つけます。
『……また暴走したのか』
白もふ、しゅん。
『ごめんなさい』
ショウタが驚きます。
「怒られてる!?」
でも。
巨大猫の視線が、
次にピースケへ向きました。
静寂。
ピースケはぺこり。
「おはようございますぅ。」
ショウタ絶叫。
「猫相手にも挨拶!!」
巨大猫は少しだけ瞬きしました。
『……変な鳥だな』
サヨ、小声。
「否定できない……」
巨大猫はゆっくり近づいてきます。
そのたびに、
世界の音が小さくなる。
風の音。
波の音。
鼓動まで。
静寂が深くなっていく。
ショウタが耳を押さえました。
「音が消えるの怖っ!!」
でも。
ピースケだけは普通でした。
「眠いんですかぁ?」
巨大猫は止まります。
『……眠れない』
静寂。
サヨが目を見開きました。
「え?」
巨大猫はぼそっと続けます。
『ずっと昼と夜が暴れてる』
『静かにしても、すぐ騒ぐ』
白もふと夜の龍、
同時に目をそらす。
ショウタ即ツッコミ。
「お前らかぁぁ!!」
巨大猫は大きくため息をつきました。
その吐息だけで、
星がふわっと流れていきます。
『だからずっと起きてる』
ピースケは静かにうなずきました。
「それは大変ですねぇ。」
そして。
のんびりと、
とんでもないことを言います。
「じゃあ今日は、みんなで静かに寝ましょうかぁ。」
全員停止。
ショウタ、固まる。
「……え?」
白もふも、
夜の龍も、
クジラたちまで停止。
巨大猫だけが、
初めて少し目を開きました。
『……一緒に?』




