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雲竜 その9

ゴゴゴゴゴ……。


空島の奥。


雲に埋もれていた巨大な扉が、


ゆっくり開いていきます。


その大きさは、


山より巨大。


表面には古代文字と、


翼の紋章。


風がそこへ吸い込まれていました。


ショウタ、真顔。


「帰らせてくれないの?」


サヨも苦笑い。


「タイミングが完璧すぎる……」


黒いヒヨコはピースケの頭の上で、


『ぴぃ。』


とのんきに鳴いています。


ショウタが指差します。


「お前、原因じゃないよな!?」


ヒヨコ、ぷるぷる首振り。


『たぶん。』


「“たぶん”!?」


そのとき。


雲竜が険しい顔になりました。


『あの扉は……“空の王座”』


山神も静かに目を細めます。


『まだ残っていたか』


ショウタが聞き返します。


「なにそれ?」


クロノワールが低く答えました。


「空を管理する中枢施設だ。」


「またスケールでかい!!」


ピースケはのんびり扉を見ています。


「なんだか呼ばれてますねぇ。」


ショウタ即答。


「行かない!!」


しかし――


ゴォォォ……。


扉の奥から、


やさしい風が吹いてきました。


その風は、


ピースケの羽をふわっと揺らします。


そして。


黒いヒヨコが急に立ち上がりました。


『ぴ!』


ヒヨコの小さな羽が、


扉の方向を指しています。


サヨが気づきました。


「……案内してる?」


ヒヨコはこくこくうなずきます。


『あそこ、ひとり』


静寂。


雲竜の顔が変わりました。


『……まだ“管理者”が残っているのか』


ショウタ、絶望。


「また孤独系ボス!?」


でも。


ピースケは静かに歩き出します。


「行ってみましょうかぁ。」


ショウタが頭を抱えました。


「知ってたよ!!」


一行は巨大な扉の中へ。


その先に広がっていたのは――


“空の神殿”。


無数の柱。


空中を流れる光。


床の下には雲海。


そして中央。


巨大な玉座。


そこに――


“誰か”が座っていました。


長い白い髪。


翼のマント。


目を閉じたまま動かない、


小さな少女。


サヨが息をのみます。


「人……?」


雲竜がゆっくり頭を下げました。


『空の管理者……』


ショウタが小声。


「管理者、女の子なの!?」


その瞬間。


少女の目が、


ゆっくり開きました。


透き通るような青い瞳。


でも。


感情がほとんどない。


少女は静かに言います。


『……空喰いが消えた。』


その声は、


機械みたいに静かでした。


ピースケが一歩前へ。


「おはようございますぅ。」


ショウタがツッコミ。


「第一声それ!?」


少女はじっとピースケを見つめます。


『風と同調した存在。』


『想定外。』


黒いヒヨコが、


ぴょこんと前へ出ました。


『ただいま。』


少女の目が、


わずかに揺れます。


静寂。


『……帰ってきたの?』


ヒヨコはうなずきました。


『ごはんもらった。』


ショウタ、思わず吹き出す。


「報告が平和!!」


でも。


少女の表情は少しだけやわらかくなりました。


ほんの少しだけ。


そのとき――


神殿全体が突然揺れます。


ゴゴゴゴゴ!!


警報のような光が点灯。


雲竜が振り向きます。


『何事だ!?』


少女が静かに立ち上がりました。


そして、


初めて焦った顔を見せます。


『……封印層が壊れた。』


ショウタが青ざめました。


「また!?」


少女はゆっくり振り向きます。


その視線の先――


神殿のさらに奥。


巨大な“閉ざされた門”が、


内側から叩かれていました。


ドン。


ドン。


ドォン……。


サヨが震え声で言います。


「……あの中、なにがいるの?」

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