雲竜 その10
ドン。
ドォン……。
閉ざされた門が揺れるたび、
神殿全体の雲がざわめきました。
空の下にある雲海まで波立っています。
ショウタ、半泣き。
「絶対ヤバいやつじゃん!!」
少女――空の管理者は、
門を見つめたまま静かに言いました。
『“嵐の心臓”』
サヨが聞き返します。
「嵐の……心臓?」
雲竜が険しい顔になります。
『空を循環させる原初機関か』
ショウタが即ツッコミ。
「また専門用語!!」
少女はゆっくり説明しました。
『空には流れが必要。』
『風、雲、雷、雨。』
『それを動かしている核が、“嵐の心臓”』
その瞬間――
ドゴォォン!!
門が大きくへこみました。
ヒビが広がります。
サヨが息をのみます。
「中から壊そうとしてる……!」
黒いヒヨコが、
ピースケの頭の上でぷるぷる震えました。
『……おこってる』
ショウタが聞き返します。
「怒ってる?」
少女は静かにうなずきます。
『長い間、空喰いに風を奪われていた。』
『循環が止まり、“嵐の心臓”は暴走寸前。』
ピースケは門を見上げました。
「苦しかったんですねぇ。」
ドン!!
今度は衝撃で柱が揺れます。
天井から雲の欠片が落ちました。
雲竜が叫びます。
『もう保たない!』
ショウタ、絶望。
「毎回ギリギリすぎる!!」
そのとき。
門の隙間から、
青白い“雷”が漏れました。
バチバチバチ!!
空気が焦げます。
サヨが後ずさり。
「うわっ!」
でも。
ピースケだけは動きません。
静かに雷を見つめています。
少女が聞きました。
『怖くないの?』
ピースケは首をかしげます。
「怒ってるだけなら、たぶんお話できますぅ。」
ショウタが叫びます。
「毎回その理論で行くな!!」
その瞬間――
バキィィィン!!
ついに門が割れました。
眩しい光。
暴風。
そして――
巨大な“雷の鳥”が飛び出します。
翼を広げるたび、
雷鳴が轟く。
目は嵐そのもの。
ショウタ絶叫。
「でっかぁぁぁ!!」
雷鳥は咆哮しました。
ギャォォォォォ!!
音だけで雲海が割れます。
雲竜が踏ん張ります。
『まずい、空域が裂ける!』
少女も苦しそう。
『制御不能……』
雷鳥は暴走していました。
何百年もの怒りを抱えたまま。
雷が神殿を破壊し始めます。
ドゴォォン!!
柱が崩壊。
サヨが叫びます。
「神殿が落ちる!!」
しかしそのとき――
ピースケが前へ出ました。
風が静かに集まります。
黒いヒヨコも肩へ移動。
『ぴ。』
ピースケは雷鳥へ向かって、
大きな声で言います。
「おはようございますぅーー!!」
静寂。
ショウタ、崩れ落ちます。
「挨拶から入るのやめろぉぉ!!」
でも。
雷鳥の動きが、
ほんの少しだけ止まりました。




