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雲龍 その7

「だいじょうぶじゃないでしょ!!」


サヨの声が、


空へ響きました。


風が一瞬だけ揺れます。


ショウタも叫びました。


「戻ってこいよピースケぇぇ!!」


でも。


返事はすぐには来ません。


空いっぱいに広がっていた風の翼が、


少しずつ薄くなっていきます。


雲竜が低く言いました。


『同調限界を超えている……』


山神も険しい顔。


『このままでは“風そのもの”になる』


ショウタが青ざめます。


「存在消失ルートじゃねぇか!!」


そのとき――


ミニピースケたちが、


静かに空を見上げていました。


いつもの騒がしさがない。


『……本体。』


『遠いですぅ。』


『でも、まだ聞こえるですぅ。』


サヨがハッとします。


「ミニピースケたち……!」


雲竜が気づきました。


『分体が“個”を繋いでいるのか』


ショウタが聞き返します。


「つまり!?」


クロノワールが短く答えます。


「アンカーだ。」


「急に専門用語!!」


でも。


意味は分かりました。


ミニピースケたちがいる限り、


ピースケは完全には消えない。


サヨは空へ向かって叫びました。


「ピースケー!! 朝ごはん、まだ作ってないよー!!」


静寂。


ショウタがツッコミ。


「そこで朝食!?」


でも。


風がふっと笑った気がしました。


『……パンですかぁ?』


サヨが泣き笑いになります。


「そう! 特製はちみつパン!」


その瞬間――


空の風が、


少しだけ“ピースケの形”を取り戻しました。


ショウタが叫びます。


「戻ってる!!」


しかし。


空喰い本体が、


激しくうなります。


『拒絶』


『循環、不要』


黒い侵食が再び広がりました。


青空を削り取っていく。


山神が踏ん張ります。


『押し返せぬ!!』


雲竜も苦しそう。


『風が足りない!』


そのとき――


地上から、


新しい風が吹きました。


ふわっ。


全員が振り向きます。


遠く下の村。


畑。


森。


海。


そこから、


小さな風が次々空へ昇ってきます。


ショウタが目を見開きました。


「……村の風?」


サヨも気づきます。


「みんな……!」


村人たちが、


風車を回していました。


洗濯物を振っています。


子どもたちが走り回っています。


海辺では漁師たちが帆を広げ、


山では木々がざわめく。


世界中の“暮らしの風”。


それが全部、


空へ集まってきていたのです。


雲竜が震えます。


『風脈が……再接続されている……!』


ピースケの声が、


少しはっきりしました。


『……あったかいですねぇ。』


その瞬間――


巨大な風の翼が、


再び形を取り戻します。


今度はもっと大きい。


もっと優しい。


空喰い本体が、


初めて後ずさりました。


『ナゼダ』


ピースケの声が響きます。


『空って、誰か一人のものじゃないんですよぉ。』


『みんなの風なんですぅ。』


そして――


風の翼が、


空喰い本体を包み込みました。


黒い侵食が、


ゆっくり青空へ溶けていく。


ゴォォォ……。


サヨが涙を浮かべます。


「消えてる……!」


ショウタも呆然。


「勝ってる……?」


しかしその瞬間――


空喰い本体の中心に、


小さな“黒い核”が残りました。


ドクン。


ドクン。


雲竜が凍りつきます。


『……まだ終わっていない』


黒い核が、


ゆっくり割れました。


中から現れたのは――


“真っ黒なヒヨコ”。


静寂。


ショウタ、ぽかん。


「……え?」

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