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特訓 その2

空の向こうから、


ゆっくりと“影”が近づいてきます。


それは雲じゃありません。


鳥でもない。


もっと……形がはっきりしている。


ゴゴゴゴ……。


山の空気が一気に重くなりました。


ショウタが顔をしかめます。


「またデカいやつ来る流れやめろって……」


サヨは目を細めて空を見ました。


「……あれ、船?」


その瞬間――


雲を突き破って現れたのは、


空を飛ぶ巨大な“古代飛行船”でした。


甲板には、


見たことのない紋章。


そして、


その中心でこちらを見下ろす人影。


クロノワールが目を細めました。


「……遺跡管理局か」


ショウタが即ツッコミ。


「そんな国家機関みたいなのあったの!?」


飛行船から拡声器のような声が響きます。


『こちらは“空域遺跡監査団”』


『規格外存在を確認したため、回収に来た』


ピースケが首をかしげます。


「回収……?」


サヨが青ざめました。


「それ、いい意味じゃないよね?」


山神が一歩前に出ます。


ドン。


空気が揺れました。


『この山のものに手を出すな』


ショウタが小声。


「急にかっこいいセリフ出た」


しかし飛行船は止まりません。


甲板の装置が起動します。


ギギギギギ……!!


巨大な“光の網”が展開されました。


ピースケに向かって降下してきます。


サヨが叫びます。


「ピースケ!」


その瞬間――


ピースケは一歩だけ前に出ました。


山での特訓の姿勢のまま。


静かに息を吸います。


「……空気と、仲良く」


ふわっ。


翼が揺れました。


次の瞬間――


空の風が“止まります”。


ショウタが固まります。


「え……止まった?」


光の網が空中でピタリと停止。


飛行船の推進も揺らぎ始めます。


監査団の声が焦ります。


『重力制御に干渉されている!?』


サヨが目を見開きます。


「ピースケが……空を止めてる……」


ピースケはゆっくり見上げました。


「降りてきてくださいねぇ」


その一言。


ただそれだけで――


飛行船が、


ふわりと“降りる意思”を持ったみたいに、


ゆっくり下降を始めます。


ショウタ絶叫。


「説得で飛行船落とすなぁぁ!!」


ドン……。


飛行船は山の麓に着地しました。


甲板から降りてきた監査団は、


全員ぽかんとしています。


『……こんな干渉は報告にない』


ピースケはのんびり首をかしげます。


「回収って、何をですかぁ?」


監査官が資料を見ます。


『“風の同調体”……危険級異常存在』


ショウタが振り向きます。


「異常扱いされてる!!」


山神が静かに言います。


『この者は山と同じだ』


監査団が黙ります。


サヨが一歩前に出ました。


「危険じゃないよ。ピースケは……ただ、みんなと同じ空気を感じてるだけ」


静寂。


風が少しだけ吹きました。


ピースケの羽がゆっくり揺れます。


監査団のひとりがつぶやきます。


『……解析不能』


もう一人が言います。


『撤退提案を提出する』


そして――


飛行船は再び浮き上がりました。


去り際、


監査官が小さく言います。


『……また記録更新だな』


空へ消えていきます。


静かになった山。


ショウタがその場に座り込みます。


「終わった……?」


サヨが笑います。


「終わったね」


ピースケは空を見上げて言いました。


「いい特訓でしたねぇ」


山神が一言。


『次は“空の上の山”だな』


ショウタが叫びます。


「もうやめろぉぉ!!」


その空の上では――


雲がゆっくり形を変えながら、


まるで何かを待っているように漂っていました。

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