雲竜 その1
数日後――
村は久しぶりに平和でした。
本当に平和。
呪いなし。
巨大ボスなし。
虹色アフロなし。
ショウタは広場で寝転びながら空を見ています。
「こういうのでいいんだよ……。」
サヨも笑いました。
「静かだねぇ。」
ピースケは荷車を引きながらのんびり歩いています。
いつもの日常。
……のはずでした。
そのとき。
空から、
ぽてっ。
何かがショウタの顔に落ちました。
「ぶへっ!?」
サヨが吹き出します。
「なにそれ?」
ショウタが顔からはがします。
白くてふわふわ。
小さな雲みたいな物体。
しかも、
ぷるぷる動いています。
静寂。
ショウタがゆっくり言いました。
「……生きてる?」
その瞬間――
『ぴゅい。』
鳴いた。
ショウタ絶叫。
「雲が鳴いたぁぁぁ!!」
ピースケが近づいてきます。
「おやぁ?」
すると。
空の雲がぐるぐる渦を巻き始めました。
ゴォォォ……。
サヨが顔を上げます。
「……あれ。」
雲の中から、
大量の“ふわふわ生物”が降ってきました。
ぽてっ。
ぽてぽてっ。
広場が一瞬で真っ白になります。
タヌキ大混乱。
「増えたぁぁ!!」
ミニピースケたちも出てきました。
『対抗勢力ですぅ!?』
『空属性ですぅ!』
ショウタがツッコミ。
「勢力争いみたいに言うな!」
ふわふわ生物たちは、
ぴょこぴょこ跳ねながら、
なぜか全部ピースケへ集まっていきます。
『ぴゅい!』
『ぴゅぴゅい!』
ピースケの羽へもふもふ突撃。
完全になついています。
サヨが笑いました。
「かわいい〜!」
しかし。
クロノワールだけが険しい顔。
「……まずいな。」
ショウタが振り向きます。
「え?」
クロノワールは空を見上げました。
雲の渦。
その奥。
巨大な影。
「親が来る。」
静寂。
ショウタ、ゆっくり聞き返します。
「……親?」
次の瞬間――
ゴォォォォォ!!
空が裂けました。
雲の海から現れたのは、
超巨大な“雲の竜”。
体が全部ふわふわの雲でできています。
でも目だけは金色。
村人たち悲鳴。
「空が埋まったぁぁ!!」
サヨが呆然。
「大きすぎる……」
雲竜はゆっくり村を見下ろしました。
そして――
ピースケを見て停止。
金色の目が細まります。
ショウタが震え声。
「……なんか怒ってる?」
しかし次の瞬間。
雲竜は、
ものすごく丁寧に頭を下げました。
『我が子らを保護していただき、感謝する』
全員停止。
ショウタがぽかん。
「……え、いい竜?」
その瞬間、
ふわふわ生物たちが一斉にピースケの上で跳ねました。
『ぴゅいー!』
『ぴゅいぴゅい!』
ピースケは困ったように笑います。
「なつかれましたねぇ。」
しかし。
雲竜は次の言葉で、
空気を変えました。
『……ですが。』
金色の目が細く光ります。
『“空の上の山”が崩れ始めています』
山神が静かに目を開きました。
『……ついに来たか』
ショウタが頭を抱えます。
「だから平和が短いんだよぉぉ!!」




