しゃべる遺跡 その2
ドォォォン……。
遺跡の奥から現れた影は、
ゆっくりと形を持ち始めました。
それは――
巨大な“パンのゴーレム”。
石の体に、
焼き立てパンのような表面。
ところどころにバターのような光沢。
ショウタは固まります。
「なんでパンで戦闘兵器作るんだよ!!」
サヨはぽかんと見上げています。
「……おいしそうなのに怖い」
タヌキはすでに震えています。
「パンなのに殴ってくるやつだよあれぇ!」
ゴーレムは低く響く声で言いました。
『継承者よ……試練を受けよ』
クロノワールが目を細めます。
「古代遺跡の自動防衛機構か」
魔王は腕を組みました。
「面白い」
ショウタが即ツッコミ。
「楽しむな!!」
その瞬間――
パンゴーレムが動きました。
ズシン!!
床が割れます。
巨大な拳が振り下ろされました。
ドゴォォン!!
ショウタ、転がる。
「初手が重すぎる!!」
しかしピースケは落ち着いています。
「パンですねぇ。」
「そこ?」
ピースケはゴーレムを観察します。
「焼き具合がいいですねぇ……外カリ中モチですぅ。」
ショウタ絶望。
「分析するなぁぁ!!」
ゴーレムは次の攻撃に移ります。
腕が伸び、
無数のパン弾が発射されました。
ボボボボボ!!
サヨが悲鳴。
「パンが飛んでくるの意味わかんない!」
しかしベルフェルが前に出ます。
『解析開始』
パンを一つキャッチ。
真顔で一口。
もぐ。
沈黙。
ショウタ叫び。
「食ったぁぁぁ!!」
ベルフェルは静かに言いました。
『再現可能』
「そこ重要!?!?」
そのとき――
ゴーレムが止まりました。
じっとベルフェルを見ます。
『……味を理解した者』
空気が変わります。
遺跡全体が静かになりました。
サヨが小声で言います。
「なんか……会話成立してる?」
ゴーレムはゆっくり拳を下ろしました。
『合格』
ショウタ、固まる。
「え?」
床が開きます。
ゴゴゴゴゴ……。
地下への階段。
タヌキが叫びます。
「ボス倒してないのに通してくれたぁ!」
クロノワールが納得顔。
「試練は戦闘ではなく理解だったな」
魔王がうなずきます。
「合理的だ」
ショウタは叫びます。
「どこがだよ!!」
一行は地下へ進みます。
そこに広がっていたのは――
巨大なパン工房でした。
石の炉。
古代のオーブン。
光る小麦の畑。
サヨが目を輝かせます。
「すごい……パンの遺跡だったんだ」
ピースケは感心しています。
「朝ごはんの聖地ですねぇ」
そのとき――
中央の台座が光りました。
そしてゆっくり現れる、
一冊の“黄金のレシピ”。
ショウタが身構えます。
「今度こそヤバいやつだろ!」
しかし書かれていたのは――
『究極のふわふわ朝パンの作り方』
沈黙。
ショウタ、崩れ落ちます。
「ただの朝食遺跡だったぁぁ!!」
サヨは笑いました。
「でもすごく平和だね」
ピースケは嬉しそうに言います。
「これで朝ごはんがもっとおいしくなりますねぇ」
その瞬間――
遺跡全体がゆっくり光り始めました。
パンの香りが満ちていきます。
まるで遺跡そのものが、
“満足した”みたいに。
ショウタは天井を見上げました。
「もうボス出ないよな……?」
静かな声が返ってきます。
『終了モード、解除』
そして――
地上へ戻ると、
山の空にはパン型の雲が浮かんでいました。
サヨが空を見て笑います。
「今日、なんかずっとお腹すく日だね」
ショウタは遠くを見つめます。
「もう遺跡行きたくない……けど次も絶対行くんだろうな……」
ピースケは元気に言いました。
「次はお昼ごはんの遺跡かもしれませんねぇ」
ショウタ絶叫。
「もうやめろぉぉぉ!!」




