ミニピースケ その3
井戸の闇が、ぱっくりと開きました。
ドロォ……。
黒い水が空中へ逆流し、
村の広場に“夜そのもの”が流れ込んできます。
ショウタが後ずさり。
「井戸ってそういう開き方する!?怖いって!!」
サヨも息をのんでいます。
「空気が……重い……。」
そのとき――
カタ……カタカタ……。
はっきりと聞こえました。
骨がぶつかるような音。
そして、闇の中からゆっくりと姿が現れます。
骸骨。
でも、さっきの骸骨騎士たちとは違います。
全身が“水晶みたいに黒く光る骨”。
目の奥に、青ではなく赤い炎。
龍が低く唸りました。
『……“水脈の番人核”。侵食済み。』
ショウタが即座に反応。
「また核!?最近核多すぎ!!」
骸骨は井戸の縁に立ちました。
カタ……。
そして、首だけがゆっくり動きます。
ピースケを見ました。
『……増幅器……確認。』
ショウタ、即座にピースケを指差し。
「やっぱり原因扱いじゃん!!」
ピースケはちょっと困った顔。
「えぇ……そんなつもりは……」
サヨが小さく言います。
「でも、昼も夜も全部ピースケ中心に起きてるのは事実だよね……」
「サヨ、それ言わないであげて!!」
その瞬間――
骸骨が手を上げました。
バッ。
井戸の闇が一気に膨れます。
ゴゴゴゴゴ……!!
空が反転。
星が消えかけます。
龍が叫びました。
『水脈が暴走します!!』
井戸の黒い水が、
巨大な渦になって村ごと飲み込もうとします。
ショウタ絶叫。
「スケール急に世界終わり級ぃぃ!!」
サヨが叫びます。
「どうすればいいの!?」
龍が答えます。
『核の“再封印”には、感情の逆流が必要です。』
ショウタが聞き返します。
「逆流?」
龍はピースケを見ました。
『増幅器の能力を使い、“感情を一度だけ正反転させる”。』
ピースケが目を瞬きます。
「正反転……?」
骸骨が動きます。
カタカタカタ!!
井戸の闇がさらに広がる。
もう時間がありません。
そのとき――
タヌキが小さく言いました。
「……あの骸骨、悲しい顔してる。」
全員が骸骨を見る。
確かに。
赤い炎の奥に、
“苦しそうな揺らぎ”がありました。
サヨがつぶやきます。
「侵食されてるだけなのかも……」
ピースケは静かに一歩前へ出ました。
「じゃあ、ちゃんと聞いてみますねぇ。」
ショウタが慌てます。
「話してる暇ある!?世界飲まれるよ!?」
でも。
ピースケは井戸の縁を見上げました。
骸骨と目が合います。
そして――
静かに言いました。
「……苦しいですかぁ?」
一瞬。
風が止まりました。
骸骨の動きが止まります。
カタ……。
赤い炎が揺れました。
そして、小さく。
『……くるしい』
ショウタ、固まります。
「しゃべった……」
龍が低く言いました。
『核の意識が残っている。まだ救える。』
その瞬間――
井戸の闇が一気に暴れます。
ゴォォォォ!!
骸骨を“完全侵食”しようとする力。
サヨが叫びます。
「間に合わない!!」
ピースケは大きく息を吸いました。
そして――
虹色の光はもうない。
でも、代わりに。
羽の奥に残っていた“小さな光”が、ふっと灯ります。
ピースケは優しく言いました。
「じゃあ……少しだけ、楽にしましょうかぁ。」
その瞬間――
井戸の闇に向かって、
やわらかい風が吹きました。
ほんの一瞬だけ、
黒が止まりました。




