ミニピースケ その1
その夜――
村は静かでした。
秋の虫の声。
やさしい風。
昼間の大騒ぎが嘘みたいです。
ショウタは布団へ倒れ込みました。
「今日はもう何も起きないでくれ……。」
サヨも眠そうです。
「おやすみー。」
ピースケは馬小屋で丸くなっています。
巨大なので“丸い山”みたい。
しかし。
そのとき。
村の広場の井戸から――
『ぴよぴよですぅ。』
小さな声。
カラン……。
井戸のつるべが揺れました。
夜風が止まります。
すると。
井戸の中から、
ぴょこっ。
小さな虹色のトサカ。
続いて、
ちっちゃいくちばし。
最後に、
ミニピースケが顔を出しました。
『こんばんはですぅ。』
静寂。
さらに――
ぴょこっ。
『せまいですぅ。』
ぴょこっ。
『誰か押してますぅ。』
ぴょこっ。
『落ちるぅぅ!』
次々出てくるミニピースケ。
ショウタの家の窓が開きました。
眠そうな顔。
「……何の音?」
その瞬間。
ミニピースケ軍団が一斉に振り向きます。
『見つかったですぅ。』
ショウタ硬直。
「増えてるぅぅぅ!?」
どうやら昼間に消えたと思われていたミニピースケたち、
何匹か残っていたようです。
しかも。
井戸の中で暮らしていたらしい。
ショウタが頭を抱えます。
「なんで井戸!?」
ミニピースケの一羽が胸を張りました。
『ひんやりして快適ですぅ。』
「住み心地レビューいらない!」
そのころ。
本体ピースケも目を覚ましました。
「ん〜……?」
巨大ニワトリが眠そうに広場へやってきます。
そして。
井戸のまわりに集まるミニ自分たちを見て停止。
静寂。
「……増えてますねぇ。」
「他人事みたいに言うな!!」
ミニピースケたちは本体を見て大喜び。
『親ですぅ!』
『本体ですぅ!』
『でかいですぅ!』
ショウタがツッコミ。
「親子判定なんだ!?」
すると。
一羽のミニピースケが、
井戸の奥を指差しました。
『でもですねぇ。』
『まだ下にいますぅ。』
静寂。
ショウタがゆっくり聞き返します。
「……何が?」
その瞬間――
ゴゴゴゴゴ……。
井戸の底から、
低い振動音。
サヨも起きて外へ飛び出してきました。
「な、なに!?」
井戸の水面が、
ぼこぼこ泡立っています。
タヌキも青ざめました。
「井戸の神様怒った!?」
ショウタ絶望。
「また神ぃぃぃ!!」
次の瞬間――
ドォォォォン!!
井戸から、
巨大な虹色の水柱が噴き上がりました。
空まで届く勢い。
村人たち悲鳴。
そして。
水柱の中から、
ゆっくり巨大な影が現れます。
長いヒゲ。
虹色のウロコ。
光る目。
ショウタの顔が引きつりました。
「……龍?」
その龍は、
空中でゆっくりと体をくねらせ――
ピースケを見下ろしました。
そして、
ものすごく丁寧に言ったのです。
『……あなたが、“虹の親鳥様”ですね?』




