表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
罪を歩く旅を知らぬ者  作者: 小夜 新成
ファストボーン編
11/15

第10話 新しい仲間



 赤く染まる夕陽に背中を照らされながら街に帰還。

 俺はシスリーとギルドの前で待機していると、依頼達成報告を終えたルフィアが戻ってきた。


「ロックタートルの素材、三五〇フィルトで買い取ってくれた」

「おっ、結構いい値だな!」

「俺が取った羽はどうだった?」

「十フィルト」

 安すぎる金額に、口を開けて固まるシスリー。

 思い返せば、レッサーキックスの爪も十フィルトだったな。


「シスリー、これが需要と供給ってやつだ」

 ドヤ顔を向けると、シスリーの鋭い視線が俺を射抜いた。

「なんか、腹立つな。しばきたくなる面しやがって」

「そうカリカリすんなよ! そういう日か?」

 途端に、シスリーの眉間に皺が深く集まる。

「カッチーンッ。兄ちゃん、ちょっと殴るから食いしばれ」


 すると、黙って横目に見ていたルフィアが、とうとう割り込んだ。

「こら、二人ともやめて。それと、ノイル。今のはない」

「そうだぞ! だからモテねえんだよ」

 二人の鋭い言葉が音を立てて胸を刺す。

 この時、冗談でも言わないようにしよう、と俺は心に誓った。


「シスリー、ご飯食べに行きましょ」

「えっ! いいのか⁈」

「しっかり働いてくれたからね」

「やった! なぁ、ルフィ姉って呼んでいいか⁈」

「いいよ」

 笑顔を交わし、笑顔で歩き始めた二人。

 背中を丸めた俺はその微笑ましい姿を薄目で眺めた。


 すっかり仲良しだな、ルフィアは……。

 恥ずかしながら、嫉妬心が芽生えた。

「お、おうシスリー! 俺もノイル兄って呼んでいいぜ——」

「呼ばねえ。百歩譲ってノイルだな!」

「そうよ、ノイル。ご飯食べるなら早く着いて来て」

 非常に厄介なコンビが成立しやがった。


 ちなみに俺が討伐したんだが……。

 男一人で馴染めるのか、俺は? 早く男仲間が欲しいな。イカつい奴……。

 そんなことを考えながら、二人の少し後ろをとぼとぼと歩いた。



——




 空は瞬く間に藍色に染まる。

 俺達はルフィアと出会った当初に訪れた酒場で丸テーブルを囲っていた。

 ガヤついた雰囲気と香ばしい香りは、どこか気持ちが昂る。


「俺もエール飲みたい!」

 シスリーは羨ましそうにジョッキから溢れた泡を眺めた。

「子供にはまだ早い! 十六歳になってからだ」

「うるせえ。ルフィ姉と違って、ノイルはまだ俺と変わんねえだろうがよ! クソデカが」


「ふっ、何言ってんだ。目に見えねえ大きな差があんだよ! それが分かるようになったら認めてやろうじゃないか」

「テメェはいちいち鼻に付くな。いいからよこせ!」

 シスリーが強引に樽ジョッキを引っ張る。

「おいっ、バカ! 溢れるだろうが!」


 それを眺めたルフィアは溜息を落とす。

「やめて。大事なご飯にかかっちゃう。シスリーはこれ」

 そう言って、果実ジュースを差し出した。

「お酒はあと二年後。ルールを守るのも大人よ」

「そうだな!」

「おい、ルフィアの言うことばっかり聞きやがって」

「たりめえだろ? 言い方っつうもんがあるんだよ」

 それは、ごもっともかもしれない。


「ルールを守るのも立派な大人だぞ、シスリー!」

「何回も言ってんじゃねえ!」

「あぁあっ……」

 呆れた俺は椅子に大胆にもたれかかった。そのすぐ側で目を輝かせるシスリーは、「乾杯しようぜ!」と小さなジョッキを持ち上げる。

 やれやれ、と俺も切り替えるようにエールを持ち上げた。


「まだ仮だけど、新しい仲間に!」

『乾杯‼︎』

 ルフィアもなんだかんだ見捨てることはできず、ひとまずシスリーを仲間に迎え入れた。


 少し、いやかなり生意気だが、大事な仲間だ。

 かなり危険なパーティに迎え入れたからには、絶対に死なせてはならない。

 そう思いながら、エールを勢いよく流し込んだ。


 やっぱり苦いな……。




——




 食事を済ませ、ほろ酔いだ。

 失敗が人を成長させる。今日はこれ以上飲まないでおこう。


「で、シスリーはどこで弓の腕を鍛えたんだ?」

 弓の知識はないが、腕がかなり良いことは素人の俺でも分かる。

 シスリーは椅子をギコギコと前後に揺らしながら答えた。


「家の庭に的を作って、暇があればひたすら練習してた。冒険者になったら荒稼ぎできるようにな! 今はちっとも役に立たねえけど、代わりにナイフの扱いも慣れてるぞ!」

 劣悪な環境で得た戦う技術が、冒険者になれば生きてくる。

 裏路地育ちの冒険者。なんか、かっこいいな。


「遠距離も近距離もいけるなら、ノイルより優秀かもね」

 さらりと棘のある言葉を落とすルフィア。

「傷つくから言うなよ」

 酒のおかげで何とか軽傷だ。

 

「そうだ!」

 シスリーが何かを思い出したように、揺らしていた椅子をカタンッと戻した。

「俺の家、親が残してくれた家だから二人とも住めると思うぜ。それなら宿代が浮くだろ?」


「シスリー、あなた最高」

 ルフィアの紅い瞳が煌めき、前のめりに食べ終えた皿を眺めた。


「ルフィア? 浮いた金を食費に充てたら意味ねえぞ?」

 瞳から光が消え、「分かってる」と姿勢を戻した。図星だったのだろう。

 ほっと一息ついた俺は、シスリーに視線を移した。


「それはかなり助かるよ!」

「だろ? 感謝しろよ、ノイル!」

 俺達が家に来るのが嬉しいのか、シスリーの表情には終始笑みが溢れている。


 残りのエールを飲み干した俺達は会計を済ませ、店を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ