第三十三話 吸魔生物
「よし…着いた…!」
俺はロゴス王国に到着。
しかし王国から感じられるのは果てしないほど強大な魔力。
それが懐かしい気配、ジャックとカーフェと交戦中なのだ。
ロゴス王宮玉座の間へと即座に向かう。
ドゴオオオオン!!
幾度となく鳴り響く戦闘音が俺を不安にさせる。
頼む…間に合ってくれ…!!
—————
『ディアスフィンドネーゼ』
敵の声と共にジャックとカーフェの姿も見えた。
ひどい傷だ…あの二人がここまでやられるなんて一体どんだけ強い奴なんだよ…。
しかし考えてる暇はない。
俺は敵が放った魔術が二人に当たる前に自分の身に受ける。
グイイイン……。
よし、後ろにいるジャックたちは無事。
どうやら間に合った。
「愚かな!!キサマなにしている!!」
コイツがこの魔力の持ち主か…。
確かに恐ろしいほど強そうだな…。
多分、俺が二人の前に立って魔法を掻き消した事に怒りを募らせているのだろう。
だが、なぜコイツ生きている?って顔に今はなっている。
「ああ…来てくれたのかい?」
「…遅いよ。」
ジャックとカーフェが顔を上げた。
二人の顔…久々に見るな。
「すみません二人とも。後は俺に任せて休んでて下さい。」
一言告げ、あの魔族の方へと振り返り腕を向ける。
話は後。今はコイツを倒す。
「お返しです。」
さっきジャックたちを庇った時に食らった魔術のエネルギー。
溜まった体の魔力を活性化させ、そっくりそのまま奴に撃ち返す…!
「……!!」
自分の魔術が戻ってきて、己に真空の刃を向けられている事が理解できずに固まってしまった魔族は技が命中。
巨大な体から大量の血を流し、ただただ立ち尽くす。
「こ、これは…!?我が先程放った''ディアスフィンドネーゼ''…!?なぜキサマが…!!」
「よし…成功だ。」
手をグッパグッパさせて成功を確かめる。
この体なら…戦える…!
「…マナ君?一体どうやったんだ…?それに君の気配は…。」
ジャックが後ろから声をかけてくる。
カーフェも同意見といった顔だ。
「まあ見てて下さい。」
微笑んで返す。
とにかく今は敵に集中しろ。
「キサマ…まさか…!本を持った赤髪…!!ケトス殿の言っていた''本の虫''か…!?」
どうやら俺の風貌を見て気づいたらしい。
「俺はマナ。その賢者の言う通り''本の虫''です。」
本を構え戦闘体勢に。
「ハハ…ハハハ!!魔族かと思っていればキサマ人間だな!!少しばかり魔力量かま多いだけで調子に乗らぬ方が良いぞ!!」
ダアアアアン!!
ジャックがチラリと教えてくれた奴の名、
''凄惨''のライザックが地を蹴る音が響き渡る。
なるほど…口ではああ言っていたが俺が魔術を跳ね返したのを見て危険視し、接近戦を仕掛けてきたか…。やはり頭が良い。
昔だったら瞬殺されてただろうな…。
「さらばだ!!人間よ!!」
グオオオン!!!
奴は体を掴もうとしてきた。
体に触れると発動するのか?
しかし恐ろしく大きな手はスカッと俺の体を通り抜けた。
「…なッ!?なんだこれは…!?」
体を掴めずにいる。それもそのはずだ。
俺の体に実体はない。
「この感じ…魔力の塊で出来た肉体…!キサマ!''魔素体''か!!」
「…その通りです。」
ライザックは後ろへと下がり一度距離をとった。
「ほう…ミストか…。''本の虫''は人間だと聞いていたが?」
「訳あって人をやめてミストになりました。」
俺の言葉にライザックは鼻で笑う。
「ハッ!ミストのような下級の魔物になるとはな!お前は知恵ある者だと聞いていたが失望だ!どうなって人から魔物になったかは聞かん。この場で殺してやる!」
叫び出すライザック。
…こええな…。
長引くとヤバいからすぐ終わらせないとな…。
ライザックが再び俺に向かって走り出す。
戦いの再開だ。
—————
「キサマがミストなら物理の類は効かんな!ならば魔術で終わりだ!!」
俺の懐へ超スピードで入り込んできたライザックが確かめるように体を爪で裂こうとしてくるも、ミストの体は物理攻撃を通さずに通り抜けていく。
そう、ミストの対処方法は魔法。
自身の魔力の許容量を超えると形が維持できなくなり、破裂してしまうのがメカニズムだ。
『ディアスフィンドネーゼ!!』
ライザックの魔術を込めた拳が俺の体に突き刺さる。
発生する真空の刃は体を八つ裂きにしようとするが…
「な、なぜだ!?なぜ魔力を食らっても死なぬ!?」
俺の体は無傷どころか魔力を吸収している。
そんな姿を見てライザックは相当はショックを受けていた。
後退りをしてうろたえている。
恐怖しているかのようにも見えた。
「…これはミストの固有能力''吸魔生物''。魔力を吸収し、コピーできる、といったところですかね。」
これこそがミストに隠されていた真の能力。
俺も''神の書物''で読むまで全く分からないし、気づかなかった。
「な、なんだと!?こんな…こんな事あるものか!!」
宙に飛び逃げようとするライザックだが、俺はこれを見逃してやるほど甘くはない。
すかさず左腕から天級の土魔術で壁を造り出し、右手で上級の雷魔術を当てて動きを封じ、下へと叩き落とす。
動揺している今がチャンス…!
「魔術、お借りします。」
先ほど溜めたライザックの魔力に天級の火魔術を乗せて放つ。
「や、やめろおおおおおおお!!!」
「''精霊の業火''!!」
ゴオオオオオ!!!
切り裂く刃が炎と共に奴を覆い尽くし、その身を灰にする。
「…素晴らしい魔術でした。」
俺も今や魔族の端くれ。
最低限の敬意を払わないとな。
「そ、そうか……」
炎の中から微かに声がした。
''凄惨''のライザック…。
あの魔術は本当にすごいものだった。
多分人間なら一発で致命傷となりうるものであろう…。
それに…丁寧に磨き上げられた魔力移動や設定の細かさなど、これはライザックが努力して得た力だというのがミストの体から伝わる。
「…マナ君!!」
ジャックとカーフェが近寄る。
「二人と………………」
「へえー。ミストか!おもしれえな!」
突然、空から謎の声が聞こえた。
感想やブクマなどぜひ!




