第三十四話 俺は人間をやめるぞ!アンドロメダ!
「ま…魔族にーーっ!?」
場面は少し遡って''神の書物''内にいた頃。
ケトスに千切られた腕を治すため、本を読み漁ってたどり着いた結果がこの今言った案だ。
アンドロメダはこの通り腰を抜かすほど驚いているが。
「う、うん。もしかして…マズイ?」
「あ、いやいやいや!マズイってことはけど…。エルフとかドワーフじゃダメなの?ほ、ほら寿命が長くなるし魔力が増えるよ?」
あからさまに''魔族''から話題が逸らされているきが…。
まあでもアンドロメダの気持ちも分かる。
「今は…強くなるためになりふり構ってられないんだ。本に魔族には一匹一匹''固有能力''ってのがあるって書いてあった。俺は魔法がなきゃただの生身のガキ。これから戦う奴らの攻撃をちょっと食らっただけでもゲームオーバーになる。だから…少しでも肉体のアドバンテージを得ないと…!」
「わかってる…わかってるよ…!君の判断はすごく合理的だよ…。その腕は肉体を新たに創りかえないと治らない。なら人間より強い体にした方が良いって考えるのが普通だよ…。でも…でもね?」
いつの間にかアンドロメダの目は涙でいっぱいになっていた。
「き…君にね?君に…人間を捨ててほしく…ないの…!」
「…!」
「わがまま言ってるのは知ってる…でも私たち家族のせいで君が人を捨てないといけないなんて…い、イヤだよ…!」
俺は、震えるアンドロメダを抱き寄せ力いっぱいに抱きしめる。
「…俺のことはきにしなくて大丈夫だぜ?それに君たち家族のせいだなんて思ってないよ。」
「…ほんと?」
「ああ。これは俺がこうしたくて自分で決めた事だ。だから心配すんな。」
「…本当に?」
「本当だ。」
「…本当の本当?」
「本当の本当。」
「本当の本当の本当?」
「…本当の本当の本当。」
「本当の本当の本当のほん………」
「本当だ!本当と書いてマジ!」
おいおい…流石に長すぎだろ。
するとアンドロメダが笑いを堪えている。
「ふっ…ふふっ…。あははは…!途中からちょっとふざけてた。」
「お前な…。」
俺より歳上なのは間違いないがたまに子供っぽいのか大人っぽいのか分かんないよなぁ…。
「でも…君の覚悟は伝わったよ。それにありがとう…。私たちの事を考えてくれて。」
「おう。実際なんにも悪くないだろ?それにもう俺、ほぼアンドロメダの一体化してんだから君の親も俺の親みたいなもんだし。義理の父親的な?あ、でもそれだと俺王子になっちゃうな…それはやめとくか。」
「え…?」
急にアンドロメダの顔が赤くなった。
「?」
「いけない私…こんな言葉にすらキュンとするなんて…。どんだけ慣れてないんだ…。しかもマナは男かすらも怪しいレベルにまできてるし…。」
「お、おい。心の声がダダ漏れだぞ。」
「だ、だって!私生きてる時間が短かったからそーゆーのに慣れてないもん!」
「ご、ごめん。」
聞こえてる内容には否定せんのかい。
「でもこれで分かってくれたろ?俺には心配ご無用だ。俺一人じゃない、君もいるからな!」
「…うん。そうだね!なら協力は惜しまないよ!…でなんの魔族になるの?」
この質問。これはもう決めていた。
「魔素体だ。」
「ミスト…。なるほどねえ。確かになかなか良い案じゃん。」
アンドロメダも乗ってくれた。
成功だ。
そう、ミストにはかなりのポテンシャルが秘められていた。
まず奴らの体は魔力でできているため実体がない。
だから物理攻撃、殴ったり蹴ったりは効かない。
しかし魔法であればどんなに弱いものでも当てれば体を形成する魔力の許容量を超えて形を保てなくなり弾け飛ぶ。
ここまでがミストについての基本、一般常識で。
だがここからが全く知られていない事実…。
「ミストの固有能力、''吸魔生物''は魔術を吸収して跳ね返せる。これで物理と魔法が俺には効かなくなるだろ?それに体が魔力で出来てるから魔術の射出過程を省くこともできる。」
「ふむ…。」
「それに俺たちはパンチしたりするわけじゃないからデメリットも多分なくないか?どうだ?」
アンドロメダは顎に手を当て集中して聞いていた。
その仕草かわいいな。
「確かに…それなら魔術の同時使用も出来そうだし…。」
「これをこうするってのはどうだ?」
「……!」
「…………!!」
俺たちは小一時間ぐらい戦術や能力について話し、盛り上がった。
これだよこれ…。
こうやって「ぼくのかんがえたさいきょう」を人と話すのが本ッ当に楽しいんだ…。
—————
「よし…!」
話し合いを終え、ついに実行する時が来たようだ。
「マナ。」
アンドロメダが口を開く。
「ん?」
なんだと思って顔を向けると微笑んでこちらを見ている彼女がいた。
「本当に…。ありがとう。マナは私。助けにきてくれた英雄だね。」
「そんな事ないよ。まだ助けれたわけじゃないし。」
…確かに考えてみれば俺が転生したのって本を拾ったからだったな…。
アンドロメダの気持ちが俺の世界にまで届いたのかもしれない。
「じゃあ始めるよ。」
「…気をつけてね。」
本を開きとあるページを開く。
それは『異種族間転生の禁術』。
今ある肉体を対価にして新たな肉体を構築する古の魔術。
人や、エルフ、ドワーフはもちろん魔族などありとあらゆる種族に転生が可能とされ、強力すぎるが故に禁術とされてきたのだ。
「ふー…よし。」
一度深呼吸をして落ち着かせ…はじめよう。
『まずは我が父、我が母よ。あなた達より授かりしこの体を捨てる事を懺悔する。思考する脳髄、拍動する心の臓、脈々と流れる血液。これらを捨て、魔の物になることを懺悔する。人間を捨てる事を懺悔する。そして新たな生を得る事に感謝する。』
まるで宗教のような詠唱を終えると地面に俺を囲うようにして魔法陣が現れる。
「今だよ!今、転生先の種族と個体名を言って!」
アンドロメダが叫ぶ。
『我、今ここに新たな種として蘇る!''魔族''!''魔素体''!!』
グワア!!
魔法陣から無数の黒い腕が現れ、闇の中へと俺を引き摺り込んだ。
「うわあああ!!」
手が俺の体を掻きむしり、心臓などを引きちぎり、奪い去る。
ブチブチブチ…!
その痛みに…気…絶し…た……。
—————
「…ナ!……マ……ナ…!」
声が聞こえる。
目を開けてみよう…。
''アンドロメダ…!''
「…?」
あれ…?声が出ない。
なんでだ?とりあえず立ち上がろ………
ふわっ
''!?''
なんか…浮かび上がってね?
「ほら見て。マナの体、ミストになってるよ。」
アンドロメダが出してくれた鏡を見る。
''な…!?これ、その辺にいるミストと同じじゃねえか!?''
俺の容姿は黒いモヤがかかった煙のような体に、申し訳なさ程度の黄色い糸目のまさしくミストそのもの。
「多分、初めてだから魔力操作ができてないんだよ。とりあえず人の形になれるようになってから修行再開だね。」
こうして俺のミスト生活は始まった。
—————
ダアアアン!!
四方八方から攻めてくる修行用の敵。逃げ場はない。
文字通り全視界に奴が写ってるからな。
しかし俺は避けない。
避ける必要がないからだ。
「''光弾''!!」
俺の体から一筋の光が放たれる。
それらは全て敵の頭へと命中。
修行用ダミーはシュウウと音を立てて消えた。
「うん!いいね!全身から魔法を出すのはバッチリ!これで360度死角無しじゃん!」
「いやあ…キツかった…。」
あれから血の滲むような修行をした俺は魔力を振動させて声を、形を維持して人の姿を手に入れた。
予想通りミストの体はすげえ。
体が魔力だから操作が手にとるようにやれるやれる。
「でもマナ。気をつけてよ。ケトスとアストラだけには…。」
アンドロメダが警告する。
この言葉もかなり聞き慣れてきた。
「大丈夫。分かってるよ。」
「ならよし。」
''ケトスは殺す''だができればアストラには会いたくねえなあ…。
—————
「ガハッ…!!??」
俺の胸を突き破る腕。
本来、魔力で出来たこの体がダメージを受けるはずない……。
これは''魔力ごと''壊された…!?
「確かにミストなら固有能力使えばダメージは受けないぜ?でもそれは''物理''か''魔力''の場合だ。だけど………」
目の前の青髪の男が俺から腕を抜き、ついた魔力の血を振り落とす。
そして腕に現れたのは……。
「水色の…オーラ…!?」
俺は…これを知ってる…これは…!
「気をつけろよ子供。お前の目の前にいるのはこの世界で最強の………。」
「…!?」
突然、目の前に現れた。
速すぎて追いつけなかった…!
「大魔王アストラ様だぜ!」
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