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進化と白紙の超能力者  作者: ARS
序列戦
23/24

吸血鬼の本気

間に合った!

もしも、圧倒的な力を持っていたなら俺はどうしていただろう?


隠す?


我儘に使う?



いや、俺はそのどちらも属さないと思う。

そう、敢えて言うなら…。



『笑え』



答え?

いや、答えだと言えないだろう。


しかし、これを見たらこれしか答えがない。

俺の全てを超えている。

そして、純粋にこの戦いを楽しみ笑う少女の姿。


目の前にあるのは絶望という名の少女の姿をした何か。

セニアは明らかに雰囲気が変わってからどれだけ動いてないのかもう分からない。


しかし、その一瞬も終わりが訪れる。


一瞬の出来事…刹那すら遅いと感じる一瞬…


セニアの持つ赤色の剣が俺を貫こうとする。

俺には赤色のそれが何か分からなかった。


太陽ではない。


なら、これは…


ごっそりと何かが削られる感覚が俺に走る。

首を刈り取られるような衝撃も同時に走り、意識が一瞬遠のく。


そう、俺は手も足も出ずに首に思いっきり赤色の剣を叩きつけられたのだ。



思考すら無駄に感じるほどの速さ。



認識する瞬間にはもう既に遅い。



次の瞬間にはセニアの姿が別の場所に現れる。

俺はギリギリでそれを防ぐ…が、純粋な力で押し負ける。


『擬似顕現・草薙の剣』は簡単に壊される。


そこでようやく理解も全てが追いつく。


なぜ、前回負けたのか…それらの理解が及ぶ。

それは遅いのか早いのか理解ができない。

しかし、その瞬間俺の思考は変わる。


一変したその思考には武器を使うという考えは既に無く、ただ、純粋に勝つことだけにこだわる。



俺は剣を壊されるとともに現在吹き飛んでいる。

それでいてセニアは既に先回りを始めている。

恐らく…次を防がなければ決定的な敗北をすることになるだろう。


この際、勝つか負けるかは俺の頭から抜ける。


その瞬間、俺は空気を蹴る。



圧倒的な身体能力で空気を蹴るのではない。

空気そのものを認識して蹴るのだ。


特異能力『空間把握』


これは俺が富士にいるときに目覚めた能力。

それにより、俺は体制を変えてセニアに反撃の一手を食らわせる。

勿論、それが効くとは思わない。


しかし、何故するかと言えば簡単だ。


少しでも反撃をできることを示すためだ。

ここからは一撃でも食らえばほぼ負け確定している状況である。

実際、先ほどの攻撃で障壁の八割は削れている。


俺が削ったのは精々一分行けばいい方である。


しかし、その答えは間違いだと俺はすぐに気づかされる。

再びセニアは消えて気がつけば俺の後ろに立っている。

一瞬で回り込まれた。

そう思う時には赤色の剣が再び俺を貫こうと振るわれる。

条件反射のように俺は能力を使う。

しかし、それすらも意味がない。


発動した力は『月詠』にある『反射』。


しかし、セニアの一撃を反射をすることができずに剣は迫り来る。

分かっていた筈だ。

セニアが何故簡単にも擬似顕現とは言え『草薙の剣』を壊すことができたのか…。


分かっていた筈だ。


その瞬間、僅かに自分の感覚が消える。

気がつけば俺は超能力ではなくいくつかの特異能力を使用していた。

気がつけば出ていた腕で赤色の剣の腹を殴る。


皮一枚…そのレベルで迫ってきていた剣を弾く。


そして、すぐに状況を判断したであろうセニアはすぐに次の攻撃体制に入る。

俺は更に深く懐に潜り込む。


簡単だ獣でもなんでも自分のリーチより深く入られれば碌な攻撃ができない。

たしかにセニアの炎はすぐ近くに放てるが恐らく前準備なく速攻で撃つのはできないだろう。



もしも、撃つなら…



その瞬間、視界が真っ赤に染まる。

まるで閃光のような真っ赤な炎が迫り来る。


その瞬間、自然と体が動く。


炎に手を伸ばす。

そして、案外すぐに手が何かに当たる。



特異能力『純発』



これは超能力で使われるエネルギー十六夜をそのまま、ぶつける能力。

簡単に見えて案外難しい離れ業。

しかし、セニアの炎の威力が弱かったおかげで簡単に成功できた。


そして、直感でこれが俺の能力だけ簡単に壊された理由であると理解した。


そう、超能力もエネルギーを使って発動している。

そして、工程によりエネルギーが変質させて使っているのだがそこに純粋なエネルギーをある程度の量をぶつけるとその分霧散するのだ。


もし、それに勢いがあれば同質の量でなくても恐らく少量で相手の能力くらい乱すことは簡単であろう。


しかし、そこにある疑問…いや、矛盾が生じる。


それは人間がエネルギーを放出する際に必ず工程を通ってしまう。

要するに特殊な工程…または特異能力でもない限り不可能なのである。



「要するにそういうことか…」



目の前にある答えは僅かに吹き飛んだセニアの姿だった。

俺の触れた辺りから僅かに能力が乱れており炎が無い。



「ちょっと舐めてたよ。

一瞬で決まると思ってた…でも、予想外だったよ」


「こっちもまさか超能力以外で来るとは思わなかったよ」



俺の言葉に僅かに動揺をセニアは見せる。

どうやら俺がこの力を知ってることに驚いているようだ。

まぁ、特異能力やら種族思想などたくさん持ってる相手にはそれを種族思想だと言えば結構通る節があるからな。



しかし、よく考えてみれば一向に事態は好転していない。

あくまで相手の能力を分かったにしか過ぎない。

ここからが一番の正念場である。


俺は即効に超能力の工程を組み上げる。


セニアはそれを見て赤い剣をすぐに二振り目を作り出して歩いて来る。

実際、俺はまだ相手の超能力を把握しきれていない。


だから、その赤い剣はなんなのか把握できていない。


故にこの警戒は無駄ではなかった。

その瞬間、俺の周りに鎖が現れる。

剣と同じ赤い鎖が俺を捕らえようと締まりにくる。


鎖を砕く。

草薙の剣を俺は顕現してセニアに突っ込む。



そして、交わる。

お互いの剣がぶつかり合い互いに『純発』を行う。

砕けることはない、放った『純発』同士で相殺されて競り合う。


純粋な剣技で決まる戦いではない、その瞬間、炎が辺りを包む。

そして、俺を包囲するように捕らえる。

セニアタイミング良く下がり俺を逃す暇を与えない。


それに対して俺は『反射』を行い対抗する。

炎を隠れ蓑として横から仕掛ける。


が、それでは勝てない。

勝てるわけがない。


数度の撃ち合いの後、また同じように炎が俺の周りを囲う。

しかし、次は動かない。


同じ手を何度も使うとは考えられなかったのだ。

何かが違う…。


そう思考して『奇稲田の原書』を使用する。

長きの使用によってようやく代償強化から劣化版にまで上り詰めたこの能力を全力で使う。



炎を吹き飛ばす。

そして、セニアに剣を振るおうと走り出す。


しかし、それはすぐに止めた。



僅かな違い、気が付かないくらいの冷気…。



その瞬間、あたりは氷に覆われる。


そう、これが俺にとっての疑問だった。

ようやく分かった。


セニアの能力が…。



「あれ?外したかな」



間の抜けたような声が聞こえる。

そこには炎と雷を纏ったセニアがいた。


ずっと疑問だった。


彼女の能力は炎が主だった。

太陽の顕現のような能力…しかし、それならば何かが足りていないのだ。

たしかに強力で対抗手段は限れる。

それでも彼女が最強と呼ばれる理由にはならない。


これでは弱過ぎる。



そして、今の現象を見て確信する。



「太陽…ではなく敢えていうなら【星の願書(オリジン)】」



その言葉を聞いたセニアは笑う。

見破られたことが嬉しいかと言うように…。



「正解。まぁ、正確に言ってしまえば今私たちの確認してる太陽系内のみでかつ、その一部の炎、雷、氷しか使えないのだけどね」



呆気なくも自分の能力について話すセニアには自信を感じさせる。

彼女に絶対的有利があるかのように…いや、あるのだろう。


何故?


その能力が強力だから?

いや、もう一つある筈だ。


これでもまだ、足りない。

圧倒的な経験をもねじ伏せる能力としてはまだ、弱過ぎる。



しかし、俺は思考時間に使う猶予がない。

セニアは容赦なく俺に向かってくる。


赤色の剣が俺を貫かんと攻撃してくる。


その斬撃は緩むことなく俺に襲いかかる。


なんとかして俺は防ぐが一瞬、違和感を感じる。

何か…何かが違うのだ。


自分の認識が少しずれている。


しかし、何が違うのかわからない。

わかりそうなことに見えて分からない。

そもそも、何故彼女の髪が変質した?


そうせざる得ない理由があった?


それなら何故?


撃ち合いは続くが少しずつ俺は押されていく。

冷気によって俺の体は思うように動かなくなって来ている。

時折くる、ビリッとした電撃に体が硬直する。


それでも止まらない…いや、止めないように自分で自分の体の意識をより明確にする。


その度に考えなくてはいけない『何か』を見落としてるようでならない。



そもそも、超能力とは?


そもそも、特異能力とは?


そもそも、種族思想とは?



考える…考え続ける。

勝つ方法を…俺のしなくてはならないことを…。


体が再び硬直する。

次の一閃は止められない。

目の前に迫り来るセニアの斬撃…俺は負けてもいい覚悟で後ろに飛んで難を逃れようとする。


しかし、その瞬間だった。


僅かに認識がズレる。

俺の認識していた位置よりも、ほんの少し前にセニアがいた。


逃げられない…。


だが、その瞬間に俺は気がつく…違和感の正体に…。


だからだろう、気がつけば砕けていた。



何が?



いや、セニアの赤色の剣が…だ。



「え?いや、気が付かれた」



セニアは一瞬、戸惑う。

しかし、すぐに気がつく。

俺が何をしたのか…故に先程作っていたもう一本の剣を振るう。

俺は先程とは違い難なく避けて…触れる。



その瞬間、またもやセニアの赤色の剣が砕ける。



理由は簡単。

先程と同じ『純発』である。


しかし、それは本来…超能力(・・・)の工程を乱すものである。


俺はずっと彼女の剣の正体には気付いていた。


答えは血だ。


そう、吸血鬼の使う血の能力。

しかし、だからこそ俺は根本的な部分には気が付かなかった。



彼女の血の剣や血によるブーストは種族思想によるものではないのだ。



彼女の種族思想は『吸血鬼らしい翼を出すこと』と『幻惑』を確認している。


それなら、『血』もまた吸血鬼特有のものだから種族思想である…そんな認識が間違いなのだ。


そもそもが種族思想というのは種族ごとにある十六夜の性質の差から使うことのできる、謂わば種族の持つ特有の十六夜が引き起こしていたことなのだ。


そして、それには工程を踏むことはなく『純発』と似たように思える。


しかし、だ。


特異能力は『工程のなり損ない』を使用している。

要するに『純発』とは、そのなり損ないという工程を通して純粋なものに加工して発する技である。


そして、最後に超能力は工程を通して発したものを指す。


その三つの違いが生まれる。

ならば、特定の種族の持つ工程が存在していてもおかしくない。



要するに彼女の『血』関係の能力とは『超能力』に当たるのだ。



ゆえに彼女の血の剣は砕けた。

簡単な話である。



おそらく、ミルの能力や富士で散々種族思想を見ていなかったらかのことには気付かないままだっただろう。


しかし、セニアは笑みを崩すことは無い。


まだ、俺を試していたみたいだ。


しかし、その瞬間その笑みは別のものであることに気がつく。

セニアが翼を出して飛ぶ。

それに意識を捕らわれた。


その瞬間、起きた。


俺の腕にとんでもない痛みと衝撃が走る。


おかしい?彼女はそんな能力…いや、違う。


雷と炎と氷で無理やり引き起こしたのだ。


簡単な衝撃波を…。


おそらく、簡単な水蒸気爆発…しかし、可能なのか…いや、可能なのだろう。

例え、原理的にほぼ無理でも1パーセントでも可能性があればできてしまうのが『原書(オリジン)』という能力なのだから。


思った以上に障壁は減らなかったが危険だ。


しかし、次の瞬間には俺の目の前に雷が落ちる。

おそらく、もう少し近付いていたら当たっていなくても感電はしていただろう。


俺が雷に目が向いたうちにセニアは氷のフィールドに変える。

辺りが氷が覆われ、氷柱、氷針などが作り上げられる。

歩こうとしても滑ってしまい上手く動けない。


そこを狙い撃ちするように落雷が来る。

俺はなんとか飛んで避けるが落雷は一度ならず二度三度と俺を貫かんと飛んでくる。


時には炎の壁が迫り来る。


『純発』で破壊するも続けて次の攻撃が来て間に合わない。


そんな中で血で出来た槍なども飛んでくる。


氷柱などを障害物としても槍などを防げるだけで炎と雷の格好の的になるだけだった。


故に逃げ回るしかないが…


認識がズレる。


時折、自分が見たものとはズレたものまでもが発生する。

おそらく『幻惑』だろう。


大きな攻撃は大げさに避けてなんとかしてるが細かい槍などはそれが致命的なものとなる。


少しずつ障壁が削られていく。


そんな、中で少しずつだが俺はセニアに近付く。

削り切られる前にこれを終わらせる。

そう考えて俺はゆっくりと進んでいき、あと少しという時に起きた。


槍などによって散らばった血が弾丸となって俺に向かってくる。


そして、それは俺を貫く…わけなかった。


正直予想していた。


予想していればあとは認識するだけだ。

いくら早くてもくると分かってるかつ認識ができれば避けることは容易い。


『特異能力』による動体視力の強化によって俺は認識をした。


そして、あと少しでセニアに届く…俺はなんとか走る。

もう、氷の上で走るのは慣れたものだ。


これで一矢…



その瞬間、巨大な爆発音が俺の耳を壊しにかかる。

いや、最早それを認識していたのかさえ怪しい。


何故なら、爆発は俺の目の前で起きて…そして、その衝撃は脳にまで響いたのだ。


俺の思考は停止する。



**



会場は今、一番の大盛り上がりを見せていた。

それは勝敗が決したからである。


最後の一撃…先程の小さな水蒸気爆発をより大きく強くしたものだった。


それにより、神刀の体は呆気なくも壁まで吹き飛ばされる。

それを起こした少女、セニアはそれを見て翼をしまい、地上に降りる。


氷のフィールドはそれとともに役目を終えたかのように砕け散り真ん中に悠然と佇むセニア。


最早、どちらが勝利者か明白。


しかし、まだ終わっていない。

やはり、あまり削れなかったようで神刀の障壁は砕けていない。


それでも、もう既に終わっている。


何故なら、最後の一撃は衝撃が神刀の脳にまで響き脳震盪を起こしてとても立てるは状態ではない。

例え、神刀が立てたとしても戦える状況ではない。



審判もそう判断し宣言を行おうとした。



しかし、セニアは知っている。

彼は前回、あの絶望的状況の中で立っていたことに…。



「待ってください!」



故に止めた。

神刀が立つことを理解して…。


審判は訝しげな目で見るがそれに従い神刀の様子を見る。


それを見た観客は少しずつ気付き盛り上がりを失くして神刀を見る。


そして、静寂が辺りを支配した時にそれが起きた。



一冊の本が出現したのだ。



それは、光り始め…やがて色を変えていく。



茶色い古びた本は時間を巻き戻すかのように少しだけ劣化が消えた黒い本に変わる。



その瞬間、誰もが目を疑った。

神刀が立ったことなんて最早どうでもいい。


そう、その姿に…

ここまで読んでいただきありがとうございます!

今からが神刀君の本領です!


では、次回予告でも…



次回『進化の原書(オリジン)』



次回もよろしくお願いします!

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