不正なんてしてない!・前編
不正なんてしてない!・前編
「今度こそ俺だ!」
「いや、俺だって!」
「白虎様より先に下界行くぞー!」
「お前ら、主を応援しろ!」
四枚のガチャコインを前に、今日も始まる前から大騒ぎだった。
玄武、朱雀、青龍、白虎。その周囲には各陣営の配下たちが集まり、誰が当たるかと好き勝手に声を上げている。
すっかりお馴染みとなったガチャ会だが、今回は白虎がいつも以上に落ち着かない。
「よし! 来たぞ!」
「何が?」
朱雀が聞くと、白虎は待ってましたとばかりに自分を指さした。
「俺の時代が!」
「…………」
「何だ、その顔」
「いや、何の話かなって」
「今回から俺も入ってるんだぞ!」
「ああ、それね」
「反応薄いな!」
「だって、入っただけでしょ?」
「その『入った』が重要なんだよ!」
白虎はガチャを指さした。
「今まで俺自身は当たりようがなかったんだぞ! でも今回は違う!」
「当たるとは限らないけどね」
「始まる前から縁起でもないこと言うな!」
すると、周囲の白虎配下からすぐに声が飛んだ。
「でも白虎様、俺たちも当たりたいです!」
「俺も!」
「私も!」
「お前らまで!」
「白虎様は今回からじゃないですか!」
「俺たちはずっと待ってます!」
「ぐっ……!」
白虎が言葉に詰まると、他の陣営から笑い声が上がった。
「人気ないね、白虎」
「違う! こいつらが自分に正直すぎるだけだ!」
「白虎様、ご安心ください!」
「おっ!」
別の配下が声を上げる。
「白虎様が当たったら、ちゃんと祝います!」
「おお!」
「でも、自分が当たった方が嬉しいです!」
「結局そっちか!」
また笑いが起きる。
今までなら、白虎本人と配下が同じ当選枠を取り合うことなどなかった。それが今回からは、主も配下も同じように結果を待つ立場になっている。
「いいか! 俺が当たっても恨むなよ!」
「白虎様こそ、俺たちが当たっても恨まないでくださいね!」
「恨むか!」
「本当ですか?」
「本当だ!」
「じゃあ遠慮なく!」
「最初から遠慮してないだろ!」
青龍がそんな白虎たちを横目で見る。
「配下の言い分ももっともだ」
「お前まで敵に回るな!」
「敵ではない。事実を言っただけだ」
「そういうところだぞ!」
白虎が騒げば騒ぐほど、周囲は面白がる。
まだ一枚も回していないというのに、すでに会場は十分すぎるほど温まっていた。
◇
「朱雀様!」
「天女!」
少し離れたところでは、こちらもいつもの二人がすでに盛り上がっている。
「今回、朱雀様が当たったら、一緒に下界へ行けますね!」
「そうなの!」
朱雀の顔がぱっと明るくなった。
「何しようか!」
「やっぱり食べ歩きですか?」
「いいね! あと、お店もいっぱい見たい!」
「私、案内します!」
「ほんと!?」
「はい!」
「じゃあ、まず――」
「朱雀様」
横から静かな声が割って入った。
「何?」
朱雀が振り向くと、そこにはいつものように執事が立っていた。
「まだ当選しておりません」
「分かってるよ!」
「すでに下界へ行く予定が完成しそうでしたので」
「予定くらい立ててもいいでしょ!」
「今回は本当に朱雀様も当たるかもしれないんですよね?」
天女も朱雀の隣から加勢する。
「そうなの!」
「でしたら、今のうちに予定を――」
「天女様までお話を進めないでください」
「えー」
「えー」
二人の声が綺麗に重なった。
執事は小さく息を吐く。
「まずは抽選をお待ちください」
「はーい」
「はーい」
返事だけは素直だった。
しかし、それで二人が静かになるはずもない。
「それで朱雀様、食べ歩きの次は――」
「そうだね。せっかくだから――」
「ですから、まだ早いと申し上げております」
「ちょっとくらいいいじゃん!」
「まだ一枚も回しておりません」
「でも想像するだけならタダだよ!」
「左様でございますか」
「何、その諦めたみたいな言い方!」
天女がくすくす笑い、朱雀もつられて笑う。
執事だけは、いつものように落ち着いていた。
本人が本当に抽選対象となったせいで、今回はいつもの下界談義にも余計に熱が入っているようだった。
◇
「……まあ、その前に一つ確認したいけどな」
白虎が口を挟んだ。
「何?」
朱雀が振り向く。
「今回は、本当に公平なんだろうな?」
「…………」
朱雀の眉がぴくりと動いた。
「またその話?」
「だって今まで、お前のところ出すぎだっただろ」
「だから不正なんてしてないってば!」
途端に、周囲から「ああ、また始まった」と笑い混じりの声が上がった。
この話題も、すでにガチャ会ではお馴染みになりつつある。
「実際、朱雀陣営ばっかり続いたことあったじゃないか」
「たまたまだよ!」
「本当に?」
「本当!」
「黄龍様と裏で何か――」
「やってない!」
「まだ最後まで言ってないぞ!」
「最後まで聞かなくても分かる!」
朱雀が白虎を指さした。
「前にも言ったよね! 黄龍様と何かあるんじゃないかって!」
「言ったっけ?」
「言った!」
「覚えてないなあ」
「都合よく忘れないで!」
天女も朱雀の横から白虎を見る。
「朱雀様はそんなことしません!」
「ほら!」
「天女は完全に朱雀側じゃないか!」
「当たり前です!」
「そこは否定しないんだな!」
執事が静かに口を挟む。
「そもそも朱雀様に、抽選結果を操作する権限はございません」
「そうだよ!」
朱雀は胸を張ったものの、すぐに執事を見る。
「……それ、私をかばってる?」
「事実を申し上げております」
「何か微妙!」
周囲から笑い声が上がる。
「でも、確かに朱雀様のところ多かったよな」
「俺も一回くらい疑った」
「私も」
「ちょっと!」
朱雀がギャラリーを見る。
「そっちまで!?」
「だって、あれだけ続くと……」
「くじ運!」
「本当に?」
「本当!」
朱雀が必死になる横で、白虎が青龍を見る。
「青龍。俺、前に黄龍様とのことまで言ったか?」
「言っていたな」
即答だった。
「何で覚えてるんだよ!」
「聞いていたからだ」
「ほら!」
朱雀がさらに勢いづく。
「証人いるじゃん!」
「証人って何だよ!」
「白虎が言った証人!」
「俺を裁判にかける気か!」
「かけたいくらいだよ!」
「お主ら」
玄武がとうとう口を挟んだ。
「ガチャを回しに来たのではなかったのか?」
「あ」
朱雀がガチャを見る。
「そうだった」
「忘れるなよ」
白虎が言う。
「白虎のせいでしょ!」
「俺!?」
「お主が話を蒸し返したのじゃろう」
「玄武まで!」
「よいから始めるぞ」
玄武に促され、ようやく全員の意識が四枚のコインへ戻った。
◇
一枚目を回すのは白虎。
白虎がコインを手にすると、会場から一斉に声が飛んだ。
「白虎陣営来い!」
「俺だー!」
「私!」
「白虎様じゃなくて俺!」
「お前ら!」
白虎が振り返る。
「主を応援しろ!」
「白虎様は今回からです!」
「俺たちはずっと待ってます!」
「それはさっき聞いた!」
「でも大事なことです!」
「俺にとっても今回が大事なんだよ!」
白虎は気を取り直し、ガチャの前へ立った。
「よし……」
「何でそんなに緊張してるの?」
朱雀が聞く。
「決まってるだろ。俺が出るかもしれないんだぞ」
「自分で回して自分を当てるつもり?」
「最高じゃないか!」
「そうかなあ」
「そうだよ!」
青龍が横から淡々と言う。
「誰が回しても結果に影響はないだろう」
「今そういう話するな!」
「では何の話だ」
「夢の話だ!」
「意味が分からん」
「青龍には夢がない!」
「ガチャに何を求めているんだ」
「もういい!」
白虎はコインを入れた。
「とにかく――来い!」
勢いよく回す。
それまで騒いでいた会場が、一瞬だけ静かになった。
誰もが結果を待つ。
そして示されたのは――青龍陣営。
「……青龍?」
白虎が固まった。
次の瞬間。
「俺だ!」
ギャラリーの一角から声が上がる。
青龍の配下の一人が、自分を指さしていた。
「俺が当たった!」
その一声で、青龍陣営が一気に沸いた。
「おお!」
「やったな!」
「おめでとう!」
「先越された!」
仲間たちが当選者を取り囲み、次々に肩を叩く。
当選した配下自身も、最初は信じられないような顔をしていたが、すぐに満面の笑みを浮かべた。
「やった! これで下界に行ける!」
「帰ってきたら話聞かせろよ!」
「人間に見えるってどんな感じか教えてくれ!」
「何するかもう決めてるのか?」
「それはこれから!」
「いいなあ!」
「次は俺だからな!」
「いや、俺だ!」
当選した一人を中心に、青龍陣営の騒ぎはしばらく収まりそうにない。
青龍も配下を見る。
「よかったな」
「ありがとうございます、青龍様!」
「待った甲斐があったな」
「はい!」
普段とほとんど変わらない表情ではあるものの、その声はどこか柔らかい。
朱雀がそれを見逃すはずもなかった。
「あ、青龍嬉しそう」
「自分の配下が当選したのだ。当然だ」
「さっき自分が当たる話では『別に』って言ってたのに」
「それとこれとは別だ」
「ほんとかなあ」
「本当だ」
「じゃあ青龍本人が当たっても、そんな感じ?」
「知らん」
「絶対ちょっと嬉しいでしょ」
「知らんと言っている」
天女まで楽しそうに加わる。
「私も嬉しいと思います!」
「なぜお前まで入ってくる」
「だって、当たったら嬉しいですよ!」
「そうそう!」
朱雀と天女が揃ってうなずく。
青龍は二人を見て、それ以上相手をするのを諦めた。
◇
一方。
白虎はまだガチャの前に立っていた。
当選した青龍配下が、仲間たちの輪から少しだけ白虎を見る。
「あの……白虎様」
「何だ」
「私が当たってしまいましたが……」
「お前は悪くない!」
白虎が即答した。
「本当ですか?」
「もちろんだ!」
「よかった……」
青龍配下がほっとしたのも束の間。
「でも何で俺が回して青龍なんだ!」
「私に言われましても!」
「白虎」
青龍が呆れたように言う。
「当選した者を困らせるな」
「困らせてない!」
「困っています」
「正直だな!」
また会場から笑いが起きる。
すると今度は白虎陣営から、
「白虎様ー!」
「次はこっちお願いします!」
「今度こそ俺たちを!」
と声が飛んできた。
「次は俺が回さないんだよ!」
「えーっ!」
「俺に言うな!」
「じゃあ朱雀様に頼みます!」
「何で私!?」
朱雀まで巻き込まれ、また笑いが広がった。
まだ一枚しか回していない。
それなのに、いつものガチャ会はすでに十分すぎるほど騒がしい。
最初の一枚で権利を勝ち取ったのは、青龍陣営。
当選した配下は、今も仲間たちから祝福されている。
そして。
残るガチャコインは、あと三枚。
「次、私!」
朱雀が二枚目のコインへ手を伸ばした。
その隣で、天女がすぐに声を上げる。
「朱雀様、今度こそ!」
「任せて!」
「だから何を任せるのでしょう」
執事の冷静な声が飛んできた。
まだまだ。
ガチャ会は始まったばかりだった。
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。
ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




