閑話二 俺は着ないけど
閑話二 俺は着ないけど
公園を出てから、男の子たちはしばらく黙って歩いていた。
さっきまで聞こえていた則人とさとるくんの声も、もうずいぶん遠くなっている。
一人が、ふと口を開いた。
「……やっぱ変なやつだったな」
「誰?」
「さっきのやつ」
「ああ」
別の男の子が振り返る。公園はまだ少しだけ見えていた。
「今日も着てたしな。あの着ぐるみ」
「暑いって言ってたのに」
「なのに着るんだもんな」
「変だよな」
「うん」
二人は顔を見合わせる。
「まあ、あそこまで好きなら、もういいんじゃね?」
「そうだな」
「俺は着ないけど」
「俺も」
「絶対着ない」
「俺も絶対嫌」
二人は笑った。
◇
しばらく歩いてから、一人がぽつりと言った。
「でもさ」
「なに?」
「昨日は、ちょっと笑いすぎたかもな」
「今さら?」
「だって、あいつ本当に好きなんだろ」
「まあ……」
「あそこまではっきり言うと思わなかった」
『ぼく、これ好きなんだ』
さっき聞いた言葉が、なんとなく頭に残っていた。
「普通、あんなにはっきり言う?」
「言わないんじゃね?」
「俺だったら無理」
「俺も」
「しかも、あんな着ぐるみ着て」
「それは関係ないだろ」
「いや、あるだろ」
また二人で笑う。
けれど、昨日とは少し違っていた。
「あいつ、笑われても着るんだな」
「好きなんだろ」
「そこまで好きなもの笑われたら、まあ……嫌か」
「そりゃ嫌じゃね?」
「だよな」
それ以上は言わなかった。
別に、則人の気持ちが全部分かったわけではない。自分たちなら、あの着ぐるみは着ないし、着たいとも思わない。
それでも、則人が本当に好きで着ていることだけは分かった。
◇
道を曲がったところで、一人が足を止めた。
「あ」
「なに?」
その先に、『ビーストギア KID』のポスターがあった。
大きく描かれたキッドを見て、男の子が言う。
「やっぱキッドはかっこいいよな」
「それは分かる」
「俺、キッド好きだし」
「俺も好き」
二人でしばらくポスターを眺める。
やがて、一人がニヤッと笑った。
「じゃあ、お前もあの着ぐるみ着る?」
「着ない」
即答だった。
「早っ。お前は?」
「着ない」
「ほら」
「見るのと着るのは別だろ」
「だよな」
二人ともキッドは好きだった。
でも、だからといって則人と同じことをしたいわけではない。
「やっぱ、あいつ変じゃね?」
「まあ、ちょっと変」
「だよな」
少し間が空いた。
「でも、変でも別によくね?」
「……まあな」
「本人がいいって言ってんだし」
「俺は着ないけど」
「それはもう分かった」
また二人で笑った。
◇
「そういや、もう一人のやつ」
「さとる?」
「そう。昨日すげえ怒ってたよな」
「怒ってた」
「俺らが何言っても、途中でずっと喋ってたし」
「今日は黙ってたけどな」
「な」
昨日と今日。同じ相手なのに、少し違っていた。
「今日、ちゃんと謝ってたし」
「意外だった」
「俺らの話も最後まで聞いてた」
「まあ、あいつもあいつで何かあったんじゃね?」
「何が?」
「知らない」
「知らないのかよ」
「俺に聞くなよ」
一人が笑いながら、何かを思い出したように口を開く。
「でも俺、あいつが――」
「ああ、それ俺も――」
言葉を被せかけた男の子が、ふと止まった。
「……なに?」
「いや」
「言えよ」
「お前が先に言おうとしてたから」
「……なんだよ、急に」
「別に」
「変なの」
「うるさい」
先に話し始めた男の子が続きを話す。
もう一人は、それを最後まで聞いていた。
◇
そんな話も長くは続かなかった。
少し歩けば、もう別の話になる。
「そういえば昨日のキッド見た?」
「見た!」
「あれ、かっこよかったよな!」
「分かる! 俺、あそこ好き!」
「俺はその前の方が好き」
「えー、絶対あっちだろ」
「いや、こっちだって!」
「じゃあ、どっちがかっこいいか決めようぜ」
「いいよ!」
さっきまで則人たちの話をしていたことなど忘れたように、二人は『ビーストギア KID』の話で盛り上がる。
好きな場面も、好きなところも違う。
それでも、一緒に話すのは楽しかった。
◇
しばらくして、一人がもう見えなくなった公園の方を振り返った。
「明日も、あいつ着てるかな」
「誰?」
「あの着ぐるみのやつ」
「ああ」
考えるまでもなかった。
「着てるだろ」
「やっぱり?」
「絶対着てる」
「今日、暑いって言ってたぞ」
「それでも着るだろ」
「なんで?」
男の子は少しだけ考えた。
「好きなんだろ」
「……まあな」
二人は再び歩き出す。
少しして。
「でも俺は着ないけど」
「俺も」
二人の笑い声が、帰り道に響いた。
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
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ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




