↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
着ぐるみモンスター  作者: 内田紀人
セミスピーカー編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/30

第8話「四つのコイン」

第8話「四つのコイン」


内田紀人 作


「……あれ、なんだ?」


 則人は、頭の上に集まっていくものを見上げていた。


 さっきまで。


 さとるの身体から、少しずつ抜けていた。


 光とも。


 影ともつかないもの。


 それが今。


 ゆらゆらと揺れながら。


 一つの塊になろうとしている。


「…………」


 則人には。


 それが何なのか分からなかった。


 ただ。


 さとるをセミスピーカにしていたものと。


 何か関係がある。


 それだけは。


 なんとなく分かった。


「あ!」


 則人は。


 自分がまだピコピコハンマーを持っていることに気づいた。


「これ、返さなきゃ!」


 電柱の上にいる天狗へ向かって。


 両手でハンマーを差し出す。


「天狗さん! これ!」


 天狗は鼻を鳴らした。


「投げろ」


「えっ、投げていいの!?」


「わしが投げたのだから、よかろう」


「そっか!」


 則人は、すぐ納得した。


 両手でハンマーを持つ。


「いくよー!」


「早くせい」


「えいっ!」


 ぽーん。


 天狗が片手で受け取った。


「おおー!」


 則人は少し嬉しそうに笑う。


 ちゃんと返せた。


 これで一件落着。


 ――のはずだった。


「あれ?」


 則人は、さとるを見る。


 もう。


 セミスピーカではない。


 いつもの小学生の姿だ。


「さとる君」


「なに?」


「着ぐるみは?」


「…………え?」


 さとるが自分の身体を見る。


 則人も辺りを見回す。


「どこいったの?」


「知らない」


「さっきまで着てたよね?」


「着てたよ」


「大きいやつ」


「すっごく大きいやつ」


「じゃあ、なんでないの?」


「ぼくに聞かれても……」


 二人で地面を見る。


 道路の端。


 電柱の下。


 少し離れた場所。


 どこにもない。


「消えた?」


「そんなことある?」


「妖怪いるんだから、あるんじゃない?」


「そういうものなの?」


「分かんない!」


「分かんないのに言ったの!?」


「だって妖怪だよ!?」


「それで全部説明できるの!?」


「できそうじゃん!」


「できないよ!」


 そんな二人の頭上で。


 すうっ――。


「あ!」


 則人が指をさした。


 さっきまで集まっていた塊が。


 ゆっくりと。


 空へ昇り始めていた。


「動いた!」


 則人が妖怪を見る。


「ねえ! あれ、どこ行くの?」


 妖怪は。


 空を見上げたまま答えた。


「行くべきところへ行く」


「どこ?」


「今のお前には、まだ分からん」


「またそれ!?」


 則人が頬をふくらませる。


 だが。


 塊は待ってくれない。


 ふわり。


 さらに高く。


 空へ。


「わあ……」


 則人も。


 さとるも。


 見上げる。


 やがて。


 塊は。


 空の中へ溶けるように。


 見えなくなった。


「消えちゃった……」


 則人は、しばらく空を見ていた。


 何が起きたのか。


 分からないことばかりだった。


 ピコピコハンマー。


 妖怪。


 天狗。


 さとるの身体から出てきた。


 不思議なもの。


 そして。


「着ぐるみもなくなっちゃったし……」


「ほんと、なんだったんだろ」


 さとるも首をかしげた。


「…………」


 少しだけ。


 沈黙が続いた。


 やがて。


 さとるが口を開く。


「……あのさ」


「ん?」


「さっき……話、聞いてくれてありがとう」


 則人は。


 ちょっとだけ驚いた。


 それから。


「うん」


 と、笑った。


「また話したくなったら」


「うん」


「普通の声でね」


「分かってるよ!」


 さとるがむっとする。


 でも。


 その声は普通だった。


 町中に響くこともない。


 目の前の則人に。


 ちゃんと届く。


 それがおかしくて。


 則人は少し笑った。


「なに笑ってるの!」


「だって、ちゃんと普通の声だなって」


「当たり前だよ!」


「さっきまですごかったじゃん!」


「もう言わないでよ!」


「だって窓まで――」


「言わないでって!」


 さとるが顔を赤くする。


 則人は笑った。


 けれど。


 さとるは周りを見て。


 少しだけ表情を変えた。


 まだ。


 遠くからこちらを見ている人たちがいる。


 泣いていた子もいる。


「…………」


 さとるは。


 少しだけうつむいた。


「……ぼく、行くね」


「うん」


 二人は。


 それ以上。


 何も言わなかった。


 親友になったわけじゃない。


 明日から一緒に遊ぶ約束をしたわけでもない。


 ただ。


 隣のクラスにいる。


 ちょっと目立つ子。


 則人にとって。


 さとるはまだ。


 そんな存在だった。


 それでも。


 昨日までとは。


 ほんの少しだけ。


 違っていた。


     ◇


 その頃。


 人の世界から離れた場所。


 黄龍のもとへ。


 さとるから抜け出したものが。


 届いていた。


「…………」


 黄龍は。


 人の世界へ手を伸ばさない。


 ただ。


 運ばれてきたものを。


 静かに見つめる。


 光とも。


 影ともつかなかった塊が。


 ふるり。


 と震えた。


 そして。


 一つだったものが。


 四つに分かれる。


「…………」


 それぞれが。


 少しずつ形を変えていく。


 やがて。


 そこに現れたのは。


 四枚のコインだった。


 一枚。


 二枚。


 三枚。


 四枚。


 四枚のコインは。


 それぞれ別の方向へ飛んでいく。


 一枚は。


 青龍のもとへ。


 一枚は。


 朱雀のもとへ。


 一枚は。


 白虎のもとへ。


 そして。


 最後の一枚は。


 玄武のもとへ。


     ◇


 四聖獣の前には。


 それぞれ一台ずつ。


 不思議なガチャが置かれていた。


 青龍が。


 コインを入れる。


 ガチャッ。


 ぐるり。


 コロン。


 朱雀も。


 ガチャッ。


 ぐるり。


 コロン。


 白虎も。


 ガチャッ。


 ぐるり。


 コロン。


 玄武も。


 ガチャッ。


 ぐるり。


 コロン。


 四つの結果が。


 そろった。


「…………」


 しばらく。


 何も起きない。


 だが。


 そのうちの一つだけが。


 ぼんやりと。


 光り始めた。


     ◇


「…………ん?」


 則人は振り返った。


 何か。


 おかしい。


「…………」


 さっきから。


 誰かに見られているような気がする。


 でも。


 そこには誰もいない。


「……気のせい?」


 則人が前を向く。


 その時。


 視界の端で。


 何かが動いた。


「…………?」


 もう一度。


 振り返る。


 今度は。


 何もいなかったはずの場所の空気が。


 ゆらり。


 と揺れている。


「な、なんだ?」


 則人は。


 目をこする。


「…………」


 もう一度見る。


 薄い。


 本当に薄い。


 そこに。


 何かがいるような。


 いないような。


 ぼんやりした輪郭。


「妖怪……?」


 則人が目を凝らす。


 すると。


 輪郭が。


 少しずつ。


 濃くなっていった。


 下の方から。


 身体。


 そして。


 顔。


 さっきまで。


 気配と。


 ぼんやりした形でしか分からなかったものが。


 まるで。


 霧が晴れていくように。


 はっきりしていく。


「…………!」


 則人は。


 目を大きく開いた。


 そして。


 ついに。


 そこにいる妖怪の姿が。


 完全に見えた。


「…………」


 則人は。


 口を開けたまま。


 固まった。


 次の瞬間。


「ええええええっ!?」


 町に。


 則人の声が響いた。


 ――つづく

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。