第8話「四つのコイン」
第8話「四つのコイン」
内田紀人 作
「……あれ、なんだ?」
則人は、頭の上に集まっていくものを見上げていた。
さっきまで。
さとるの身体から、少しずつ抜けていた。
光とも。
影ともつかないもの。
それが今。
ゆらゆらと揺れながら。
一つの塊になろうとしている。
「…………」
則人には。
それが何なのか分からなかった。
ただ。
さとるをセミスピーカにしていたものと。
何か関係がある。
それだけは。
なんとなく分かった。
「あ!」
則人は。
自分がまだピコピコハンマーを持っていることに気づいた。
「これ、返さなきゃ!」
電柱の上にいる天狗へ向かって。
両手でハンマーを差し出す。
「天狗さん! これ!」
天狗は鼻を鳴らした。
「投げろ」
「えっ、投げていいの!?」
「わしが投げたのだから、よかろう」
「そっか!」
則人は、すぐ納得した。
両手でハンマーを持つ。
「いくよー!」
「早くせい」
「えいっ!」
ぽーん。
天狗が片手で受け取った。
「おおー!」
則人は少し嬉しそうに笑う。
ちゃんと返せた。
これで一件落着。
――のはずだった。
「あれ?」
則人は、さとるを見る。
もう。
セミスピーカではない。
いつもの小学生の姿だ。
「さとる君」
「なに?」
「着ぐるみは?」
「…………え?」
さとるが自分の身体を見る。
則人も辺りを見回す。
「どこいったの?」
「知らない」
「さっきまで着てたよね?」
「着てたよ」
「大きいやつ」
「すっごく大きいやつ」
「じゃあ、なんでないの?」
「ぼくに聞かれても……」
二人で地面を見る。
道路の端。
電柱の下。
少し離れた場所。
どこにもない。
「消えた?」
「そんなことある?」
「妖怪いるんだから、あるんじゃない?」
「そういうものなの?」
「分かんない!」
「分かんないのに言ったの!?」
「だって妖怪だよ!?」
「それで全部説明できるの!?」
「できそうじゃん!」
「できないよ!」
そんな二人の頭上で。
すうっ――。
「あ!」
則人が指をさした。
さっきまで集まっていた塊が。
ゆっくりと。
空へ昇り始めていた。
「動いた!」
則人が妖怪を見る。
「ねえ! あれ、どこ行くの?」
妖怪は。
空を見上げたまま答えた。
「行くべきところへ行く」
「どこ?」
「今のお前には、まだ分からん」
「またそれ!?」
則人が頬をふくらませる。
だが。
塊は待ってくれない。
ふわり。
さらに高く。
空へ。
「わあ……」
則人も。
さとるも。
見上げる。
やがて。
塊は。
空の中へ溶けるように。
見えなくなった。
「消えちゃった……」
則人は、しばらく空を見ていた。
何が起きたのか。
分からないことばかりだった。
ピコピコハンマー。
妖怪。
天狗。
さとるの身体から出てきた。
不思議なもの。
そして。
「着ぐるみもなくなっちゃったし……」
「ほんと、なんだったんだろ」
さとるも首をかしげた。
「…………」
少しだけ。
沈黙が続いた。
やがて。
さとるが口を開く。
「……あのさ」
「ん?」
「さっき……話、聞いてくれてありがとう」
則人は。
ちょっとだけ驚いた。
それから。
「うん」
と、笑った。
「また話したくなったら」
「うん」
「普通の声でね」
「分かってるよ!」
さとるがむっとする。
でも。
その声は普通だった。
町中に響くこともない。
目の前の則人に。
ちゃんと届く。
それがおかしくて。
則人は少し笑った。
「なに笑ってるの!」
「だって、ちゃんと普通の声だなって」
「当たり前だよ!」
「さっきまですごかったじゃん!」
「もう言わないでよ!」
「だって窓まで――」
「言わないでって!」
さとるが顔を赤くする。
則人は笑った。
けれど。
さとるは周りを見て。
少しだけ表情を変えた。
まだ。
遠くからこちらを見ている人たちがいる。
泣いていた子もいる。
「…………」
さとるは。
少しだけうつむいた。
「……ぼく、行くね」
「うん」
二人は。
それ以上。
何も言わなかった。
親友になったわけじゃない。
明日から一緒に遊ぶ約束をしたわけでもない。
ただ。
隣のクラスにいる。
ちょっと目立つ子。
則人にとって。
さとるはまだ。
そんな存在だった。
それでも。
昨日までとは。
ほんの少しだけ。
違っていた。
◇
その頃。
人の世界から離れた場所。
黄龍のもとへ。
さとるから抜け出したものが。
届いていた。
「…………」
黄龍は。
人の世界へ手を伸ばさない。
ただ。
運ばれてきたものを。
静かに見つめる。
光とも。
影ともつかなかった塊が。
ふるり。
と震えた。
そして。
一つだったものが。
四つに分かれる。
「…………」
それぞれが。
少しずつ形を変えていく。
やがて。
そこに現れたのは。
四枚のコインだった。
一枚。
二枚。
三枚。
四枚。
四枚のコインは。
それぞれ別の方向へ飛んでいく。
一枚は。
青龍のもとへ。
一枚は。
朱雀のもとへ。
一枚は。
白虎のもとへ。
そして。
最後の一枚は。
玄武のもとへ。
◇
四聖獣の前には。
それぞれ一台ずつ。
不思議なガチャが置かれていた。
青龍が。
コインを入れる。
ガチャッ。
ぐるり。
コロン。
朱雀も。
ガチャッ。
ぐるり。
コロン。
白虎も。
ガチャッ。
ぐるり。
コロン。
玄武も。
ガチャッ。
ぐるり。
コロン。
四つの結果が。
そろった。
「…………」
しばらく。
何も起きない。
だが。
そのうちの一つだけが。
ぼんやりと。
光り始めた。
◇
「…………ん?」
則人は振り返った。
何か。
おかしい。
「…………」
さっきから。
誰かに見られているような気がする。
でも。
そこには誰もいない。
「……気のせい?」
則人が前を向く。
その時。
視界の端で。
何かが動いた。
「…………?」
もう一度。
振り返る。
今度は。
何もいなかったはずの場所の空気が。
ゆらり。
と揺れている。
「な、なんだ?」
則人は。
目をこする。
「…………」
もう一度見る。
薄い。
本当に薄い。
そこに。
何かがいるような。
いないような。
ぼんやりした輪郭。
「妖怪……?」
則人が目を凝らす。
すると。
輪郭が。
少しずつ。
濃くなっていった。
下の方から。
身体。
そして。
顔。
さっきまで。
気配と。
ぼんやりした形でしか分からなかったものが。
まるで。
霧が晴れていくように。
はっきりしていく。
「…………!」
則人は。
目を大きく開いた。
そして。
ついに。
そこにいる妖怪の姿が。
完全に見えた。
「…………」
則人は。
口を開けたまま。
固まった。
次の瞬間。
「ええええええっ!?」
町に。
則人の声が響いた。
――つづく
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
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【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




