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着ぐるみモンスター  作者: 内田紀人
セミスピーカ復活編

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第6話 聞けたから

 第6話 聞けたから


しばらくの間、セミスピーカーの大きなスピーカーから何の音も聞こえなかった。


さとるくんは則人の話が終わってからも、すぐに何かを言い返そうとはせず、少し考えるように俯いている。


「……うん」


もう一度、小さく答えた。


「静かになったね」


美緒が声を落とすと、さっちゃんも小さく頷いた。


「うん」


則人はセミスピーカー姿のさとるくんを見上げる。


さとるくんは自分の身体に目を落とした。大きな着ぐるみは、まだそのままだ。


「……あれ?」


「どうしたの?」


「俺、まだセミスピーカーなんだけど」


「ほんとだ」


「俺、ちゃんと話聞いたよな?」


「うん。聞いてたよ!」


「じゃあ、なんで戻らないんだ?」


「えっと……」


則人は考え込んだ。


一秒。


二秒。


そして。


「あっ!」


「何だよ?」


「ピコピコハンマー!」


さとるくんも、一瞬遅れて気づく。


「ああ! そうじゃん! 前もそれで戻ったんだ!」


「そうだった!」


その時、ぬらりひょんが呆れたように口を開いた。


「……ようやく思い出したか」


則人が振り返る。


「忘れてた!」


「何度やっておるんじゃ」


「だって、さとるくんがお話聞いてくれたから、もう戻るのかなって……」


「そう都合よくはいかん」


「そっかあ」


納得した則人は、すぐに期待した顔でぬらりひょんを見る。


「じゃあ、ピコピコハンマー!」


しかし、ぬらりひょんは首を振った。


「まだじゃ」


「え? まだダメなの?」


「話を聞けた。それはよい。じゃが、それだけで終わりにしてよいか、もう少し見ておきたい」


ぬらりひょんはセミスピーカー姿のさとるくんを見る。


さとるくんには、その姿も声も分からない。ただ、そこに何かがいることだけは感じているようだった。


「もう少し?」


「則人。お前から聞いてみい」


「何を?」


「昨日のことを、今どう思っておるのかじゃ」


「うん!」


則人はさとるくんへ向き直った。


「さとるくん」


「なに?」


「昨日のこと、今はどう思ってる?」


「昨日のこと?」


さとるくんは口を開きかけたが、すぐには答えなかった。


少し考えてから、ゆっくりと口を開く。


「……最初に笑われたのは、やっぱり嫌だった」


則人が頷く。


「うん。ぼくも嫌だった」


「だから、ノリちゃんを助けたかったのは……俺、間違ってないと思う」


「うん。ぼく、嬉しかったよ」


則人がすぐに答えると、さとるくんは少し安心したような顔をした。


けれど、そのまま終わらなかった。


「でも……俺、あいつらが何言ってたのか、全然聞いてなかった。俺が言いたいことばっかり言ってた。途中で何回も喋ってたし」


誰も口を挟まない。


さとるくんは少し気まずそうに頭を掻いた。


「……あれじゃ、向こうもムカつくよな」


則人は少し考えてから言った。


「でも、向こうもぼくのこと笑ったよ」


「そうなんだよ。だからさ、そこはやっぱり嫌なんだよ」


「うん」


「でも……それと話を聞くのは別なんだよな?」


則人は一瞬だけ驚いたあと、笑った。


「うん!」


ぬらりひょんは何も言わず、二人を見ていた。


◇


「ねえ、さとるくん」


「ん?」


「ぼくもね、今度は自分で言ってみる」


「何を?」


「昨日みたいなことがあった時。『ぼくはこれが好きだから着てるよ』って」


さとるくんが則人を見る。


「でもノリちゃん、昨日何も言えなかったじゃん」


「うん」


「大丈夫なの?」


「分かんない」


「分かんないのかよ」


「でも、言ってみる!」


則人が胸を張ると、さとるくんはしばらくその顔を見てから少し笑った。


「じゃあ俺は?」


「そばにいてよ」


「それだけ?」


「うん。ぼくが困ったら助けて」


「おう」


「でも、ぼくが自分で言えそうだったら、ちょっと待ってて」


さとるくんが難しい顔をする。


「それ、難しくない?」


「ぼくも難しいと思う」


「なんだよ、それ」


二人で少し笑う。


「でも、それでいいんじゃない?」


美緒の言葉に、二人が振り返った。


「味方になるのと、全部代わりに喋るのって、ちょっと違うもんね」


さっちゃんも頷く。


「本人が言えるなら、まず本人に言わせてあげるのも助け方だと思うよ」


「……そっか」


さとるくんはもう一度、則人を見る。


「じゃあ、今度はちょっと待つ」


「うん!」


「ちょっとだけな」


「ちゃんと待ってよ!」


「分かったって!」


言い合う二人を見て、美緒が笑った。


◇


ぬらりひょんは、しばらく二人の様子を見ていた。


そして。


「……もうよかろう」


則人が振り返る。


「今度こそ?」


「今度こそじゃ」


則人の顔がぱっと明るくなった。


「やった!」


さとるくんには、ぬらりひょんの声は聞こえていない。それでも則人の反応を見て察したらしい。


「……いいって?」


「うん!」


「そっか」


少しして、上の方から何かが落ちてきた。


「わっ!」


則人は慌てて両手を伸ばす。


ぽすっ。


腕の中に収まったものを見て、声を上げた。


「ピコピコハンマー!」


さとるくんも、それを見た瞬間に意味を理解する。


「……またそれか」


「うん!」


「やっぱり最後はそれなんだな」


「これがあれば戻れるよ!」


「知ってるよ。一回やってるから」


さとるくんは少しだけ嫌そうな顔をしたあと、観念したように則人の前へ立った。


「分かった。やって」


「うん!」


則人はピコピコハンマーを両手で持つ。


戦うためではない。


倒すためでもない。


さとるくんを元に戻すために。


「いくよ」


「おう」


則人がハンマーを振る。


ぽこん。


軽い音がした。


◇


その瞬間、セミスピーカーの着ぐるみが揺れた。


身体を包んでいた大きな着ぐるみが、少しずつさとるくんから剥がれていく。


「おっ……」


さとるくんが自分の身体を見る。


セミを思わせる部分も、大きなスピーカーも身体から離れ、やがて中からいつものさとるくんが姿を現した。


「戻った……」


「さとるくん!」


則人が笑顔で駆け寄る。


「よかったあ」


美緒がほっと息を吐き、さっちゃんも笑った。


「うん。よかった」


さとるくんは自分の腕や身体を確認してから、則人を見る。


「ありがとな」


「うん!」


一方、剥がれたセミスピーカーの着ぐるみは、その場には残らなかった。


ゆっくりと空へ向かって昇っていく。


則人たちはその姿を見上げ、やがて高い空へ消えていくまで見送った。


◇


「これで終わりだね!」


則人が嬉しそうに言う。


さとるくんも頷きかけて――止まった。


「……あ」


「どうしたの?」


「昨日のあいつら」


則人も止まる。


「あ」


美緒とさっちゃんが顔を見合わせた。


さとるくんは少し気まずそうに頬を掻く。


「……やっぱ、話した方がいいよな」


「うん。ぼくも一緒に話す」


「今度は俺、途中で喋らないようにする」


「ぼくもちゃんと聞く」


「でも、変なこと言われたら?」


「最後まで聞いてから!」


「……分かったよ」


少し不満そうにしながらも、さとるくんは頷いた。


「二人とも、そこからなんだね」


美緒が笑う。


「だって難しいもん!」


「難しいよ」


則人に続いてさとるくんも頷き、さっちゃんが小さく笑った。


その時、ふと時計を見る。


「……ところで、ノリちゃん」


「なに?」


「学校」


「……」


則人の顔が止まった。


さとるくんも止まる。


「…………あ」


次の瞬間、二人が同時に声を上げた。


「学校ーっ!」


「やばい! 俺もだ!」


二人は慌てて走り出す。


「待って、ランドセル!」


「持ってる!」


「俺、何も持ってない!」


「一回家戻らなきゃ!」


さらに慌てる二人の背中を、美緒が呆れたように見送った。


「そこは二人とも一緒なんだ」


さっちゃんは時計を見ながら苦笑する。


「間に合うかな……」


少し離れたところで、ぬらりひょんが二人の背中を眺めた。


「さて、どうじゃろうな」


朝の街に、今度はセミスピーカーの大音量ではなく、二人の慌てた声が遠ざかっていった。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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