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着ぐるみモンスター  作者: 内田紀人
セミスピーカ復活編

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第5話 今度は聞くよ

第5話 今度は聞くよ


遠くから響く大音量を追って、則人たちは歩き始めた。


「さとるくん、どこまで行っちゃったんだろう」


則人は耳を澄ませながら辺りを見回す。その後ろを、さっちゃんと美緒、ぬらりひょんがついていく。


しばらく歩いたところで、さっちゃんがふと則人の背中を見た。


「……ノリちゃん」


「なに?」


「学校は?」


「え?」


則人が足を止める。


背中にはランドセル。


数秒黙ったあと――。


「あっ! 学校!」


美緒が苦笑した。


「忘れてたんだ」


「だって、さとるくんが……!」


則人は慌てて時計を確認する。このままでは遅刻してしまう。


けれど、セミスピーカーになったさとるくんをそのままにして学校へ行く気にもなれなかった。


「どうしよう……」


困り果てる則人に、さっちゃんが言った。


「一回、ゴンさんにお願いしようか」


「ゴンさん?」


「うん。ノリちゃんのお家に連絡してもらおう。何も言わずに学校へ行かないままじゃダメだから」


則人は少し迷ってから頷いた。


「……うん」


◇


ゴンさんに事情を伝え、家への連絡を頼んだあと、四人は再びセミスピーカーの音を追った。


大音量は、少し離れた小さな広場の方から聞こえてくる。


近づくにつれて、耳を押さえながら離れていく人たちの姿が増えてきた。


「あっ!」


則人が指を差す。


広場の中央に、セミスピーカー姿のさとるくんがいた。


「さとるくん!」


則人が駆け寄る。


さとるくんが振り返った。


着ぐるみから出ている顔は、間違いなくいつものさとるくんだ。


そして則人を見つけた途端――。


「ノリちゃん! 聞いてよ!」


大きなスピーカーを通した声が辺りに響き渡った。


「う、うん!」


則人が耳を押さえながら答える。


「俺、ノリちゃんを助けただけなんだよ! 俺、悪いことしてないだろ!」


「うん。だから――」


「だって、あいつらが先に笑ったんだよ! 着ぐるみ着てるノリちゃんのこと笑ったんだぞ!」


則人の言葉が途中で消える。


「だから俺が言ってやったんだ!」


則人が何か言おうとするたび、さとるくんの言葉が重なってくる。


昨日の公園と同じだった。


則人は口を閉じた。


◇


「ちょっと、ノリちゃんが――」


見かねた美緒が声を上げようとした。


その腕を、さっちゃんがそっと掴む。


「美緒ちゃん」


「え?」


「今は、さとるくんの話を聞こう」


美緒は一瞬きょとんとしたあと、さっきまで自分たちが話していたことを思い出した。


自分も今、さとるくんが話している途中で言葉を被せようとしていた。


「あ……」


美緒は口を閉じる。


さっちゃんも、ぬらりひょんも何も言わない。


誰も止めない中で、さとるくんは話し続けた。


「だってさ! あいつら、ノリちゃんが好きで着てるのに笑ったんだぞ! そんなのおかしいだろ! だから俺が――」


さとるくんは一気に言葉を吐き出す。


則人は黙って聞いていた。


大きな声はうるさい。耳も痛い。


それでも、途中で口を挟まない。


「俺が……」


やがて、さとるくんの声が少しだけ弱くなった。


「俺が、ノリちゃんの代わりに言わなきゃって思ったんだ。ノリちゃん、何も言えなくなってたから」


そこで初めて、言葉が止まる。


少しの沈黙。


「……だから」


さとるくんが俯いた。


「俺、ノリちゃんを助けたかっただけなんだよ」


則人は少し待った。


もう続きがないことを確かめてから、口を開く。


「うん」


さとるくんが顔を上げた。


「ありがとう」


「え?」


「昨日、助けてくれて。ぼく、嬉しかったよ」


則人は笑った。


「さとるくん、ほんとにかっこよかった」


「……ほんと?」


「うん!」


則人が大きく頷くと、さとるくんの表情が少しだけ緩んだ。


◇


「でもね」


則人が続けようとする。


「俺は――」


さとるくんが、また言葉を被せかけた。


「さとるくん」


則人は怒鳴らなかった。


ただ、名前を呼んだ。


さとるくんが止まる。


「今度は、ぼくの話も聞いてくれる?」


「……」


「さっき、ぼくはさとるくんの話を聞いたよ。だから今度は、ぼくの番」


さとるくんは何か言いたそうに口を開いた。


けれど、少し迷ってから閉じる。


「……うん」


その返事を聞いて、則人は話し始めた。


「ぼくね、昨日さとるくんが来てくれて、すっごく嬉しかった。大きい子たちに笑われて、何も言えなくなっちゃったから。だから、さとるくんが代わりに言ってくれて嬉しかったんだ」


さとるくんは黙って聞いている。


「でもね」


則人は昨日の公園を思い出した。


「あの子が何を言ってたのか、ぼくもちゃんと聞いてなかった」


「え?」


さとるくんが思わず声を出した。


でも、それ以上は続けない。


則人の言葉を待つ。


「『俺が着たくないって言っただけ』って言ってたよね」


さとるくんの表情が少し変わった。


「うん……」


「そのあと、さとるくんは『ぼくは着たいんだ』って言ってくれた」


「だってノリちゃんは着たいだろ?」


「うん。着たいよ」


則人はすぐに頷く。


「でも、それって……違う話だったのかもしれない」


「違う話?」


「うん」


則人も、うまく説明できずに少し考える。


「あの子は、自分は着たくないって言ってた。ぼくは、着たい」


「……うん」


「違うこと言ってるけど、どっちかが間違ってるってことじゃないのかも」


さとるくんは黙った。


◇


しばらくして、さとるくんの声がまた大きくなった。


「でも! 最初に笑ったのはあいつらだろ!」


則人は頷く。


「うん」


「ノリちゃんだって嫌だっただろ!」


「嫌だったよ」


「じゃあ――!」


さとるくんが勢いよく続けようとする。


けれど則人は、最後まで待ってから言った。


「でも、それとお話を聞くことは別なんだって」


「……別?」


「うん」


則人は、さっきさっちゃんたちから聞いたことを思い出しながら、自分の言葉で続ける。


「笑われたのは嫌だった。さとるくんが助けてくれたのは嬉しかった。でも、あの子が何を言いたかったのか、ぼくたち最後まで聞いてなかった」


さとるくんは何も言わない。


「ぼくも聞いてなかったんだ」


則人は小さく笑った。


「だから、さとるくんだけじゃないよ」


さとるくんの顔から、さっきまでの勢いが少しずつ消えていく。


口を開く。


けれど、すぐには声を出さない。


今までなら、そのまま自分の言葉をぶつけていた。


でも今回は――。


「……」


黙っている。


則人も急かさない。


美緒も、さっちゃんも、ぬらりひょんも。


誰も、その沈黙を自分の言葉で埋めなかった。


◇


やがて、さとるくんが小さく口を開く。


「……じゃあ」


今度は、さっきまでのような大音量ではなかった。


「俺、どうすればよかったんだよ」


則人は目を瞬き、少し考えた。


そして。


「分かんない」


「え?」


さとるくんが思わず聞き返す。


「ぼくにも分かんないよ」


「……なんだよ、それ」


「でも」


則人は笑った。


「一緒に考えようよ」


さとるくんが則人を見る。


「さとるくんの話も、ぼく聞くから。ぼくの話も聞いてほしい」


少し間を置いて、続ける。


「それで、昨日のあの子たちの話も、今度はちゃんと聞いてみようよ」


さとるくんは何も言わなかった。


則人の話が終わっても、すぐに自分の言葉を重ねない。


少し考えてから、小さく頷いた。


「……うん」


則人の顔に笑みが戻る。


さっちゃんも、美緒も何も言わない。


ただ、二人のやり取りを静かに見ていた。


ぬらりひょんも、少し離れたところから二人を見つめている。


セミスピーカーの大きなスピーカーからは、しばらく何の音も聞こえなかった。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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