独立編 第3話 また、セミスピーカー
独立編 第3話 また、セミスピーカー
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
「はーい!」
元気よく返事をして、則人はランドセルを背負い、いつもの道を学校へ向かった。
昨日、公園では少し嫌なこともあった。着ぐるみキットを着て遊んでいたら、年上の男の子たちに笑われてしまったのだ。何か言い返したかったのに、うまく言葉が出てこなかった。
でも、その時にさとるくんが来てくれた。
則人の前に立ち、年上の子たちを相手に一歩も引かず、代わりに言い返してくれた。
『ヒーローみたいだった!』
昨日、自分で言った言葉を思い出すと、則人は少し嬉しくなる。
そのあとも二人で遊んだし、帰る時だっていつもと同じだった。
今日もまた会える。
そう思いながら歩いていた、その時だった。
突然、大きな音が住宅街に響き渡った。
「うわっ!」
則人は反射的に両耳を塞いだ。前を歩いていた人も、自転車に乗っていた人も、驚いて足を止める。
「何、この音!?」
「どこから鳴ってるんだ?」
近くの家の窓まで、びりびりと震えている。
やがて音が止むと、則人は恐る恐る耳から手を離した。
「……今の」
聞いたことがある。
ずっと前に、すぐ近くで聞いた音。
「まさか……」
もう一度、大音量が響いた。
今度は方向が分かった。
「あっちだ!」
則人は音のする方へ走り出した。
◇
角を曲がると、向こうから何人もの人が逃げてきた。
「危ないよ!」
「そっち行かない方がいい!」
声を掛けられても、則人は足を止めず、その先へ進んだ。
そして道の向こうに、大きな着ぐるみの姿を見つける。
セミを思わせる身体に、大きなスピーカー。
則人の足が止まった。
「セミスピーカー……!」
間違いない。
以前にも見たことのある着ぐるみモンスターだった。
また誰かがセミスピーカーになっている。
そう思った、その直後。
則人は、着ぐるみから出ている顔を見た。
「……え?」
目を見開く。
もう一度、確かめる。
見間違えるはずがなかった。
「さとるくん……?」
昨日まで一緒にいた友達の顔が、そこにあった。
◇
則人は、その場に立ち尽くした。
「さとるくん?」
返事はない。
「どうしたの?」
一歩、前へ出る。
「ぼくだよ! 則人だよ!」
着ぐるみの中から見えている顔は、間違いなくさとるくんだった。
それなのに、返事の代わりにセミスピーカーから再び大きな音が響いた。
「うわっ!」
則人は慌てて耳を塞ぐ。
その大音量に、則人の声まで飲み込まれていった。
音が収まると、すぐに顔を上げる。
「さとるくん! 昨日、一緒に遊んだよね!」
返事を待つ。
けれど、また大きな音が響く。
「さとるくん、聞いて!」
声がかき消される。
則人は耳を塞ぎながら、困ったように顔をしかめた。
「これじゃ、お話できないよ……」
昨日のことが、次々と頭に浮かんでくる。
自分の前に立ってくれたこと。
一緒に遊んだこと。
笑っていたこと。
そして帰り道。
『またな、ノリちゃん』
そう言って、いつもと同じように別れた。
それなのに今、目の前にはセミスピーカーの着ぐるみに包まれたさとるくんがいる。
音が止んだところで、則人はもう一度声を張った。
「さとるくん! ぼくのこと、分かる?」
顔を見ながら呼びかける。
「ねえ、お話ししようよ!」
けれど返事はなく、また大きな音が響き始めた。
何度話しかけても、会話にならない。
「……どうしよう」
則人は辺りを見回した。
自分一人では、どうしたらいいのか分からない。
だったら、聞ける人がいる。
もう一度さとるくんを見て、則人は声を掛けた。
「待っててね!」
そう言い残すと、その場から走り出した。
◇
「ぬらりひょん!」
則人は息を切らして駆け込んだ。
「ぬらりひょん、大変!」
「朝から騒がしいのう。どうした」
「セミスピーカーが出た!」
ぬらりひょんの目が、わずかに細くなる。
「セミスピーカー?」
「うん! それでね――さとるくんだった!」
「さとるが?」
「うん! 顔見たから間違いないよ!」
則人は身を乗り出した。
「昨日まで普通だったんだよ!」
ぬらりひょんは、すぐには何も言わなかった。
少し間を置いてから尋ねる。
「昨日、何かあったか?」
「昨日?」
則人は首を傾げ、それから公園でのことを思い出した。
「ぼく、昨日キッドの着ぐるみ着て、公園で遊んでたの」
「ほう」
「そしたらね、ちょっと大きい子たちが笑ってきて。子供っぽいとか、本物のキッドじゃないとか言われた」
少し頬を膨らませていた則人だったが、すぐに表情を明るくした。
「それで、さとるくんが来てくれた!」
「さとるが?」
「うん! ぼく、何も言えなくなっちゃったんだけど、さとるくんが代わりに言ってくれたんだよ。すっごくかっこよかった!」
昨日と同じように、嬉しそうに続ける。
「ヒーローみたいだったんだよ!」
ぬらりひょんは何も言わず、続きを待った。
「そのあと一緒に遊んだし、帰る時も普通だったよ。ぼくも『ありがとう』って言って、さとるくんも『またな』って」
そこまで話すと、則人の声が少しだけ小さくなった。
「なのに……」
遠くから、かすかに大きな音が響いた。
則人が振り返る。
さっきまでの笑顔が消える。
「今日になったら、またセミスピーカーになってた」
ぬらりひょんは黙ったまま、則人の話を聞いている。
則人は少し考えてから、小さく呟いた。
「……なんでだろう」
しばらくして、ぬらりひょんが口を開いた。
「則人」
「なに?」
「昨日のことを、もう少し詳しく聞かせてくれるか」
「昨日のこと?」
「そうじゃ」
「うん。いいよ」
則人は素直に頷いた。
昨日、公園で起きたこと。
そして今、さとるくんが再びセミスピーカーになっていること。
その二つがどう繋がっているのか。
この時の則人には、まだ分かっていなかった。
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
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ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




