独立編 第2話 聞いてよ
独立編 第2話 聞いてよ
「だから、俺たち別に着るなって言ってるわけじゃ――」
「じゃあ笑わなきゃいいだろ!」
男の子が言い終わるより先に、さとるくんの声が重なった。
「だから最後まで聞けよ!」
「聞いてるよ!」
「聞いてないじゃん!」
さとるくんと三人の男の子たちの言い合いは、まだ続いていた。
則人は着ぐるみキット姿のまま、さとるくんの後ろに立っている。
年上の子たちを相手に一歩も引かず、自分のために言い返してくれている。その姿は、今の則人にはただ格好よく見えていた。
◇
男の子の一人が、苛立った声を上げる。
「俺は、あんなの着て遊ぶのは恥ずかしいって言っただけだろ」
「だから、それが馬鹿にしてるって言ってるんだよ!」
「俺が着たくないって言っただけじゃん!」
「ノリちゃんは着たいんだよ!」
「それは分かってるって!」
「だったら笑うなよ!」
話は少しずつ噛み合わなくなっていた。
男の子は、自分なら着ないと言っている。
さとるくんは、則人が好きなものを笑うなと言っている。
本当なら、どちらも同時に成り立つ話だった。
自分は着たくない。
でも、則人が着たいなら好きにすればいい。
それだけで終われたはずなのに、相手が言葉を続けようとするたび、さとるくんの声が重なる。
「だから俺が言ってるのは――」
「人が好きでやってること笑う必要ないだろ!」
「まだ話してるって!」
「何回言えば分かるんだよ!」
二人の声が次第に大きくなっていく。
則人は心配になり、後ろからさとるくんの服を引いた。
「さとるくん」
「何?」
「もういいよ」
「何で?」
「ぼく、もう大丈夫だから」
則人は笑ってみせた。
それでも、さとるくんは納得していないようだった。
「でも、こういうのはちゃんと言わないと伝わらないだろ」
その言葉に、男の子の一人が声を荒らげる。
「だったら、お前も俺の話聞けよ!」
「聞いてるって!」
「じゃあ、俺が何言おうとしたか言ってみろよ!」
「……」
さとるくんの言葉が止まった。
「ほら」
「でも、ノリちゃんを笑ったのは本当だろ!」
「だから、それも説明しようとしてたんだよ!」
「何を?」
「だから今から――」
「もういいよ!」
別の男の子が二人の間に入った。
「行こうぜ」
「でも」
「もういいって」
三人は、さとるくんから離れていく。
一人だけ最後に振り返ったが、結局何も言わず、そのまま仲間たちと公園の向こうへ歩いていった。
さとるくんは、その背中を見送る。
「何なんだよ、あいつら……」
まだ少し苛立った声だった。
◇
「さとるくん!」
明るい声に、さとるくんが振り返った。
そこには、満面の笑みを浮かべた則人がいた。
「何?」
「ありがとう!」
「……え?」
「ぼく、何も言えなくなっちゃったから。さとるくんが言ってくれて、うれしかった!」
「別に……」
「すっごくかっこよかったよ!」
さとるくんの表情が少し緩む。
「そう?」
「うん!」
則人は大きく頷いた。
「ヒーローみたいだった!」
「……そっか」
さとるくんは少し照れたように笑った。
「じゃあ、さとるくんも一緒に遊ぼう!」
「え?」
「怪人役!」
「何で俺が怪人なんだよ!」
「じゃあ仲間!」
「最初からそっちにしろよ」
「えへへ」
さっきまでの言い合いが嘘だったように、二人は笑った。
◇
「怪人め! そこまでだ!」
「俺、仲間なんだろ?」
「あっ」
「もう敵に戻ってんじゃん」
「じゃあ、さとるくんもキッド!」
「キッド二人いるの?」
「いいの!」
「いいんだ……」
公園に二人の笑い声が響く。
則人が拳を構えれば、さとるくんも真似をする。二人で見えない怪人へ向かって走り、攻撃したつもりになって、また笑った。
やがて夕日が公園を赤く染め始める。
「そろそろ帰らないと」
則人は時間に気づくと、着ぐるみキットを脱ぎ始めた。
さとるくんが不思議そうに見る。
「ここで脱ぐんだ」
「うん。公園から出る時は脱ぐって、お母さんと約束してるから」
「へえ」
則人は脱いだ着ぐるみキットを、きちんと袋へしまった。
「できた!」
「ちゃんと約束守ってるんだな」
「当たり前だよ!」
得意そうに胸を張る則人を見て、さとるくんが笑う。
「偉いじゃん」
「えへへ」
二人は並んで公園を出た。
◇
しばらく一緒に歩き、やがていつもの分かれ道へ着く。
則人が足を止めた。
「じゃあ、ぼくこっち!」
「うん。またな」
「さとるくん!」
歩き出そうとしたさとるくんが振り返る。
「何?」
「今日はありがとう!」
「もういいって」
さとるくんは少し照れくさそうに手を振った。
「またな、ノリちゃん」
「またね!」
二人は別々の道を歩き始めた。
◇
一人になったさとるくんは、夕暮れの道を歩いていた。
しばらくすると、ふと足取りが遅くなる。
『最後まで聞けよ!』
さっきの声が蘇った。
『じゃあ、俺が何言おうとしたか言ってみろよ!』
あの時、何も答えられなかった。
さとるくんは少しだけ俯く。
だが、今度は別の声が浮かんできた。
『すっごくかっこよかったよ!』
則人の笑顔。
『ヒーローみたいだった!』
しばらく黙っていたさとるくんは、やがて顔を上げ、再び歩き始めた。
その時だった。
◇
道の先に、黒い服を着た男が立っていた。
さとるくんが足を止める。
いつからそこにいたのか分からない。
黒服は何も言わず、静かに片手を差し出した。
その手の上にあるものを見た瞬間、さとるくんの表情が変わる。
見覚えがあった。
黒服は何も説明しない。
何かを問いかけることもしない。
ただ、それを差し出したまま一言だけ告げた。
「どうぞ」
夕暮れの道で。
さとるくんは何も言わず、差し出されたものを見つめていた。
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
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ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




