↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
着ぐるみモンスター  作者: 内田紀人
ガスねずみ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
69/118

第五章 閑話三 ねこみみ、ほしい!

第五章 閑話三 ねこみみ、ほしい!


「さて」


ぬらりひょんが、美緒の前へ手を出した。


「返してもらおうかの」


「……何をですか?」


「その頭についておるものじゃ」


美緒は両手で猫耳カチューシャを押さえた。


「えっ」


「えっ、ではない」


「返すんですか?」


「貸しただけじゃからな」


「……」


美緒は猫耳を押さえたまま、じっとぬらりひょんを見る。


「欲しいです」


「駄目じゃ」


「まだ何も言ってない!」


「今、欲しいと言ったじゃろ」


「じゃあ、ください!」


「駄目じゃ」


「お願いします!」


美緒が手を合わせた。


ぬらりひょんは深いため息をつく。


少し離れたところでは、咲子がそのやり取りを見ていた。


則人もいる。


ここは、いつものゴンさんの店。


美緒はバイト中だった。


もちろん、猫耳カチューシャをつけたままである。


「だって、これすごいんですよ!」


美緒が猫耳を指さす。


「妖怪が見えるんですよ!」


「そのための道具じゃ」


「天女さんも見えるし!」


「知っておる」


「タライ小僧も!」


「知っておる」


「天狗も!」


「それも知っておる」


「最高じゃないですか!」


「おぬしにとってはな」


咲子が頷いた。


「絶対返したくないだけだよね」


「だって、さっちゃんは元から見えるからいいじゃん!」


「だからって、美緒が好き勝手使っていい理由にはならないでしょ」


「悪いことには使わないよ!」


ぬらりひょんが美緒を見る。


「その言葉が一番不安じゃの」


「何でですか!」


「私も分かる」


「さっちゃんはどっちの味方なの!?」


「安全な方」


「ひどい!」


則人が猫耳を見る。


「みおちゃん、それすきなの?」


「好き!」


即答だった。


「かわいいし!」


「やっぱり、そこもあるんじゃん」


咲子が呆れた。


◇


「美緒!」


厨房の方からゴンさんの声が飛んできた。


「はい!」


「何さっきから一人で喋ってんだ! 仕事しろ!」


「一人じゃないです!」


「誰とだよ!」


「えっと……」


美緒はぬらりひょんを見る。


ぬらりひょんも美緒を見る。


ゴンさんは、その方向を――ほんの一瞬だけ見た。


咲子が、その視線に気づく。


「……ゴンさん?」


「何だよ」


「今、そっち見ませんでした?」


「見てねえよ」


「私、まだ何がいるとも言ってませんけど」


「うるせえ! 仕事しろ!」


「はいはい!」


美緒が返事をする。


ゴンさんはぶつぶつ言いながら厨房へ戻っていった。


咲子は、その背中をじっと見る。


「……」


「さっちゃん?」


「何でもない」


美緒は気にせず、再びぬらりひょんへ向き直った。


「で、ください!」


「話が戻るの早いのう」


◇


ぬらりひょんは美緒の猫耳を見る。


本来なら、返してもらうつもりだった。


だが、今回の一件では怪人が二人、ほぼ同時に現れた。


則人は片方へ。


美緒と咲子は、もう片方へ。


則人は一人しかいない。


咲子には妖怪が見える。


しかし、離れた場所にいるぬらりひょんと連絡を取る手段はなかった。


そこで役に立ったのが、この猫耳と糸電話だった。


ぬらりひょんが顎に手を当てる。


「……しかし」


美緒の顔が明るくなる。


「しかし?」


「今回のようなことが、また起こらぬとも限らん」


「起こります!」


「そこで嬉しそうにするでない」


咲子がすぐに突っ込んだ。


「そういう事件は起きない方がいいの」


「あ、そっか」


「そこから?」


ぬらりひょんは、さらに考える。


美緒は高校生。


普段から猫耳をつけて学校へ行くようなことは――。


ぬらりひょんが美緒を見る。


「まあ、さすがのおぬしも、これを四六時中つけて歩くようなことは――」


「つけますよ?」


「返せ」


「嘘です!」


美緒は即座に猫耳を両手で押さえた。


咲子が額に手を当てる。


「今ので本当に没収されかけたよ」


「だって、聞かれたから!」


「聞いてないよ」


◇


ぬらりひょんは大きく息を吐いた。


「……分かった」


「えっ?」


美緒が目を輝かせる。


「もらえるんですか!?」


「まだ最後まで聞け」


「はい!」


「返事だけはよいのう」


ぬらりひょんは指を立てた。


「まず、必要もない時に使わぬこと」


「はい!」


「面白半分に妖怪を探して回らぬこと」


「……はい」


「今、間があったの」


「気のせいです!」


「妖怪を見つけたからといって、むやみに追い回さぬこと」


「はい!」


咲子が小声で言う。


「これ、一番守れなさそう」


「聞こえてるよ!」


ぬらりひょんは続ける。


「そして、何かあれば、わしの指示に従うこと」


「分かりました!」


「最後に」


「はい!」


「則人の手伝いをすることじゃ」


「やります!」


即答だった。


則人が目を丸くする。


「みおちゃん、ぼくのおてつだいするの?」


「するよ!」


「なにするの?」


「……」


美緒が止まった。


則人も待つ。


美緒はぬらりひょんを見る。


「……何すればいいんですか?」


ぬらりひょんが目を閉じた。


「そこからか」


咲子が頭を抱える。


「やっぱり絶対面倒増える……」


◇


「とにかくじゃ」


ぬらりひょんは美緒へ言う。


「今回のように則人一人では手が回らぬ時、その補助をする」


「はい」


「わしらとの連絡役になることもあるじゃろう」


「はい!」


「そのために」


ぬらりひょんは、美緒の頭の猫耳を見る。


「……しばらく預けておく」


一瞬、美緒が固まった。


「……」


次の瞬間。


「やったー!」


店中に声が響いた。


「美緒!」


ゴンさんが怒鳴る。


「うるせえ!」


「すみませーん!」


それでも美緒は、嬉しそうに猫耳を押さえている。


「これで、いつでも妖怪が――」


「いつでもではない」


「はい!」


「今、絶対分かっておらんかったじゃろ」


「分かってますって!」


咲子が呟く。


「どうだか」


則人は嬉しそうだった。


「みおちゃんもいっしょだね!」


「うん!」


「なにが?」


「おてつだい!」


「そうだね!」


二人が喜ぶ。


咲子だけが、ますます不安そうな顔になっていた。


◇


それから。


美緒は、ぬらりひょんとの約束を守った。


学校ではつけない。


普段の買い物でもつけない。


友達と遊びに行く時にもつけない。


理由もないのに高校生が猫耳カチューシャをつけて歩いていれば、さすがに目立つ。


何より、これは遊び道具ではない。


必要な時に使うもの。


美緒自身も、そこは分かっていた。


ただし。


一か所だけ、例外ができた。


ゴンさんの店である。


◇


「美緒ちゃん、今日も猫耳なんだ」


「はい!」


客に言われて、美緒が笑う。


頭には、いつもの猫耳カチューシャ。


この店には、ぬらりひょんがいることが多い。


天女も、ちょくちょく遊びに来る。


妖怪と連絡を取ったり、様子を確認したりするには都合がいい。


だから店にいる時だけは、猫耳をつけていることが増えた。


それだけだった。


……はずなのだが。


「ねえ、今日、猫耳の子いる?」


「いるよ」


「やった」


ゴンさんが眉をひそめる。


最近、妙に客が増えている。


もともと、美緒と咲子を目当てに来る客は以前より増えていた。


そこへ、猫耳カチューシャ姿の美緒。


新たな客寄せ要素が、勝手に追加されてしまった。


ゴンさんが腕を組む。


「……おい」


「何ですか?」


「何でお前の猫耳目当ての客が増えてんだ」


「私に聞かれても」


「うちはそういう店じゃねえんだよ!」


「私、普通に働いてるだけですよ!」


「猫耳つけてな!」


「必要なんです!」


「何にだよ!」


美緒が答えようとする。


「妖――」


咲子がすぐ口を挟んだ。


「美緒」


「あ」


ゴンさんも一瞬固まる。


「……」


「……」


三人とも黙る。


客が不思議そうに見る。


美緒が笑った。


「かわいいからです!」


「今、絶対違うこと言おうとしただろ!」


「気のせいです!」


ゴンさんが頭を抱えた。


◇


そこへゴンさんの妻がやってくる。


店内を見回して、楽しそうに言った。


「いいじゃない。お客さん増えたんだから」


「よくねえよ」


「何で?」


「うちは普通の店なんだよ」


「普通の店でも、お客さん多い方がいいでしょ」


「そういう問題じゃねえ!」


妻が美緒の猫耳を見る。


「でも、かわいいわよね」


「ですよね!」


「私もつけようかしら」


ゴンさんが即答した。


「やめてくれ」


「何でよ」


「頼むから普通に店やらせてくれ」


「私が猫耳つけたくらいで普通じゃなくなる?」


「なる!」


「失礼ね」


「そういう話じゃねえ!」


則人が横から手を上げる。


「ぼくもつけたい!」


「お前はもっとやめろ!」


「なんでー!」


「何で全員猫耳つけたがるんだよ!」


咲子が笑う。


「ゴンさん、人気店になってよかったじゃないですか」


「この方向ではなりたくなかったんだよ!」


◇


美緒が、ふと咲子を見る。


「ねえ」


「何?」


「さっちゃんもつければいいじゃん」


「嫌」


即答だった。


「まだ何も説明してないけど!」


「猫耳でしょ?」


「そう!」


「嫌」


「絶対似合うって!」


「似合うかどうかじゃないの」


「バイト中だけ!」


「バイト中でも嫌」


「お客さん増えるかもよ?」


「それで増えるお客さんは、美緒に任せる」


「何でよ!」


「私は普通に働きたいから」


ゴンさんが力強く頷いた。


「そうだ!」


美緒が振り返る。


「店長が客増やすの拒否してる!」


「拒否してねえ! 普通に増えてほしいんだよ!」


ゴンさんの妻が咲子を見る。


「でも咲子ちゃんも似合いそうよね」


「奥さんまで!?」


「二人で猫耳つけたら、もっと人気出るんじゃない?」


「だから増やすな!」


「あなた、さっきから経営者としておかしくない?」


「俺の店を何の店にする気だ!」


美緒が笑う。


「じゃあ、三人でつけましょうよ」


「三人?」


「私と、さっちゃんと、奥さん」


「嫌」


「やめろ」


「いいわね」


三方向から同時に返事が飛んだ。


「一人乗り気!」


ゴンさんが叫んだ。


◇


そんな騒ぎの横で。


天女が店へやってきていた。


「こんにちは、美緒さん」


「あ、天女さん!」


美緒の顔が明るくなる。


すぐに天女の方へ行く。


「この前のマカロンの話なんですけど――」


「美緒!」


ゴンさんの声が飛ぶ。


「はい!」


「仕事!」


「今、天女さんが――」


「バイト中に妖怪と遊ぶな!」


言った。


店内が、一瞬静かになった。


「……」


ゴンさん自身も固まる。


一般客の一人が聞いた。


「妖怪?」


「……あ」


ゴンさんの顔が引きつる。


美緒が口元を押さえる。


咲子もゴンさんを見る。


天女だけは、きょとんとしていた。


ゴンさんは咳払いする。


「いや!」


声が裏返った。


「妖怪みたいにフラフラしてないで働けって意味だ!」


客が首を傾げる。


「そんな言い方ある?」


「ある!」


「初めて聞いたけど」


「今日からあるんだよ!」


美緒がとうとう吹き出した。


「ちょっと、ゴンさん!」


「笑うな!」


咲子が静かに言う。


「ゴンさん」


「何だよ」


「今、天女さんの方見てましたよね?」


「見てねえ!」


「でも――」


「見てねえ!」


「まだどこに天女さんがいるか言ってませんけど」


「……」


ゴンさんが咲子を見る。


咲子も見る。


数秒。


「仕事しろ!」


「私、今日休みです」


「じゃあ黙ってろ!」


「無茶苦茶だなあ」


美緒はもう笑いを堪えられなかった。


◇


店の中は、今日も賑やかだった。


猫耳をつけて働く美緒。


それを目当てにやってくる客。


猫耳を絶対拒否する咲子。


自分もつけたいと言い出す則人。


本当に自分までつけようかと考えているゴンさんの妻。


妖怪と話せるようになって嬉しそうな美緒。


そして、それら全部に振り回されているゴンさん。


「……俺は」


ゴンさんが呟いた。


「ん?」


妻が見る。


ゴンさんは店内を見回す。


「普通の店をやりたいんだよ……」


妻が笑う。


「賑やかでいいじゃない」


「そういう問題じゃねえ……」


美緒が猫耳を揺らしながら料理を運んでいく。


「お待たせしましたー!」


客が喜ぶ。


「猫耳似合ってるよ!」


「ありがとうございます!」


「喜ぶな!」


「接客してるだけです!」


咲子が笑う。


則人も笑う。


天女も笑っている。


少し離れたところで、ぬらりひょんがその様子を見ていた。


美緒を見る。


猫耳を見る。


騒がしい店を見る。


「……返してもらった方がよかったかのう」


咲子が即座に頷いた。


「私もそう思います」


「さっちゃん!」


美緒の声が店いっぱいに響いた。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。