第五章 第十二話 六回まわせ!
第五章 第十二話 六回まわせ!
六枚のコインが、ガチャの前に並んでいた。
青龍。
白虎。
玄武。
そして、少し離れたところに朱雀。
その周囲には、いつの間に集まったのか、それぞれの配下たちが大勢集まっている。
「青龍様ー! お願いいたします!」
「白虎様! 今度こそ我らの陣営を!」
「玄武様ー!」
「朱雀様ー!」
朱雀が振り返った。
「私、今回回せないんだけど」
「それでも応援いたします!」
「ありがと!」
「そこ、喜ぶところか?」
青龍が呆れたように言った。
その横では、すでに別の配下たちが何やら準備を始めている。
茶碗。
茶筅。
茶釜。
白虎が眉を寄せた。
「……何をしている」
「抹茶を点てております」
「見れば分かる。何でだ」
「六回もありますので」
「六回しかないだろ」
「長丁場です!」
「どこがだ!」
玄武は静かに茶碗を受け取った。
「いただこう」
「玄武まで飲むのか」
「せっかく用意してくれたのだ」
「玄武様ー!」
玄武陣営から歓声が上がる。
青龍が頭を抱えた。
「始めるぞ。これ以上待っていたら、本当に宴会になる」
「もう半分なってるけどね」
朱雀が言った。
「誰のせいだと思っている」
「私じゃないでしょ!」
「今回はな」
◇
一回目。
最初にコインを手にしたのは白虎だった。
「よし」
白虎がガチャの前へ立つ。
その瞬間、白虎陣営の配下たちが一斉に前へ詰め寄った。
「白虎様!」
「お願いいたします!」
「我らの誰かを!」
「近い!」
白虎が振り返る。
「少し下がれ!」
「はい!」
全員が一歩だけ下がった。
「一歩じゃなくて、もっとだ!」
さらに下がる。
白虎はため息をつきながら、コインを入れた。
ガチャ。
ガチャ。
ガチャ。
ころん。
カプセルが落ちる。
「おおおおおお!」
「まだ開けてない!」
白虎が怒鳴る。
一瞬で静かになった。
白虎がカプセルを開く。
結果が示された、その瞬間。
玄武陣営から歓声が上がった。
「出たー!」
「玄武様ー!」
「我らです!」
玄武配下の一人に、人間から認識される資格が与えられた。
当の本人が自分を指さす。
「……私ですか?」
「おめでとう!」
「人間に見てもらえるぞ!」
周囲の玄武配下たちが一斉にその者を囲む。
本人は嬉しいのか困っているのか分からない顔になった。
一方。
白虎陣営は静かだった。
「……」
白虎もカプセルを見る。
「俺が回したんだが」
玄武が抹茶を一口飲む。
「ありがたいことだ」
「お前が礼を言うのか」
「白虎のおかげだからな」
「なんか腹立つな」
◇
二回目。
再び白虎。
「今度こそ頼むぞ」
白虎陣営が祈る。
「白虎様……」
「我らを……」
「お願い……」
「何でそんな切実なんだ」
白虎が二枚目のコインを入れる。
ガチャ。
ガチャ。
ガチャ。
ころん。
全員が息を呑んだ。
白虎が開ける。
玄武陣営。
二人目。
「出たあああああ!」
「また玄武様だ!」
「玄武様ー!」
玄武陣営が大騒ぎになる。
抹茶を運んでいた配下まで飛び跳ねた。
「うわっ!」
茶碗が傾く。
「こぼすな!」
白虎が慌てて支える。
「ありがとうございます、白虎様!」
「何で俺が玄武の配下の茶を守ってるんだ!」
玄武が静かに言った。
「すまないな」
「お前が一番落ち着いてるのも腹立つ!」
白虎陣営。
「……」
まだゼロ。
一人が小さく呟いた。
「人間、ざまあみろ」
白虎が振り返る。
「何がだ?」
「……何となくです」
「何となくで人間を煽るな」
◇
三回目。
青龍がコインを手にした。
「俺の番だな」
青龍陣営から大歓声。
「青龍様ー!」
「お願いいたします!」
「こっち来い!」
「誰に言ってるんだ」
青龍が呆れながらガチャを回す。
ガチャ。
ガチャ。
ガチャ。
ころん。
カプセルを開く。
一瞬。
朱雀陣営が静まった。
そして。
「出たああああああ!」
大爆発した。
「朱雀様ー!」
「やりました!」
「我らから一人です!」
朱雀も立ち上がる。
「ほんと!?」
朱雀陣営の既存配下、一人に認識資格が与えられている。
「やったー!」
朱雀が喜ぶ。
その横で。
青龍の顔が固まった。
白虎も固まっていた。
二人がゆっくり黄龍を見る。
「……待て」
青龍が言った。
白虎も続ける。
「これはおかしくないか?」
朱雀陣営が一斉に二人を見る。
嫌な予感がした。
青龍が黄龍へ詰め寄る。
「朱雀は罰で回せないんだよな?」
黄龍が頷いた。
「そうだ」
「なのに朱雀の配下は出るのか?」
白虎も言った。
「それでは罰になっていないだろう!」
朱雀陣営が慌てた。
「余計なこと言わないでください!」
「何だと?」
「せっかく出たんです!」
「黄龍様、今のお話は聞かなかったことに!」
「結果を取り消すなどということは――」
「誰も取り消すとは言ってない!」
「でも、その流れでした!」
「違う!」
「二回減ってるんだから十分でしょう!」
「お前たちはどっちの味方なんだ!」
「朱雀様です!」
即答だった。
朱雀は満足そうに頷く。
「いい配下たちね」
青龍と白虎が同時に睨んだ。
「お前も少しは反省しろ!」
「してるってば!」
そう答えた朱雀だったが。
自分の陣営から一人出た。
それでもう安心したらしい。
すぐに隣にいた天女へ顔を向ける。
「ねえ、天女」
「はい?」
「下界に、マカロンとかいう食べ物があるんでしょ?」
「ありますね」
「おいしいの?」
「甘くて、とてもおいしいですよ」
朱雀の目が輝く。
「やっぱり! 色もいっぱいあるんでしょ?」
「はい。とても可愛らしくて――」
「食べたい!」
すっかりガチャから意識が離れている。
少し後ろに控えていた執事役が静かに声をかけた。
「朱雀様」
「なに?」
「まだガチャの途中でございます」
「見てるわよ」
「先ほどから一度も見ておられません」
朱雀がガチャを見る。
「あ、ほんとだ」
「朱雀様……」
天女がくすくす笑った。
◇
四回目。
玄武がコインを手にした。
玄武陣営は、すでに二人出ているため余裕がある。
「玄武様!」
「三人目を!」
「欲張るな」
玄武がたしなめる。
一方、青龍陣営は真剣。
白虎陣営は、それ以上に真剣だった。
朱雀陣営はまだ三回目の結果を祝っている。
「回すぞ」
玄武がコインを入れる。
ガチャ。
ガチャ。
ガチャ。
ころん。
カプセルを開ける。
「青龍だ」
一瞬の静寂。
次の瞬間。
「やったああああ!」
青龍陣営が沸いた。
「青龍様!」
「出ました!」
「我らからも!」
青龍も満足そうに頷く。
「よし」
そして。
青龍陣営の何人かが、ちらりと白虎陣営を見る。
白虎陣営。
まだゼロ。
「……」
一人が口元を緩めた。
「白虎様のところは、まだですか?」
白虎が振り返る。
「おい」
「あと二回ありますから!」
別の青龍配下も続ける。
「まだ大丈夫ですよ!」
「その言い方、完全に煽ってるだろ!」
「そんなことは!」
笑っている。
「お前ら覚えてろよ」
白虎陣営の配下たちも、
「次です!」
「次こそです!」
と自分たちに言い聞かせていた。
◇
五回目。
青龍が回す。
「今度こそ青龍陣営二人目を――」
「青龍!」
白虎が睨む。
「冗談だ」
「顔が本気だったぞ」
ガチャ。
ガチャ。
ガチャ。
ころん。
開ける。
そして。
「……玄武」
青龍が呟いた。
全員が玄武陣営を見る。
すでに二人。
そこへ三人目。
「また!?」
白虎が叫んだ。
青龍も黄龍を見る。
「玄武ばかり当たりすぎじゃないか?」
玄武陣営は大歓喜。
「三人目です!」
「さすが玄武様!」
「これぞ玄武様の日頃の行い!」
「玄武様のお徳のなせる業!」
「玄武様ー!」
玄武がすぐに止める。
「やめなさい」
「しかし玄武様!」
「これは私の力ではない」
「その謙虚さこそ玄武様のお徳!」
「話を聞きなさい」
たしなめても、さらに褒められてしまう。
青龍が笑った。
「玄武、諦めろ」
「困ったものだ」
玄武は本当に困っていた。
◇
そして。
白虎陣営。
「……」
静かだった。
あまりにも静かだった。
一人は座り込んでいる。
一人は遠くを見ている。
抹茶を持っていた配下も、茶碗を両手で抱えたまま俯いている。
「……あと一回」
誰かが呟いた。
「そうですね……」
「最後ですね……」
「はい……」
完全な葬式状態だった。
さっきまでからかっていた青龍陣営も、だんだん笑えなくなってきた。
「……あの」
青龍配下の一人が近づく。
「まだ最後がありますよ」
白虎配下が顔を上げる。
「……はい」
「きっと出ますから」
「……ありがとうございます」
「さっきは、その……ちょっと言いすぎました」
「……いいんです」
別の青龍配下も来る。
「元気出してください」
「……はい」
白虎が顔を覆った。
「やめろ」
青龍が聞く。
「何がだ?」
「本気で慰めるな」
「でも……」
「余計惨めになる!」
「すまん」
「お前まで謝るな!」
青龍陣営が一斉に黙った。
白虎陣営の空気は、ますます重くなった。
その横で。
例の配下が小さく言った。
「……人間、ざまあみろ」
白虎が即座に振り返る。
「今はお前が一番言うな!」
◇
最後の一枚。
六回目。
コインを手にしたのは玄武だった。
「最後だ」
全員が集まる。
特に白虎陣営。
「近い」
玄武が言った。
誰も下がらない。
「近いぞ」
「お願いいたします、玄武様!」
「我らを!」
「最後なんです!」
「お願いします!」
白虎まで前へ出ていた。
青龍が横を見る。
「お前も近いぞ」
「うるさい」
朱雀も、いつの間にか戻ってきている。
「最後なんでしょ?」
執事役が言った。
「朱雀様、マカロンのお話は?」
「あとで!」
「今度はちゃんと見られるのですね」
「見るわよ!」
天女も笑いながら見守っている。
玄武がコインを入れた。
ガチャ。
ガチャ。
ガチャ。
誰も声を出さない。
ころん。
カプセルが落ちた。
沈黙。
玄武が拾う。
白虎陣営の全員が息を止める。
玄武が開けた。
少しだけ間があった。
「白虎だ」
「……」
誰も動かなかった。
白虎が聞き返す。
「今、何と言った?」
「白虎陣営だ」
「……」
一秒。
二秒。
そして。
「出たああああああああああ!」
白虎陣営が爆発した。
「白虎様ー!」
「やりました!」
「出た!」
「最後の最後で!」
泣く者。
抱き合う者。
飛び跳ねる者。
抹茶を持ったまま万歳する者。
「茶! 茶をこぼすな!」
白虎が叫ぶ。
「白虎様ー!」
「抱きつくな!」
「おめでとうございます!」
「分かった! 分かったから落ち着け!」
さっきまでの葬式状態が嘘のようだった。
青龍陣営も一緒になって喜ぶ。
「よかったな!」
「本当に出た!」
「おめでとう!」
白虎が青龍を見る。
「……お前たち」
「何だ?」
「さっきのことは忘れてないからな」
「そこは忘れろよ!」
笑い声が広がった。
◇
六回のガチャが終わった。
今回、人間から認識される資格を得たのは六人。
玄武陣営から三人。
朱雀陣営から一人。
青龍陣営から一人。
白虎陣営から一人。
彼らは、もともとそれぞれの陣営にいた配下たちだ。
新しく生まれたわけではない。
どこかから呼び出されたわけでもない。
ただ、これまで人間から認識されにくかった彼らに、人間側から認識される資格が与えられた。
それだけのこと。
けれど、彼らにとっては大きな出来事だった。
「人間に見える!」
「話しかけてもらえるかもしれない!」
「下界で気づいてもらえるぞ!」
選ばれた者を囲んで、再び歓声が上がる。
選ばれなかった者たちも、
「次こそ!」
「今度こそ私が!」
と、早くも次回へ気持ちを切り替えている。
その中から、
「人間、ざまあみろ!」
という声がした。
青龍が振り返る。
「お前は結局、何に勝ったんだ?」
「分かりません!」
「もう言いたいだけだろ!」
「はい!」
白虎が吹き出した。
◇
朱雀はガチャの前へ歩み寄った。
「終わっちゃった」
青龍が言う。
「お前は一回も回してないけどな」
「分かってるって」
白虎も聞く。
「少しは反省したか?」
「した!」
「本当か?」
「したってば!」
朱雀は少しだけガチャを見た。
「……でも」
「何だ?」
「やっぱり、見るだけだとちょっと物足りない」
青龍と白虎が同時にため息をついた。
朱雀は天女の方へ顔を向ける。
「ねえ、さっきのマカロンの続きなんだけど」
執事役がすかさず声をかけた。
「朱雀様」
「なに?」
「反省のお時間は、もう終了でございますか?」
「したもの!」
「非常に短うございましたね」
「ちゃんとした!」
朱雀の声に、また笑いが起こった。
六回のガチャは終わった。
それでも、その場のお祭り騒ぎは、まだしばらく終わりそうになかった。
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。
ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




