第五章 第十一話 百点なのに!
第五章 第十一話 百点なのに!
「それでは!」
タライ小僧が大きく息を吸った。
「今回は、二人分まとめて採点します!」
「ふたりぶん!」
則人が目を輝かせる。
美緒も猫耳をつけたまま、タライ小僧のすぐ横から覗き込んだ。
「どうやって採点するの?」
「今からやりますから、ちょっと待ってください!」
「はい!」
美緒が一歩下がる。
タライ小僧は気を取り直して、こほんと咳払いをした。
「それでは――」
少し間を置く。
則人がじっと待つ。
サトルも結果を待っている。
咲子も腕を組んでタライ小僧を見ていた。
元に戻った女性だけは、何もいない場所をみんなが見つめている状況に、まだ慣れていない。
タライ小僧が大きな声を上げた。
「今回の点数は――百点です!」
「やったー!」
則人が飛び跳ねた。
「ひゃくてん!」
美緒も笑う。
「すごいじゃん、ノリちゃん! 満点!」
「まんてん!」
「よかったね」
サトルも言った。
「うん!」
則人は満面の笑みを浮かべた。
その横で。
「……ん?」
咲子だけが首を傾げる。
「どうしたの、さっちゃん?」
「いや……」
咲子は指を二本立てた。
「今回、二人助けたんだよね?」
「うん!」
「二人分まとめて採点したんだよね?」
「うん!」
「だったら、一人百点として……二百点満点じゃない?」
「……」
則人の笑顔が止まった。
美緒も、
「あ」
と声を漏らす。
サトルが指を使って数え始めた。
「ひゃくと、ひゃく……」
そして。
「にひゃく」
則人が、ゆっくりタライ小僧を見る。
「……タライこぞう?」
「はい」
「ひゃくてんなの?」
「はい。百点です」
「ふたりなのに?」
「はい」
「……なんで?」
◇
タライ小僧は平然としていた。
「では、内訳を説明します」
「うん」
則人は真剣な顔で聞く。
「最初のガスネズミさん」
「おじさん!」
「百点です」
「やった!」
「そして、二人目のガスネズミさん」
「おねえさん!」
「こちらも百点です」
則人が指を一本ずつ立てた。
「ひゃくてんと、ひゃくてん」
「はい」
「にひゃくてん!」
「はい」
「じゃあ、にひゃくてんじゃん!」
「そこから、マイナス百点です」
「なんでー!?」
則人の声が響いた。
タライ小僧が少し頬を膨らませる。
「さっき、私を無視しました」
「むししてないよ!」
「私が採点を始めようとしたのに、そのまま行ってしまいました」
「あ!」
則人は思い出した。
おじさんを元に戻した直後。
美緒から連絡が来て、
『もうひとりいるから、ごめんねー!』
と言って、そのまま走ってきた。
「だって!」
則人が必死に訴える。
「もうひとりいたんだよ!」
「はい」
「はやくたすけにいかなきゃいけなかったの!」
「はい」
「だから、しょうがないでしょ!」
タライ小僧は少し俯いた。
「でも、悲しかったです」
「えーっ!?」
則人が頭を抱える。
「ひとだすけのためなのに、そんなのないよー!」
「悲しかったので、マイナス百点です」
「ごめんねっていったよ!」
「悲しかったです」
「あとでねっていったよ!」
「悲しかったです」
「ちゃんともどってきたよ!」
「それは今です」
「そんなー!」
美緒は口元を押さえている。
「美緒、笑ってるでしょ!」
「笑ってない!」
「わらってるよ!」
「だって……」
美緒はとうとう吹き出した。
「採点、そんな理由で百点引かれるんだもん」
咲子も呆れたようにタライ小僧を見る。
「ずいぶん個人的な採点なんだね」
「大事なことです!」
タライ小僧は譲らない。
女性が咲子へ小声で聞いた。
「……今、何が起きてるの?」
「採点でもめてます」
「誰と?」
「タライ小僧」
「見えないんだけど」
「います」
女性は少し考えた。
「……もういいや」
◇
「てんにょさん!」
則人が助けを求める。
「はい」
「なんとかして!」
天女が少し困ったように微笑んだ。
「申し訳ありません」
「え?」
「タライ小僧は、黄龍様直属の配下ですので」
則人が首を傾げる。
「ちょくぞく?」
「黄龍様から直接、お役目をいただいているということです」
「じゃあ、てんにょさんよりえらいの?」
「偉い、というのとは少し違いますが……少なくとも、私が採点を変えさせることはできません」
則人の肩が落ちる。
「そんなー!」
タライ小僧が胸を張った。
「百点です」
「にひゃくてんがいいー!」
「百点です」
「ひとだすけしたのにー!」
「それとこれは別です」
「べつじゃないよー!」
サトルが則人の袖を引いた。
「ノリちゃん」
「なに?」
「ひゃくてんでも、すごいよ」
「でも、にひゃくてんだったんだよ!」
「そうだね」
「サトルくん、どっちのみかたなの!?」
「ノリちゃん」
「じゃあ、にひゃくてんっていって!」
「それはタライこぞうがきめるから」
「サトルくーん!」
美緒がまた笑った。
◇
その頃。
地上から遠く離れた場所へ、二つの着ぐるみ状のものが昇ってきていた。
一つは、黒いドブネズミを思わせるもの。
もう一つは、白いハツカネズミを思わせるもの。
黄龍は、その二つを静かに見つめる。
やがて、黄龍の力が広がった。
二つの着ぐるみ状のものが光に包まれる。
形が崩れ、絡み合っていた因子がほどけていく。
光の中で、それぞれが別の形へと変わった。
一体から四つ。
もう一体からも四つ。
二人分。
本来なら、八枚になるはずだった。
黄龍の力による変換が終わる。
そして。
四聖獣の前に用意されたコインを見て、青龍が眉を寄せた。
「……六枚?」
白虎も数える。
「一、二、三……六」
玄武が静かに言った。
「二人分だったはずだが」
朱雀もコインを見る。
「八枚じゃないの?」
全員が同じ疑問を持っていた。
朱雀自身も、自分が原因だとは思っていない。
「二枚どこいったの?」
その問いに、黄龍が静かに答えた。
「今回は、六枚でよい」
青龍が振り返る。
「どういうことだ?」
「朱雀には、今回ガチャを回す権利を与えぬ」
「……え?」
朱雀が自分を指さす。
「私?」
「そうだ」
「なんで!?」
黄龍は朱雀を見る。
「忘れたか」
「何を?」
「許可なく地上へ降りたことを」
「……あ」
朱雀の顔が固まった。
◇
青龍が、ゆっくり朱雀を見る。
白虎も見る。
「……お前か」
青龍が言った。
「え、ちょっと待って」
白虎が六枚のコインを指さす。
「お前のせいで二枚減ったのか?」
「私も今知ったんだけど!」
「二回分だぞ!」
青龍の声が大きくなる。
「二回!」
白虎も続ける。
「分かってるってば!」
「分かってないから勝手に下へ行ったんだろ!」
「だって行ってみたかったんだもん!」
「それを勝手にやるなと言っている!」
「もう怒られたじゃない!」
「今も怒ってる!」
「また!?」
朱雀が頭を抱える。
玄武は六枚のコインを見たまま、静かにしている。
白虎がさらに続けた。
「せっかく二人分来たのに」
「そうだ」
青龍も頷く。
「八回できたはずなんだぞ」
「分かったってば!」
朱雀は頬を膨らませた。
「もう!」
怒られるのは嫌だ。
何度も同じことで責められるのも嫌だ。
でも。
朱雀は、ふと考えた。
今回の罰。
ガチャを二回、回せない。
それだけ。
(……あれ?)
朱雀は六枚のコインを見る。
(罰って、これだけ?)
もちろん、怒られるのは嫌だ。
けれど。
下界へ降りる。
人間の街を見る。
服を見る。
食べ物を見る。
面白いものをたくさん見る。
その代わりが、ガチャ二回。
(……そんなに損じゃなくない?)
朱雀の表情が、ほんの少しだけ明るくなった。
青龍がじっと見る。
「おい」
「なに?」
「今、何を考えた?」
「何も!」
「嘘つけ」
白虎も睨む。
「反省してる顔じゃなかったぞ」
「してる!」
「本当に?」
「してるってば!」
玄武がようやく朱雀を見る。
「朱雀」
「なに?」
「次は、もう少し重い罰になるかもしれぬぞ」
「……」
朱雀の顔から笑みが消えた。
「それ先に言ってよ」
青龍が頭を抱える。
「反省するところ、そこじゃないだろ!」
白虎のため息が重なった。
◇
六枚のコインが並んでいる。
青龍。
白虎。
玄武。
そして、今回は回すことのできない朱雀。
朱雀はガチャを見つめた。
「……見るだけならいいんでしょ?」
青龍が即答した。
「触るなよ」
「触らないって」
白虎も念を押す。
「絶対だぞ」
「分かったってば!」
朱雀は少し離れた。
ほんの少しだけ。
「……これくらい?」
「もっと離れろ」
「厳しくない!?」
玄武が六枚のコインを手に取る。
今回は六回。
誰に、人間から認識される資格が与えられるのか。
朱雀は回せない。
それでも、一番わくわくした顔でガチャを見ていた。
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。
ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




