第4話「セミスピーカ、あらわれる!」
第4話「セミスピーカ、あらわれる!」
内田紀人 作
「これなら、みんな――ぼくの話を聞いてくれる!」
さとるの声に呼応するように。
腹についた大きなスピーカーが、ぶるりと震えた。
次の瞬間。
ブオオオオオオン!
「うわっ!」
「な、なんだ!?」
「耳が……!」
何倍にも膨れ上がった声が、辺り一帯を揺らした。
近くにいた人たちは、いっせいに耳を塞ぐ。
「…………!」
さとるは目を丸くした。
自分でも驚くほどの大音量。
けれど。
驚きよりも先に。
胸の奥から、嬉しさが込み上げてきた。
みんなが。
自分を見ている。
◇
家でも。
学校でも。
話しかけても、最後まで聞いてもらえないことがあった。
「あとでね」
「ちょっと待って」
そう言われて。
誰かに話を遮られて。
話したかったことが、そのまま消えてしまう。
でも。
今は違う。
これだけ大きな声なら。
誰にだって届く。
「ねえ、聞いて!」
さとるは笑った。
「今日ね、学校で――!」
ブオオオオオオン!
「怪人だぁぁぁぁっ!」
「え?」
誰かが叫んだ。
「逃げろ!」
「怪人がいるぞ!」
人々が、いっせいに走り出した。
「…………」
さとるの笑顔が止まった。
せっかく。
みんなが自分を見てくれたのに。
また。
離れていく。
「待ってよ!」
ブオオオオオン!
「待ってってば!」
呼び止める声さえ、大音量になる。
人々はますます遠くへ逃げていった。
「なんで逃げるの!?」
窓ガラスが、びりびりと震える。
「ぼく、まだ話してないよ!」
それでも。
さとるには、まだ分からなかった。
聞こえないなら。
もっと大きな声で話せばいい。
それなら。
今度こそ。
「ぼくの話を――」
スピーカーが、大きく震える。
「聞いてよぉぉぉぉぉ!!」
ブオオオオオオオオオオン!
町中に。
とてつもない音が響き渡った。
◇
そのころ。
学校を出た則人は、いつものように児童館へ向かっていた。
背中にはランドセル。
その横では。
子供が持ち歩くには、かなり大きな袋が。
歩くたびに。
ごつん。
ごつん。
揺れている。
今朝も母に言われた。
「そんな大きなもの、毎日持っていかなくてもいいでしょ。家に置いていきなさい」
それでも。
則人は今日も持ってきた。
中に入っているのは。
お母さんが作ってくれたKIDの着ぐるみ。
そして。
ゴンさんから、少し早い誕生日プレゼントとしてもらった変身ベルト。
則人にとっては。
どちらも大切なものだった。
ブオオオオオオオオン!
「うわっ!?」
突然の大音量。
則人は肩をすくめ、思わず足を止めた。
「なに、今の!?」
直後。
向こうから何人もの人が走ってくる。
「逃げろー!」
「怪人だ!」
「怪人が出たぞ!」
「……怪人?」
その言葉を聞いた瞬間。
怖いと思うよりも先に。
則人は、人々が逃げてくる方向を見た。
そして。
見つけた。
「…………え?」
大きなセミのような姿。
腹には。
巨大なスピーカー。
「…………」
則人の口が、ゆっくり開く。
見間違えるはずがない。
テレビで放送された時から夢中で見て。
録画も何度も見返した。
どんな話だったか。
どんな怪人が出てきたか。
KIDがどう戦ったか。
ほとんど覚えている。
だから。
名前は。
すぐに出てきた。
「……セミスピーカ」
テレビの『ビーストギア KID』に出てきた。
あの怪人。
「すげ……」
ほんの一瞬。
則人の胸が高鳴った。
テレビの中にしかいないはずの怪人が。
目の前にいる。
本物だ。
そう思った。
その時。
ブオオオオオオオン!
「うわぁっ!」
則人は両手で耳を塞いだ。
「いたたたたっ!」
遠くにいるのに。
音が身体の奥まで響く。
足が震える。
テレビとは。
全然違った。
画面の中なら。
怪人がどれほど大きな音を出しても。
耳は痛くならない。
KIDが吹き飛ばされても。
それは画面の向こう側の出来事だ。
でも。
これは違う。
本当に。
怖い。
「怪人だ! 早く逃げろ!」
周りの人たちは走っていく。
則人だって。
逃げた方がいい。
まだ九歳。
小学四年生。
怪人と戦えるはずなんてない。
「…………」
則人は。
一歩。
後ろへ下がった。
ごつん。
「……あ」
ランドセルの横で。
大きな袋が揺れた。
則人は。
その袋を見る。
◇
中には。
お母さんが一生懸命作ってくれた。
KIDの着ぐるみが入っている。
ゴンさんの奥さんにも手伝ってもらって。
ミシンを使って。
細かいところは、一針ずつ手で縫って。
テレビのKIDを何度も見ながら。
少しずつ。
少しずつ。
作ってくれた。
完成するまでに。
テレビの『ビーストギア KID』は。
何話も先へ進んでいた。
それでも。
お母さんは作ってくれた。
そして。
その横には。
ゴンさんからもらった変身ベルト。
全部入っているから。
袋は大きい。
重い。
邪魔になることもある。
「…………」
着ぐるみを着たって。
本物のKIDになれるわけじゃない。
強くなるわけでもない。
怪人に勝てる力が。
急に手に入るわけでもない。
怖い。
逃げたい。
今だって。
足は震えている。
それでも。
則人は。
顔を上げた。
◇
怪人がいる。
みんなが逃げている。
そんな時。
KIDなら。
どうする。
「…………」
則人は。
何度も何度も見てきた。
怪人が現れた時。
怖くても。
危なくても。
KIDは。
逃げなかった。
「ぼくだって……」
袋を。
ぎゅっと握る。
どうして。
そんなことを思ったのか。
自分でも分からない。
勝てると思ったわけじゃない。
怖くなくなったわけでもない。
ただ。
これだけは。
知っている。
◇
怪人がいるなら。
ヒーローは。
立ち向かう。
◇
「ぼくだって……」
則人は。
一歩。
前へ出た。
「ヒーローになれば……」
もう一歩。
「怪人に、立ち向かえる!」
そして。
走った。
◇
逃げるためではない。
セミスピーカの方へ。
KIDになるために。
◇
足は。
まだ震えている。
胸だって。
どきどきしている。
それでも。
則人は止まらなかった。
テレビの中のKIDに。
ずっと憧れ続けてきた。
九歳の少年が。
この日。
初めて。
怪人から逃げるのではなく――。
怪人へ。
立ち向かうことを選んだ。
――つづく
――――――――――
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企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




