第18話「今度はだれの番?」 内田紀人 作
第18話「今度はだれの番?」 内田紀人 作
モズキャッチャーだった青年から抜け出した。
光とも。
影ともつかないもの。
それは、人の世界を離れ。
静かに。
黄龍のもとへ届いた。
「…………」
黄龍は、何も言わずにそれを見つめている。
やがて。
一つだった塊が。
ふるり。
と震えた。
そして――。
四つに分かれる。
一枚。
二枚。
三枚。
四枚。
現れたのは、四枚のコイン。
それを見た瞬間。
「来た!」
真っ先に声を上げたのは、朱雀だった。
そこには。
青龍。
朱雀。
白虎。
玄武。
そして、それぞれの配下である大勢の妖怪たちが集まっていた。
前とは違う。
今回は。
ここにいる全員が、このあと何が始まるのかを知っている。
そのせいで――。
「青龍さま!」
「今度こそお願いします!」
「今度こそ、うちの誰かを!」
青龍の後ろが、さっそく騒がしくなった。
「だから、私が選ぶのではない!」
「でも前回、青龍さまの配下は一人も出ませんでした!」
「言うな!」
「今回は念を込めましょう!」
「意味はない!」
「では愛を!」
「だから何の愛だ!」
白虎が吹き出した。
「まだ言ってるのか」
「笑うな!」
「いや、だってよ」
白虎は肩を揺らしながら、青龍の後ろを見る。
配下たちは、笑うどころか真剣そのものだった。
「青龍さま!」
「今度こそ!」
「お願いします!」
「だから私に頼むな!」
その横では。
朱雀と天女が――。
「ねえ、天女」
「はい?」
「見て見て!」
「何ですか?」
二人して、人の世界を覗き込んでいた。
「あの服!」
「あっ!」
天女の目が輝く。
「かわいい!」
「でしょ!?」
「前に見たものと、少し形が違いますね!」
「そうなのよ!」
「袖が広くなってます!」
「あと、あの靴!」
「あれもかわいいです!」
「今度、下界へ行けたら――」
「朱雀様」
「なに?」
後ろから。
いつもの冷静な声が飛んできた。
「始まります」
「分かってるわよ」
「先ほどから、まったくこちらをご覧になっていませんが」
「見てるわよ」
「下界を」
「…………」
「天女殿も」
「はい?」
「そろそろこちらを」
「見てますよ?」
「服を?」
「…………」
朱雀と天女が顔を見合わせる。
「……はいはい」
「分かりましたー」
また。
二人の返事が、きれいに重なった。
玄武が穏やかに笑う。
「相変わらずじゃのう」
「聞こえてるわよ!」
◇
最初は青龍。
「では、行くぞ」
コインを入れる。
ガチャッ。
その瞬間。
青龍の配下たちが、一斉に手を合わせた。
「青龍さま!」
「お願いです!」
「うちの誰かを!」
「祈る相手を間違えている!」
ぐるり。
コロン。
玉が落ちた。
青龍が手に取る。
「…………」
配下たちが息を止めた。
「どうです?」
「誰です?」
「青龍組ですか!?」
青龍が玉を開く。
「…………朱雀の配下だ」
「やった!」
朱雀側から歓声が上がった。
「朱雀組!」
「一人目!」
「おめでとうございます!」
一方。
青龍側は――。
「…………」
一瞬で静まり返った。
青龍が振り返る。
「まだ一回目だ」
「はい……」
「なぜそんな顔をする」
「いえ……」
「まだ三回ある」
「はい……」
「その返事をやめろ!」
白虎が、また吹き出した。
◇
二番目は朱雀。
「じゃあ、私ね!」
コインを入れる。
ガチャッ。
「今度もうちだったりして」
青龍が振り返る。
「余計なことを言うな!」
「何よ」
「まだ結果は出ていない!」
天女が隣から身を乗り出す。
「また朱雀様のところだったら楽しいですね」
「ね!」
「二人とも!」
青龍の声が飛ぶ。
「こっちを見るな!」
「何も言ってないじゃない」
「顔が言っている!」
朱雀は楽しそうに笑いながら、取っ手を回した。
ぐるん!
コロン!
「さて」
玉を開く。
「…………白虎の配下ね」
「よし!」
今度は白虎側が沸いた。
「白虎組!」
「来た!」
白虎が胸を張る。
「どうだ!」
青龍がじろりと見る。
「何がだ」
「いや、なんとなく」
「お前が回したわけではないだろう」
「そうだった」
青龍の後ろから。
小さな声。
「あと二回……」
「数えるな」
◇
三番目は白虎。
「よし!」
白虎がコインを入れる。
ガチャッ。
「来い!」
「白虎さま!」
「今度もお願いします!」
「さっき一人出ただろ!」
「もう一人!」
「欲張るな!」
白虎が笑いながら取っ手を回す。
ぐるん!
コロン!
玉を開いた。
「…………朱雀の配下」
「またうち!」
朱雀が声を上げた。
「二人目!」
天女も嬉しそうに手を叩く。
「すごいですね!」
「今日もうちの日かしら?」
「朱雀様」
いつもの声。
「なに?」
「先ほどから、そればかりです」
「だって二人よ?」
「当たったことと、下界の流行を見ていたことは何の関係もございません」
「分かってるわよ」
「では、下界から目を離してください」
「ちょっとくらいいいじゃない」
「天女殿も」
「はいはい」
「分かりましたー」
また。
二人の返事が重なった。
青龍が、ぼそっと呟く。
「本当に似ているな」
「聞こえてる!」
◇
そして。
最後は玄武。
四枚目のコインを手に取る。
その瞬間。
青龍の配下たちの空気が、目に見えて変わった。
「…………」
「…………」
玄武が笑う。
「何じゃ、その顔は」
一人が、おそるおそる口を開く。
「玄武さま」
「うむ?」
「お願いがあります」
青龍が、すぐに振り返った。
「やめろ」
「まだ何も言ってません!」
「分かる!」
「今度こそ青龍組を――」
「やはりそれか!」
「だって、最後ですよ!」
「私に言ってどうする!」
「青龍さま、落ち着いてください」
「誰のせいだ!」
朱雀が、くすくす笑っている。
白虎も肩を震わせていた。
「笑うな!」
「いや、すまん」
「全然すまなそうではない!」
玄武は、そんな騒ぎを気にも留めず。
のんびりとコインを入れた。
ガチャッ。
取っ手に手をかける。
「…………」
全員が待つ。
「…………」
朱雀が眉をひそめる。
「玄武」
「なんじゃ」
「早くして」
「急いでも結果は変わらん」
「それ前も言ってた!」
「今回も同じじゃ」
「長い!」
「最後の一回くらい味わわせておくれ」
「もう!」
玄武が、ゆっくりと取っ手を回す。
ぐるり。
コロン。
最後の玉が落ちた。
「…………」
青龍の配下たちが。
固唾をのんで見守る。
玄武が玉を開いた。
「おお」
「どう!?」
朱雀が真っ先に聞いた。
青龍の配下からも声が飛ぶ。
「青龍組ですか!?」
「…………」
玄武が穏やかに答える。
「わしの配下じゃな」
「…………」
青龍側。
完全に静まり返った。
「…………」
青龍も黙る。
「青龍さま……」
「言うな」
「今回も……」
「言うな」
「ゼロ――」
「言うなと言っている!」
白虎が、とうとう耐えきれず吹き出した。
「はははは!」
「笑うな!」
朱雀も笑いをこらえきれない。
「ご、ごめん……!」
「お前も笑っているではないか!」
青龍の配下の一人が。
気まずそうに、小さく呟いた。
「……次があります」
「慰めるな!」
◇
四回のガチャが終わった。
朱雀の配下が二人。
白虎の配下が一人。
玄武の配下が一人。
そして。
青龍の配下は――。
今回も。
ゼロ。
「…………」
青龍は腕を組み。
できるだけ平静を装っていた。
「青龍さま」
「なんだ」
「次こそは」
「言うな」
「もっと念を――」
「意味はない!」
「愛を――」
「だから何の愛だ!」
朱雀たちの笑い声が響いた。
その時。
「…………」
玄武が目を細める。
四つの結果。
そのうちの一つが。
ぼんやりと。
光り始めていた。
笑い声が止まる。
周囲が静かになった。
「光った」
天女が呟く。
「今回は……」
朱雀が見る。
白虎も。
青龍も。
そして。
光っていたのは――。
玄武の配下を示す玉だった。
「玄武組!」
玄武の配下たちから歓声が上がる。
「来た!」
「今度はうちだ!」
玄武は。
そんな配下たちを見ながら。
静かに笑った。
「そうか」
そして。
自分の配下たちの方へ顔を向ける。
「お前の番らしい」
「…………」
一つの影が。
ゆっくりと。
玄武の前へ進み出た。
誰なのか。
どんな妖怪なのか。
その姿は。
まだ淡い光の向こうに隠れている。
玄武が、穏やかに声をかける。
「行っておいで」
影が。
小さくうなずいた。
その身体を。
淡い光が包んでいく。
光は少しずつ強くなり。
やがて。
人の世界へ向かって伸びていった。
「いいなあ」
どこかから声がする。
「次は自分かな」
「早く人間に見てもらいたいな」
「わしも行ってみたい」
妖怪たちは。
遠ざかっていく光を、羨ましそうに見つめている。
その横で。
青龍の配下が、小さく呟いた。
「…………次こそは」
「聞こえているぞ」
「すみません!」
光は。
さらに遠く。
人の世界へ向かっていく。
誰にも気づかれず。
誰にも名前を呼ばれず。
これまでずっと。
人の目には映らなかった存在が。
今。
一人の少年と。
同じ世界へ向かっていた。
――つづく
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。
ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




