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着ぐるみモンスター  作者: 内田紀人
モズキャッチャー編

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第13話「モズキャッチャー!?」



第13話「モズキャッチャー!?」


「…………よし」


 則人は、ランドセルの横にある大きな袋をぎゅっとつかんだ。


 周りの人には見えない。


 でも。


 則人には、ちゃんと見えている。


 お母さんが作ってくれたKIDの着ぐるみ。


 ゴンさんからもらった変身ベルト。


 全部入っている、大切な袋だ。


「行かなきゃ!」


 則人は、ゲームセンターへ向かって走り出した。


     ◇


「欲しい……!」


 ガシャン!


「これも!」


 ガシャン!


「あれも!」


 モズキャッチャーの巨大なクレーンアームが、次々と景品をつかんでいく。


 ぬいぐるみ。


 箱に入ったおもちゃ。


 大きなクッション。


 さっきまで。


 あれほど欲しがっていた一体のぬいぐるみは、もう胸元に抱えられている。


 それなのに。


「もっと……!」


 モズキャッチャーの視線は、すでに次の景品へ向いていた。


「全部、欲しい!」


「ちょっと待って!」


「ん?」


 モズキャッチャーが振り返る。


 そこに。


 九歳の少年が立っていた。


「…………誰?」


「内田則人!」


 則人は胸を張る。


「小学四年生!」


「いや、学年は聞いてないけど」


「あ」


「それで、何?」


 則人はモズキャッチャーを見上げた。


 大きな翼。


 鳥のような頭。


 野球のキャッチャーマスクみたいな顔。


 胸には、景品が詰まった透明な筐体。


 そして。


 両腕には、巨大なクレーンアーム。


「やっぱり……」


 則人の目が輝く。


「モズキャッチャーだ!」


「…………知ってるの?」


「知ってるよ!」


 則人は勢いよくうなずいた。


「『ビーストギア KID』に出てたもん!」


「ビースト……?」


「KIDと戦ってた!」


「…………」


 モズキャッチャーは、怪訝な顔をした。


「何の話?」


「え?」


「俺、そんなの知らないけど」


「…………」


 則人の表情が止まる。


「知らないの?」


「知らない」


「テレビ出てたよ?」


「出てないよ」


「でも、モズキャッチャーだよ?」


「……たぶん」


「たぶん!?」


 則人は、ますます混乱した。


 テレビで見たモズキャッチャー。


 でも。


 目の前のモズキャッチャーは、そのことを知らない。


「…………」


 則人は、セミスピーカの時のことを思い出した。


 あの時も。


 テレビに出てきた怪人と同じ姿だった。


 でも。


 中にいたのは、さとる君だった。


「ねえ」


「何?」


「中に誰か入ってる?」


「は?」


「着ぐるみの中!」


「何言ってるんだ?」


「だって、さとる君の時は入ってたよ!」


「誰だよ、さとる君」


「隣のクラス!」


「知らないよ!」


「そっか!」


「何が!?」


 則人は腕を組んだ。


「うーん……」


「…………」


「じゃあ、本物の怪人?」


「知らないって!」


「自分のことなのに!?」


「俺だって急にこうなったんだよ!」


「えっ!」


 則人の目が大きくなる。


「急に?」


「そうだよ!」


「じゃあ、やっぱり着ぐるみモンスターかも!」


「何それ!?」


「やっぱり!」


「だから何なんだよ!」


 モズキャッチャーは、とうとう頭を抱えた。


     ◇


 少しして。


 則人は、モズキャッチャーが抱えているぬいぐるみに気づいた。


「あ」


「ん?」


「それ」


「これ?」


 モズキャッチャーが、ぬいぐるみを持ち上げる。


「欲しかったやつ?」


「そうだよ」


「取れたじゃん!」


「……うん」


「よかったじゃん!」


「…………」


 則人は笑った。


「じゃあ、もう終わり?」


「え?」


「欲しかったんでしょ?」


「…………」


「取れたんだから、もう帰るの?」


 モズキャッチャーは、自分が抱えているぬいぐるみを見る。


 確かに。


 欲しかった。


 何度も。


 何度も挑戦して。


 お金を使って。


 絶対に欲しいと思った。


 そして今。


 手に入っている。


「…………」


 なのに。


 モズキャッチャーの目が、横へ動いた。


「……あれ」


「ん?」


 別のUFOキャッチャー。


 その中には、大きなロボットのおもちゃが入っている。


「…………」


 モズキャッチャーのクレーンアームが、ゆっくり上がった。


「あれも欲しい」


「え?」


 ガシャン!


「うわっ!」


 巨大なアームが筐体をつかむ。


「ちょ、ちょっと待って!」


「これも欲しい!」


 バキッ!


 ガラスが割れる。


 ロボットのおもちゃをつかみ取る。


「取れた!」


「いや、取れたっていうか壊したよ!?」


「でも取れた!」


「それでいいの!?」


「欲しかったから!」


「…………」


 則人は、最初のぬいぐるみを見る。


 次に。


 ロボットのおもちゃを見る。


「じゃあ、これで終わり?」


「…………」


 モズキャッチャーの目が、また動いた。


「あっちも欲しい」


「まだあるの!?」


 ガシャン!


「これも!」


 ガシャン!


「あれも!」


「ちょっと待ってってば!」


 モズキャッチャーは止まらない。


 景品。


 お菓子。


 大きなぬいぐるみ。


 目についたものを、次々とつかんでいく。


 最初に欲しかったものは。


 もう持っている。


 それなのに。


 欲しい気持ちだけが。


 どんどん増えていく。


「…………」


 則人の顔から、少しずつ笑顔が消えた。


「なんか……変だよ」


「何が?」


「だって」


 則人は、モズキャッチャーが持っている物を指さした。


「最初に欲しかったの、それでしょ?」


「そうだよ」


「取れたよね?」


「取れた」


「じゃあ、なんでまだ取ってるの?」


「欲しいから」


「全部?」


「欲しいものは全部!」


「…………」


 則人は首を傾げた。


 そして。


 ほんの少し考える。


「じゃあさ」


「何?」


「ぼくも?」


「…………え?」


 モズキャッチャーが則人を見る。


「ぼくも取るの?」


「…………」


「もし、ぼくが欲しくなったら」


「…………」


 巨大なクレーンアームが、ゆっくり動いた。


 則人の方へ。


「えっ」


「…………」


「ちょっと」


 クレーンアームが近づいてくる。


「待って待って待って!」


 則人が後ろへ下がった。


「捕まえられる」


「なんで!?」


「欲しいものは、つかまえる!」


「ぼく物じゃないよ!」


「でも、つかまえられる!」


「意味分かんないよ!」


 ガシャン!


「うわっ!」


 則人は横へ飛びのいた。


 巨大なアームが、さっきまで則人がいた場所をつかむ。


「危ないなあ!」


「逃げるな!」


「逃げるよ!」


「つかまえる!」


「やだよ!」


 則人は店の中を走った。


 モズキャッチャーも追いかける。


 ガシャン!


「うわっ!」


 ガシャン!


「ちょっと!」


 ガシャン!


「だから待ってってば!」


 これは。


 戦いではない。


 則人は、モズキャッチャーを倒そうとしているわけではない。


 ただ。


「どうしよう……!」


 このままでは。


 もっといろんなものを、つかんでしまう。


 なんとか止めなきゃ。


 でも。


 どうやって?


 則人は走りながら、ランドセルの横へ手を伸ばした。


 そこにある。


 大きな袋。


「よし!」


 則人は急に止まった。


「ちょっと待って!」


「またそれ!?」


 モズキャッチャーも止まる。


「何だよ!」


「今からKIDになる!」


「…………は?」


 則人は胸を張った。


「だから、ちょっと待って!」


「なんで俺が待つんだよ!」


「変身中だから!」


「知らないよ!」


 則人は、大きな袋を開けた。


 もちろん。


 モズキャッチャーには、袋そのものが見えていない。


「…………」


 則人が何もない場所へ手を伸ばしているようにしか見えない。


「お前、何してるの?」


「着ぐるみ出してる!」


「何もないぞ?」


「あるよ!」


「どこに!?」


「ここ!」


「見えない!」


「えっ?」


 則人が袋を見る。


 ある。


 ちゃんとある。


「…………」


 モズキャッチャーを見る。


「ほんとに見えないの?」


「何が?」


「すっげえ!」


「何が!?」


 則人の目が輝く。


「妖怪って、やっぱりすげえなあ!」


「だから何の話だよ!」


「……って」


 則人は慌てて首を振った。


「今はそれじゃない!」


 胸を張る。


「いくよ!」


「何が?」


「配信開始!!」


 パチーン!


 指を鳴らした。


 その瞬間。


 どこからともなく、あの明るい歌声が流れ始めた。


♪ 今日の変身は、内田則人くん。

  お、き、が、え、上手かな~♪


「…………」


 則人の顔が、一気に嫌そうになった。


「えっ、またこの曲!?」


♪ お、き、が、え、上手かな~♪


「この前やめてって言ったじゃん!」


 着ぐるみに足を入れる。


「っていうか、誰が歌ってるの!?」


 腕を通す。


♪ お、き、が、え、上手かな~♪


「ぼく、もう子供じゃないからね!」


 頭をかぶる。


「小学四年生だから!」


 ベルトを巻く。


「……あれ?」


 少し曲がった。


「ちょっと待って」


 直す。


「よし!」


 則人は、いつも通り。


 しっかり時間をかけて、KIDへ着替えた。


「お待たせ!」


「…………」


 モズキャッチャーは。


 ぽかん。


 と、則人を見ていた。


「なに?」


「…………」


「どうしたの?」


「いや……」


「?」


「一瞬だったぞ?」


「え?」


「今」


 モズキャッチャーが目をぱちぱちさせる。


「着替えるって言ったよな?」


「うん」


「その次の瞬間には、それだったぞ?」


「…………?」


 則人は自分のKID姿を見る。


「ちゃんと着替えたよ?」


「いつ!?」


「今!」


「一瞬だったって!」


「そんなわけないよ!」


「いや、本当に一瞬だった!」


「歌も最後まで聞いたよ?」


「歌!?」


「えっ、歌も聞こえてないの!?」


「何の歌だよ!」


「ええっ!?」


 則人も。


 モズキャッチャーも。


 しばらく、お互いの顔を見つめた。


「…………」


「…………」


 則人が先に首を傾げる。


「変なの」


「こっちのセリフだよ!」


 その時。


 モズキャッチャーの目が、ふとゲームセンターの外へ向いた。


「…………あ」


「ん?」


 遠く。


 建物の向こう。


 高い場所に、大きな看板が見える。


 派手な色。


 大きな形。


「……あれ」


「え?」


 モズキャッチャーの翼が、ゆっくり広がった。


「あれも欲しい」


「…………え?」


 ばさっ!


 大きな翼が風を起こす。


「ちょっと待って!」


 モズキャッチャーの身体が、ふわりと浮いた。


「取りに行く!」


「持って帰れないでしょ!?」


「取ってから考える!」


「考えてから行こうよ!」


 ばさっ!


 モズキャッチャーが外へ飛び出した。


「待ってー!」


 則人も慌てて追いかける。


 どうやって止めるのか。


 まだ、全然分からない。


 でも。


 このまま行かせたら。


 きっと。


 また何かをつかんでしまう。


「モズキャッチャー!」


 則人は空へ向かって叫んだ。


「それ、ほんとに持って帰れるのー!?」


 ――つづく


――――――――――


『ビーストギア』


本物の怪人と戦う、もう一つのヒーローの物語。


『着ぐるみモンスター』とは違う視点から描かれる『ビーストギア』も、ぜひお楽しみください。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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