閑話「はじめてのガチャとはじめての採点」
閑話「はじめてのガチャとはじめての採点」
内田紀人 作
さとるから抜け出したものが、黄龍のもとへ届いた。
光とも影ともつかないそれは。
黄龍の前で。
四つに分かれ。
四枚のコインになった。
「来た!」
真っ先に声を上げたのは朱雀だった。
そこには。
青龍。
朱雀。
白虎。
玄武。
そして。
それぞれの配下である、大勢の妖怪たちが集まっていた。
全員が見つめているのは。
一台のガチャ。
「これを一人一回?」
「ああ」
黄龍が答える。
「誰が出るかは?」
「回してみれば分かる」
その一言で。
配下たちが、一斉に騒ぎ始めた。
「青龍さま! 私をお願いします!」
「いや、私を!」
「人間に見てもらいたいです!」
「私が選べるわけではない!」
青龍が顔をしかめる。
「でも回すのは青龍さまですよね?」
「回すだけだ!」
「念を込めてください!」
「意味はない!」
「愛を!」
「何の愛だ!」
白虎が吹き出した。
「人気者だな」
「お前の後ろも見てみろ」
「ん?」
白虎が振り返る。
「白虎さま! 次は俺を!」
「私です!」
「ぼくも!」
「お前たちもか!」
口では呆れている。
けれど。
白虎自身も、かなり楽しそうだった。
◇
一方。
朱雀と天女は。
ガチャを眺めながら、すでに別の話で盛り上がっていた。
「これ、もっと飾ったらかわいくない?」
「分かります! 下界で最近流行ってる色を使ったら――」
「そうそう! それに、この前見た服!」
「あの袖がふわっとした?」
「あれ!」
「かわいかったですよね!」
「あと靴も――」
「そろそろ落ち着いたらどうです」
冷静な声が飛んだ。
「またそうやって」
朱雀が口を尖らせる。
「少しくらいいいじゃないですか」
「今日は何をしに集まったんです?」
朱雀と天女が顔を見合わせる。
「……はいはい」
「分かりましたー」
二人の返事が。
きれいに重なった。
「本当に似ておるのう」
玄武が笑う。
「聞こえてるわよ!」
朱雀が振り返った。
◇
最初は青龍。
「では行くぞ」
コインを入れる。
ガチャッ。
その瞬間。
青龍の配下たちが祈り始めた。
「青龍さま!」
「うちの誰かを!」
「だから私に言うな!」
ぐるり。
コロン。
青龍が玉を開いた。
「……忘れ物小僧だ」
「やった!」
白虎側から歓声が上がった。
「白虎組だ!」
「忘れ物小僧!」
「ぼく?」
本人が自分を指さす。
「お前だ!」
白虎が大喜びする。
その後ろ。
青龍の配下から。
小さな声。
「青龍さま……」
「なんだ」
「うちじゃなかったですね」
「私に言うな」
◇
二番目は朱雀。
「今度は私!」
ガチャッ。
ぐるん!
コロン!
朱雀が玉を開く。
「天女!」
「朱雀さま!」
二人が。
ぱっと手を取り合った。
朱雀の配下たちも大盛り上がり。
「朱雀組きた!」
「天女さま、おめでとう!」
天女の目が輝く。
「下界で見えるようになったら、お洋服を――」
「見に行きましょう!」
「はい!」
「それから髪型!」
「小物も!」
「まだ二回残っていますよ」
また。
冷静な声が飛んだ。
朱雀と天女が止まる。
「またそれ!」
「ちょっとくらい喜ばせてよ」
「喜ぶなとは言っていません」
「じゃあいいじゃない」
「先に全部終わらせましょう」
「……はいはい」
「分かりましたー」
青龍が。
ぼそっと言った。
「やはり似ている」
「聞こえてる!」
◇
三番目は白虎。
「よし、来い!」
ガチャッ。
ぐるん!
コロン!
白虎が玉を開く。
「……狐?」
今度は。
玄武の配下たちが沸いた。
「玄武組!」
「やった!」
玄武は穏やかに笑う。
狐だけは。
騒ぎの中で。
静かに首を傾けていた。
「俺が回したのに玄武のところか」
「それがガチャじゃろう」
白虎の後ろから声が飛ぶ。
「白虎さま、自分のところ引いてくださいよ!」
「一人出てるだろ!」
「青龍さまが引いたやつじゃないですか!」
「細かいな!」
青龍が横から言う。
「誰が回したかは関係ないのだろう?」
「青龍は自分のところゼロだからって、急に冷静になるな!」
「関係ない!」
◇
最後は玄武。
青龍の配下たちまで。
必死になっていた。
「玄武さま!」
「青龍組をお願いします!」
「なぜ玄武に頼む!」
青龍が振り返る。
「だって青龍さま、もう回し終わりましたし」
「完全にランダムだと言っているだろう!」
「なら可能性はありますよね?」
「……それはそうだが」
朱雀が笑う。
「もう誰でもいいから、自分の配下に出てほしいんでしょ?」
「違う!」
玄武は笑いながら。
コインを入れた。
ガチャッ。
取っ手を握る。
「…………」
朱雀が待つ。
白虎も待つ。
青龍も。
配下たちも。
「玄武」
「なんじゃ」
「早く」
「初めての最後の一回じゃぞ。少しくらい味わってもよかろう」
「長い!」
「急いでも変わらんよ」
玄武が。
ゆっくり回す。
ぐるり。
コロン。
最後の玉が落ちた。
玄武が中を確かめる。
すると。
朱雀の配下から。
例の冷静な声。
「私のようですね」
「また朱雀組!」
「二人目!」
朱雀と天女も。
また大喜び。
「今日はうちの日ね!」
「ですね!」
「お二人とも、騒ぎすぎです」
「またそうやって!」
「今日はいいじゃない!」
「はいはい。喜ぶのは結構ですが、少し落ち着いてください」
「分かりましたー」
「はいはい」
また。
二人の返事が重なった。
◇
四回のガチャが終わった。
朱雀の配下が二人。
白虎の配下が一人。
玄武の配下が一人。
青龍の配下は――。
ゼロ。
「青龍さま」
「言うな」
「次はお願いします」
「私に言うな!」
「四回あったのに」
「私が決めたわけではない!」
「次はもっと念を――」
「意味はない!」
「愛を――」
「だから何の愛だ!」
朱雀が。
腹を抱えて笑っている。
その時。
四つの結果のうち。
一つが。
淡く光った。
「…………」
狐だった。
周囲の妖怪たちが。
静かになる。
「いいなあ」
「次は自分かな」
「早く人間に見てもらいたいな」
玄武が狐を見る。
「行っておいで」
狐は。
少しだけ。
首を傾けた。
光が。
人の世界へ伸びていった。
◇
その頃。
さとるが元の姿へ戻ったあとの、人の世界。
天狗の姿が見えなくなった直後だった。
ひゅうううう。
「ん?」
ゴン!
「いてっ!」
まだKID姿の則人の頭に。
たらいが落ちた。
「なにすんだよー!」
目の前には。
たらいを抱えた小僧がいる。
「採点しまーす!」
「なんの!?」
たらい小僧が。
たらいを、ぽんと叩く。
「内田則人くん、本日の採点!」
「えっ、ぼく!?」
「まず普段の行い、三十点!」
「いいの? 悪いの?」
「今回の怪人事件、五十点!」
「おお!」
「ここまで八十点!」
則人の目が輝いた。
「じゃあ八十枚?」
「まだです!」
「まだあるの!?」
たらい小僧が。
たらいを高く掲げた。
「四聖獣採点!」
「四聖獣!?」
則人の目が。
さらに輝いた。
「青龍!? 朱雀!? 白虎!? 玄武!?」
「はい!」
「会える!?」
「採点します!」
「そこ答えてよ!」
たらい小僧は。
どこからともなく届く。
四聖獣の評価に耳を澄ませる。
「ふむふむ」
「何点?」
「なるほど」
「何点なの?」
「おお」
「教えてよ!」
「ふむ」
「ねえ!」
則人が。
もう待ちきれないという顔で。
たらいをのぞき込む。
「見ないでください!」
「だって気になる!」
「最終得点――」
「うん!」
「決定!」
たらい小僧が。
たらいを叩いた。
じゃらじゃらじゃら!
「うわっ!」
コインが飛び出した。
「落ちる! 落ちるって!」
則人は。
慌てて地面へしゃがみ込み。
一枚。
また一枚。
必死に拾い集める。
「これ、全部ぼくの?」
「今回の得点分です!」
「何に使うの?」
「それは――」
たらい小僧が。
ぬらりひょんを指さした。
「ぬらりひょんに聞いてくださーい!」
「え?」
次の瞬間。
たらい小僧は。
そのまま姿を消した。
「…………」
則人が固まる。
「説明してから帰ってよ!」
返事はない。
「もう!」
則人は。
コインを抱えたまま。
ぬらりひょんを見る。
「これ何?」
「お前の行いの結果じゃ」
「これ」
則人は手の中のコインを見る。
「いっぱい集めたら、何かある?」
ぬらりひょんが。
少し目を細める。
「集めるつもりか?」
「うん!」
即答だった。
「なら」
ぬらりひょんが笑う。
「決められた数まで集めてみろ」
「集めたら?」
「神様に頼んでやる」
「…………」
則人が固まった。
「神様?」
「そうじゃ」
「神様って、あの神様!?」
「どの神様じゃ」
「本物の!」
「まあ、本物じゃな」
「すっげえ!」
則人は身を乗り出した。
「何をお願いするの!?」
ぬらりひょんは。
さらりと言った。
「お前を」
「うん!」
「本物のヒーローにしてやってくれ、とな」
「…………」
則人は。
完全に固まった。
「…………ほんとに?」
「うむ」
「本物のヒーロー?」
「そうじゃ」
「ほんとにほんと?」
「何度聞くんじゃ」
則人は。
手の中のコインを見る。
さっきまで。
何なのかも分からなかった。
ただの不思議なコイン。
それが。
急に。
宝物に見えた。
「何枚集めればいい?」
「それは、まだ先の話じゃ」
「えー!」
「まずは集めろ」
「教えてよ!」
「まだよい」
「ずるい!」
それでも。
則人はすぐに笑った。
「約束だよ!」
「うむ」
「絶対だよ!」
「分かった分かった」
「ほんとに?」
「しつこい!」
則人は。
コインを大事そうに握る。
「よーし!」
拳を高く上げた。
「いっぱい集める!」
ぬらりひょんは。
そんな則人を見て。
静かに笑った。
◇
この日から。
則人に。
新しい目標ができた。
怪人事件が終わるたび。
増えたコインを数えて。
「今日はいっぱい出た!」
「今回は少なかった!」
「またヒーローに近づいた!」
そう言って。
ゴンさんに報告するようになる。
そして。
いつか。
本当に。
決められた数を集めた時。
この約束の意味を。
則人は知ることになる。
それは。
まだ。
ずっと先の話だった。
――閑話「はじめてのガチャとはじめての採点」 おわり
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。
ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




