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着ぐるみモンスター  作者: 内田紀人
フレイムピジョン編

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第10話 朱雀が出ない!?



第10話 朱雀が出ない!?


下界から昇ってきた因子の塊が、四聖獣たちのいる上界へと届いた。


淡く揺らめいていた塊は、やがて小さく形を変えていく。


ころん。


ころん。


ころん。


ころん。


現れたのは、四枚のガチャコインだった。


「来た!」


誰よりも早く声を上げたのは、やはり朱雀だった。


その一声を待っていたかのように、周囲が一気に騒がしくなる。


「四枚だ!」


「今回も四回!」


「今度こそうちだ!」


「頼むぞー!」


青龍、白虎、朱雀、玄武。


四つの陣営から集まった大勢の配下たちが、ガチャを囲むようにして一斉に声を上げていた。


すでに下界へ降り、人間から認識される資格を得た者もいる。


まだ一度も選ばれていない者もいる。


自分が選ばれるのか。


同じ陣営の誰かが選ばれるのか。


あるいは、今回は一枠も来ないのか。


誰にも分からない。


だからこそ、ガチャの日は毎回こうなる。


静かに見守る、などという選択肢は、少なくともこの場に集まった者たちにはなかった。


そして、その騒ぎの中心にいるのは今回も――。


「今度こそ、私自身が当たるかもしれないわよ!」


朱雀だった。


「まあ!」


その隣で、天女がぱっと顔を輝かせる。


「もし朱雀様がお選びになられましたら、また下界へ?」


「もちろん行きたいわよ! 今度はもっとゆっくり見たいもの。服も見たいし、美緒にも――」


「朱雀様」


執事の静かな声が、二人の会話へ割って入った。


「まだ当選しておりません」


「分かってるわよ」


「そして、当選したからといって、自由に遊びに行ってよいわけでもございません」


「それも分かってるってば」


「本当にお分かりですか?」


「分かってますー」


朱雀が少し口を尖らせる。


すると天女まで、


「分かっておりますー」


と同じ調子で続けた。


執事は二人を見比べ、それ以上は何も言わずに小さく息を吐いた。


その様子を見ていた白虎が、鼻を鳴らす。


「始まる前からそれかよ」


朱雀が振り返る。


「何よ」


「まだ一枚も回してないだろ」


「だから楽しみにしてるんじゃない」


「どうせ今回も、朱雀んところが一つくらいは出るって思ってるんじゃないだろうな」


その問いに、朱雀はためらうことなく胸を張った。


「だって今まで出てるじゃない」


「そこなんだよ!」


白虎の声が会場に響き、周囲の配下たちから笑いが起きる。


「また始まった!」


「白虎様、それ前にも言ってましたよ!」


「朱雀ばっかり出るって!」


「うるさい!」


白虎が配下たちを振り返ると、さらに笑い声が大きくなった。


青龍はそんな騒ぎを横目に、いつも通り冷静だった。


「前回が四陣営一枠ずつだったからといって、今回も同じになるとは限らない」


「そうじゃの」


玄武も穏やかに頷く。


「出るまで分からぬからこそのガチャじゃ」


朱雀は目の前の四枚を見ながら笑った。


「でも、四枚もあるんだから一枚くらいは出るでしょ」


白虎が眉を上げる。


「……そういうこと言ってると、本当に出なくなるぞ」


「今まで出てるから大丈夫よ」


「だから、その自信はどこから来るんだよ」


「実績」


「腹立つなあ!」


再び、どっと笑いが広がった。


最初の一枚を手に取ったのは白虎だった。


「よし。じゃあ俺からだな」


途端に白虎陣営が沸き立つ。


「白虎様ー!」


「お願いします!」


「今度こそうちを!」


「頼みます!」


「頼まれても、俺が決められるわけじゃないからな!」


そう言いながら、白虎がガチャへコインを入れる。


そして勢いよく回した。


がちゃがちゃがちゃ――。


さっきまで好き勝手に声を飛ばしていた配下たちも、結果が出る瞬間だけは少し静かになる。


全員の視線が、ガチャへ集まった。


そして――。


最初の結果は、青龍陣営だった。


ほんの一瞬の間。


その直後、青龍の配下たちが爆発したように沸いた。


「出たあああああ!」


「青龍様!」


「こっちだ!」


「やった!」


あちこちで歓声が上がる。


今回選ばれたのは、もともと青龍陣営にいた既存の配下一体。


新しく生まれたわけではない。


ただ、その一体に新たに下界へ降り、人間から認識される資格が与えられたのだ。


白虎はガチャを見たまま、口をへの字に曲げる。


「……俺が回したのにな」


青龍は即座に返した。


「だから、誰が回すかと結果は関係ない」


「分かってるよ!」


その横で、朱雀はまだ余裕たっぷりだった。


「まあ、一枚目だし」


天女も頷く。


「まだ三枚ございます」


「そうよ。まだ三枚あるもの」


朱雀陣営からも声が飛ぶ。


「次です、朱雀様!」


「まだまだ!」


「今度はこっちです!」


「そうそう!」


朱雀も機嫌よく頷いた。


二枚目。


今度は朱雀がコインを手に取る。


「じゃあ、次は私ね!」


朱雀陣営から一斉に歓声が上がった。


「朱雀様ー!」


「お願いします!」


「今度こそ!」


「朱雀様ご自身でも!」


「それもいいわね!」


朱雀がさらに乗り気になったところで、執事が口を開こうとする。


「朱雀様」


「分かってるわよ、執事!」


まだ何も言っていない。


執事は一度口を閉じた。


朱雀は満足そうにガチャを回す。


がちゃがちゃがちゃ――。


「来い!」


「朱雀様!」


「こっち!」


朱雀陣営の配下たちが身を乗り出す。


やがて示された二枚目の結果は――。


白虎陣営。


「おおおおおおっ!」


今度は白虎側が大きく沸いた。


「白虎様!」


「来た!」


「うちだ!」


「やったぞ!」


白虎自身も反射的に拳を握る。


「よし!」


だが。


そのまま朱雀と目が合った。


朱雀はガチャの前で、じっと結果を見ている。


「……」


白虎の上がった拳が、少しずつ下がっていった。


「……まあ、一つ目だしな」


朱雀が振り向く。


「何よ、その言い方」


「いや、別に」


「喜べばいいじゃない」


「喜んでるよ」


「今、急に声小さくなったじゃない」


「気のせいだ!」


白虎陣営の配下たちまで、少し顔を見合わせ始めた。


「……白虎様」


「何だ!」


「もっと喜んでもよろしいでしょうか?」


「喜べ! 当たったんだから!」


「やったー!」


「白虎様ー!」


許可を得た配下たちから、改めて大歓声が上がる。


朱雀はその様子をじっと見ていた。


天女がそっと横から声をかける。


「朱雀様」


「大丈夫よ」


「まだ二枚ございます」


「そう。まだ二枚あるもの」


朱雀はすぐに胸を張り直した。


「今まで一枚も出なかったことなんてないんだから」


白虎の眉がぴくりと動く。


「それ、自分で言うのか?」


「事実でしょ?」


「……まあ、事実だけど」


三枚目のコインを手に取ったのは青龍だった。


すでに一枠出ているというのに、青龍陣営の勢いはまるで衰えていない。


「青龍様、もう一回!」


「二つ目!」


「来い!」


白虎側からすぐに野次が飛ぶ。


「もう一つ出てるだろ!」


朱雀陣営も負けていない。


「今度はこっち!」


「朱雀様のところ!」


「お願いします!」


青龍は周囲を見渡した。


「私に頼んでも結果は変わらないぞ」


「分かってます!」


「でもお願いします!」


「それでは分かっていないだろう」


青龍はそう言いながらも、ガチャへコインを入れた。


がちゃがちゃがちゃ――。


そして。


三枚目の結果も、青龍陣営。


「出たああああああ!」


先ほど以上の歓声が上がった。


「二つ目!」


「青龍様ー!」


「今日はうちの日だ!」


「やった!」


青龍自身も、さすがに一瞬だけ目を見開く。


「……本当に二つ目か」


白虎がすぐに振り向いた。


「お前、その落ち着き何なんだよ!」


「私が選んだわけではない」


「それ、さっき俺も言った!」


騒ぐ二人の横で。


朱雀が、急に静かになっていた。


「……」


天女がそっと顔を覗き込む。


「朱雀様?」


「まだ一枚あるわ」


「はい」


「最後に出るのよ」


「はい」


「最後って、一番目立つじゃない」


「はい」


「だから、たぶん最後なのよ」


さっきまで「四枚もあれば一枚くらいは」と言っていた余裕は、少しずつ別のものへ変わり始めていた。


執事が淡々と口を開く。


「朱雀様」


「何よ」


「ガチャにそのような演出意図はございません」


「分かってるわよ!」


周囲から笑いが起こる。


それでも朱雀陣営の配下たちは、まだ諦めていない。


むしろ残り一枚になったことで、声は先ほど以上に大きくなっていた。


「まだ一枚ある!」


「最後だ!」


「朱雀様、まだ終わってません!」


「今度こそ!」


「絶対こっち!」


「そうよ!」


朱雀も勢いを取り戻す。


「まだ終わってないわ!」


最後の一枚を手に取ったのは玄武だった。


すると、今度は玄武陣営からも声が上がる。


「玄武様!」


「こっちもまだ出てません!」


「お願いします!」


玄武は騒ぐ配下たちを見渡し、穏やかに笑った。


「さて。どこが出るかの」


朱雀が、ほとんどガチャへ顔を寄せるように身を乗り出す。


「朱雀!」


玄武が名前を呼ぶ。


「おぬしが決めるのではないぞ」


「分かってるってば!」


白虎が腕を組んだ。


「これで朱雀が出たら、本当に毎回出ることになるな」


朱雀が勢いよく振り向く。


「何よ。出ちゃ悪いの?」


「そうは言ってない!」


「前は散々、私ばっかり出るって言ってたじゃない!」


「だから今は何も言ってないだろ!」


「もう言ってるじゃない!」


「感想だよ!」


「同じよ!」


青龍が横から静かに言う。


「まだ結果は出ていない」


玄武も頷いた。


「まずは回すとしよう」


最後のコインが、ガチャへ入る。


玄武がゆっくりと回した。


がちゃがちゃがちゃ――。


それまで騒ぎ続けていた会場から、声が消えた。


青龍陣営。


白虎陣営。


朱雀陣営。


玄武陣営。


大勢の配下たちが、一斉にガチャを見つめる。


朱雀は両手をぎゅっと握っている。


天女も、その隣でほとんど同じ姿勢になっていた。


執事だけが、いつもと変わらない顔をしている。


やがて。


最後の結果が示された。


白虎陣営。


「…………」


朱雀。


「…………」


白虎。


「…………」


天女。


ほんの一瞬。


あれほど騒がしかった会場全体が、嘘のように静まり返った。


青龍が結果を確認する。


玄武も静かに見る。


そして執事が、いつもの調子で告げた。


「白虎様の陣営でございます」


白虎の配下たちが、喜びかける。


「やっ――」


だが、途中で止まった。


何人かが、そっと朱雀を見る。


朱雀はガチャをじっと見つめたまま動かない。


別の白虎配下が、今度は白虎本人を見た。


「……白虎様」


「何だ」


「喜んで……いいんですよね?」


「当たり前だろ!」


「でも……」


また朱雀を見る。


白虎までつられて朱雀を見た。


さすがに居心地が悪くなってきたらしい。


「……いや」


頭をかきながら、先に口を開く。


「俺が決めたわけじゃないぞ」


朱雀が、ゆっくり顔を上げた。


「何も言ってないけど?」


「その顔で言ってるだろ!」


「何を?」


「『今まで散々、朱雀ばっかり出るって言ってたくせに』って!」


朱雀は間髪入れずに答えた。


「思ってるわよ!」


「やっぱり!」


堪えきれなくなったように、会場中から大きな笑い声が上がる。


白虎は頭を抱えた。


「だから俺が選んだわけじゃないって!」


青龍が淡々と口を挟む。


「今まで朱雀が言っていたことと同じだな」


「青龍、お前は黙ってろ!」


「私は事実を言っただけだ」


玄武も穏やかに頷いた。


「これで、偏ることそのものは珍しくないと分かったのう」


「分かってるよ!」


白虎が叫ぶ。


「分かってるから気まずいんだよ!」


白虎陣営の配下たちは、まだ完全には喜び切れていない。


「じゃあ……」


「白虎様」


「本当にいいんですよね?」


「何回言わせるんだ! いいって言ってるだろ!」


「やったあああああ!」


今度こそ、白虎陣営から大歓声が上がった。


「二つだ!」


「白虎陣営二枠!」


「やった!」


「下界だー!」


青龍陣営も負けじと騒ぐ。


「こっちも二つだ!」


「二対二!」


「今回は青龍と白虎だ!」


その一方で。


朱雀陣営には、別の種類のざわめきが広がっていた。


「……ゼロ?」


「朱雀様のところ、ない?」


「一枚も?」


「今まで毎回出てたのに?」


朱雀は、ゆっくりとガチャへ歩み寄った。


そして中を覗き込む。


「……もう一枚ない?」


執事が即答した。


「ございません」


「本当に?」


「四枚すべて使用いたしました」


朱雀は反対側へ回って、もう一度覗こうとする。


「どこかに引っかかってない?」


「おりません」


すると、天女まで朱雀の隣へ並んだ。


「奥の方に一枚くらい……」


「天女殿もおやめください」


「はい」


「はい」


朱雀と天女が同時に返事をした。


それでも朱雀は、まだガチャから目を離さない。


「……初めてじゃない?」


今度は朱雀陣営だけでなく、周囲も少し静かになった。


これまで。


どれだけ結果が偏っても。


他の陣営から何度文句を言われても。


朱雀陣営だけは、なぜか毎回一枠以上出ていた。


いつの間にか、朱雀本人だけでなく周囲まで、


――どうせ今回も朱雀は出る。


そう思うようになっていた。


だが今回は。


青龍、二枠。


白虎、二枠。


玄武、ゼロ。


そして。


朱雀、ゼロ。


「……本当にゼロだ」


朱雀がぽつりと呟く。


その声を聞いて、白虎が気まずそうに視線をそらした。


だが、逃げ切れるはずもない。


「白虎」


「何だよ」


「二つ出たわね」


「……出たな」


「よかったわね」


「……おう」


「前は私のところが多く出たら、すっごく文句言ってたわよね」


「分かってる!」


「『また朱雀か!』って」


「覚えてるよ!」


「『出すぎだろ!』って」


「悪かったって!」


周囲からまた笑いが起きる。


朱雀も、さっきまで固まっていたのが嘘のように少し笑った。


「じゃあ、今回はちゃんと喜べば?」


白虎が一瞬、目を瞬く。


「……いいのか?」


「当たったんだから、いいに決まってるじゃない」


「お前、意外と――」


「でも次に私が二つ出ても、文句言わないでよ」


「それとこれとは別だろ!」


「別じゃない!」


「そこは別だ!」


「別じゃありません!」


朱雀と白虎の声が、会場中へ響き渡る。


青龍は、やれやれとでも言いたげに首を振る。


玄武は、二人のやり取りを楽しそうに眺めていた。


そして朱雀の横では、天女がまだガチャを見ている。


「朱雀様」


「何?」


「次は出ますでしょうか」


朱雀も、もう一度ガチャを見る。


「出るわよ」


間髪入れず、執事が口を挟んだ。


「分かりません」


朱雀が振り向く。


「そこは『出ます』って言ってよ!」


「ガチャでございますので」


「夢がない!」


「公平であることの方が大切でございます」


朱雀は頬を膨らませた。


すると天女が、そっと彼女へ声をかける。


「では、次に朱雀様がお選ばれになったときのお話だけでも」


朱雀の顔が一瞬で明るくなる。


「そうね! 次に私が当たったら――」


「朱雀様」


「まだ何も言ってないじゃない!」


「おっしゃる内容が予想できますので」


再び、会場中に笑いが広がった。


今回選ばれたのは、青龍陣営の既存配下二体と、白虎陣営の既存配下二体。


新しく妖怪が生まれたわけではない。


以前からそれぞれの陣営にいた彼らが、新たに下界へ降り、人間から認識される資格を得たのだ。


結果は、青龍二枠。


白虎二枠。


玄武はなし。


そして、これまで毎回何かしら当たっていた朱雀も――今回は、なし。


当選を祝って騒ぐ青龍と白虎の配下たち。


今回は出番のなかった玄武の配下たち。


初めての「ゼロ」に、まだ少し納得しきれていない朱雀陣営。


その真ん中で、朱雀は腕を組み、ほんの少しだけ不満そうな顔をしていた。


白虎が横目で見る。


「……そんなに気にすんなよ。次は出るだろ」


朱雀がじろりと白虎を睨んだ。


「二つ出た人に言われたくない」


「だから気まずいんだよ!」


またしても、大きな笑い声が響き渡った。


前回は四陣営から一枠ずつ。


今回は二陣営に二枠ずつ。


どうやら、このガチャは本当に先が読めないらしい。


だからこそ。


次は自分かもしれない。


そう思う者たちが集まる限り――。


四聖獣ガチャが静かに終わる日は、まだまだ来そうになかった。


――つづく。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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