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着ぐるみモンスター  作者: 内田紀人
フレイムピジョン編

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第2話「今日ね、図書館で」

『着ぐるみモンスター』 コヨーテライダー編


第2話「今日ね、図書館で」


「ただいま! 今日ね、図書館で――」


 店へ入るなり話し始めた則人に、ゴンさんは皿を拭いていた手を止めた。


「おう。話は聞くから、まず手を洗ってこい」


 則人の口が、開いたまま止まる。隣で悟が吹き出した。


「ほら、まだ話せない」


「分かってるよ」


 帰り道で考えていた話の出だしは、そこでいったんお預けになった。二人は荷物を置いて手洗いへ向かう。則人が袖をまくっている間にも、厨房からは食器の触れ合う音が聞こえ、その向こうで誰かが笑った。


 図書館では少し響いただけで気になった声も、この店では料理を運ぶ声や注文に混ざっている。早く戻って話したくて、則人は洗った手の水気を丁寧に拭き取った。


「おかえり、則ちゃん。悟君も」


 席へ向かう途中、飲み物を運んでいた美緒が二人を見つけた。笑って頷いた拍子に、頭につけた猫耳が小さく揺れる。


「美緒ちゃん、今日ね」


「うん、聞く聞く。だから、まず座ろうか」


「また?」


「そこに立ってたら、料理が通れないでしょ」


 お盆を示され、則人は慌てて脇へ寄った。悟はもう先に席へ向かい、こちらを見て笑っている。


 その少し向こうでは、ジコンとミドリが食事をしていた。二人に気づいたジコンが、箸を持っていない方の手を上げる。


「図書館に行ってたの?」


「うん。面白いこと、教えてもらった」


「へえ。何を?」


「これから話すところ」


 則人が答えると、ミドリが笑った。


「じゃあ、私たちも聞かせてもらおうかな」


 『ビーストギア』の作者がいることに驚いていたのは、最初のうちだけだった。今では店で顔を合わせれば挨拶をするし、ゴンさんとの話が始まれば、しばらく終わらないことも知っている。


 今日も、ジコンの席からは棚の「光の巨人」がよく見えた。ゴンさんが皿を拭きながらそちらへ目をやるのを見て、則人は、二人がまた何かの話をしていたのだろうと思った。


     ◇


 美緒が麦茶を置いてくれたところで、則人はようやく話し始めた。


「今日、図書館でお兄さんに注意されたんだ」


「あら。何したの?」


 聞かれて、則人は少し口をすぼめる。


「ちょっと、声が大きくなって」


「二人で?」


「うん。でも、そのあと、図鑑の見方を教えてくれたんだよ」


 早くその先を伝えたくて、則人は身を乗り出した。悟も横から説明を足す。


「コウモリのこと、話してたんだ。鳥なのか、ネズミなのかって」


「それで意見が分かれたわけね」


 近くの席を片づけていた咲子が、重ねた皿を持ち上げながら言った。


「則ちゃんは、どっちだと思ったの?」


「……恐竜」


 咲子の手が一瞬止まった。


「恐竜?」


「空を飛ぶ恐竜の生き残りかもしれないって。映画に出てたのと、羽が似てたから」


「小さくなって、生き残ったんだってさ」


 悟が付け加えると、則人はすぐに顔を向けた。


「その時は、そう思ったんだよ」


「うん。だから、その話」


 からかわれたのかと思ったが、悟も楽しそうに思い出しているだけらしい。則人はもう一度皆の方を向き、どの辺りが似ていたのか、両手で翼の形を作ってみせた。


 カウンターの中で、ゴンさんが口元を緩める。


「なるほどな。鳥の羽根より、膜みたいに見えたんだな」


「そう。でも、コウモリとは違うんだって。映画のは翼竜で、恐竜とも違うんだよ」


「そこまで教えてくれたの?」


 ミドリの問いに、二人は揃って頷いた。


「同じ映画に出てても、同じ仲間じゃないんだって」


「確かに、ああいう映画だと一緒に出てくるからね」


 ジコンは棚のフィギュアを見てから、二人へ目を戻した。


「僕も子供の頃は、まとめて恐竜だと思ってたな。名前を調べてから、別の仲間なんだって知った」


「時根さんも?」


「うん」


 自分たちだけではなかったと分かり、則人は少し安心した。


「でも、お兄さん、似てるって気づいたのは、いいところを見てたって言ってくれたよ」


「間違いだ、で終わらせなかったんだね」


 ミドリが言うと、則人は頷いた。


 注意された時は、青年の顔を見るのも気まずかった。それでも、そのあと図鑑を一緒に覗き込んだら、間違えていたことより、聞いてみたいことの方が増えていったのだ。


     ◇


「それでね。コウモリの翼って、指なんだよ」


 則人は片手を机へ置き、五本の指を広げた。悟もすぐに自分の手を並べる。


「腕と、長くなった指。写真をよく見たら、こういうふうに骨があったんだ」


 悟がもう一方の手で指の付け根から先をたどると、則人も同じようにしてみせた。


「その間に、膜が張ってるんだって」


「ずいぶん長い指になるんだね」


 美緒はお盆を胸元へ抱え直し、二人の手を見比べた。


「ぼく、傘みたいだと思った」


「ああ。骨の間に布があるみたいに?」


「そう!」


 声が弾んだ瞬間、則人は自分の口元を押さえた。悟と目が合い、二人で肩を揺らす。


「ちゃんと気をつけてるじゃない」


 美緒が笑うと、則人は少し得意になった。


「もう、図書館じゃないけどね」


「でも、この距離なら小さい声でも聞こえるよ」


「うん」


 別の席から呼ばれ、美緒は返事をして仕事へ戻った。皿を置いてきた咲子が、その入れ替わりに二人の近くへ来る。


「翼のことは、お兄さんが全部説明してくれたの?」


「どこを見たらいいか教えてくれたんだ。ぼくたち、写真ばっかり見てたから」


「説明も、ちゃんと書いてあったんだよ」


 悟が続けた。


「でも、写真のどこのことか分かんないところもあって。そしたら、則ちゃんが小さい図を見つけた」


「悟は、読み方を教えてくれたよ」


 二人が互いを指さすので、咲子は頷いた。


「二人でも調べられたんだね」


「うん。お兄さん、ぼくたちが探してる間、待っててくれた」


 則人は、図鑑の向こうで自分たちを見ていた青年を思い出した。


 分からないところがあれば、すぐに答えを教えることもできたはずだ。けれど青年は、則人と悟が同じところへ指を置くまで急かさず、二人が顔を上げると頷いてくれた。


「親切なお兄さんだったね」


 咲子にそう言われると、自分が褒められたわけではないのに、則人まで嬉しくなった。


     ◇


「その人も、本を読みに来てたのか?」


 ゴンさんが尋ねた。


「勉強してた。問題集とか、いっぱいあって」


「じゃあ、勉強の途中で教えてくれたんだな」


「うん。大学生かと思ったんだけど、まだ入ってないんだって」


 則人が説明しかけると、悟が横から言葉を足した。


「高校は出たけど、もう一度受験するんだって言ってた」


「ああ。受験勉強をしてたのね」


 ミドリが頷く。


「どこに行きたいかも聞いたの?」


「T大。そこで生物学を勉強したいんだって」


「生き物のことが好きなんだね」


「うん。分かったと思ったら、また分かんないことが出てくるんだって」


 則人は、机の上に置いた手をもう一度開いた。


 終わらないじゃないかと言ったら、青年は笑っていた。勉強が増えて困るという顔ではなく、まだ先に面白いものがあると分かっているような顔だった。


「話してる時、楽しそうだったよ」


「好きなことを聞いてもらうと、つい話したくなるものね」


 ミドリはそう言って、隣のジコンへ目を向けた。


「何?」


「別に。心当たりがありそうな人がいるなと思っただけ」


「僕、まだそんなに話してないよ」


「今日はね」


 ゴンさんがカウンターの中で笑ったので、ミドリは今度はそちらを見た。


「ゴンさんもですよ」


「俺は話を聞いてただろ」


「今のところは」


 二人揃って少し口を閉じた。則人と悟は顔を見合わせ、とうとう声を出して笑ってしまった。


 咲子が次の料理を運びに離れてからも、則人は青年のことを少し話した。眼鏡をかけていたことや、ノートに難しそうな式が書いてあったこと。説明を聞いたあとは、自分たちだけでも続きを読んでみたこと。


 皆は相槌を打ちながら、それぞれの仕事や食事の手を動かしていた。それでも話し終わるのを待っていてくれるので、則人は思い出したことを、慌てずに一つずつ伝えられた。


     ◇


「翼といえば、あれもな」


 ゴンさんが、棚のフィギュアへ顎を向けた。


 ジコンがすぐに顔を上げる。


「ああ、あの怪獣。翼を閉じてる時と、広げた時で随分印象が違うんですよね」


「そうなんだよ。初めて広がったところがよかった」


「立ってるだけだと、あんなに大きいと思わなくて。画面いっぱいになるのがいいんですよ」


 則人が棚を見ると、「光の巨人」の隣に、翼を持つ怪獣が置かれていた。


 二人が何を話しているのか、そこまでは分かった。けれど、別の作品に出てきた似た怪獣や、昔の撮影の見せ方へ話題が移るにつれ、少しずつ分からなくなる。


 ジコンが両手で翼の広がり方を示すと、ゴンさんも布巾を持ったまま身を乗り出した。料理を運んでいた咲子が、通りがかりに二人をちらりと見る。


「俺は、その前に一拍あったのがな」


「分かります。すぐに飛ばないところがいいんですよ」


「そう。あそこで一度、こっちを向くだろ」


 声が、だんだん大きくなっていた。


 則人は悟と目を合わせ、それからゴンさんを見る。


「ゴンさんたちも、声、大きくなってるよ」


「ここは図書館じゃないぞ」


「仕事中ではあるけどね」


 奥から、奥さんの声が飛んできた。


 ゴンさんが振り向くと、出来上がった料理がカウンターに並んでいる。


「冷める前に、そっちをお願い」


「お、おう。今、行く」


 ゴンさんが皿を持ち上げると、悟が則人へ顔を寄せた。


「同じこと言われてる」


「ぼくたちは、手を洗ってこい、だったけどね」


 二人が笑っている間に、ジコンはもう一度、棚の怪獣を見た。それから則人たちへ視線を戻し、少し考えるように口を開く。


「でも、こういう話を聞いてると、コウモリの怪人で一本考えてみたくなるな。例えば――」


「それ、言わないで!」


 則人が慌てて止めた。


 ジコンの言葉が途切れる。皿を運び終えて戻ってきたゴンさんも、「お、どんな」と言いかけた口を閉じた。


「え?」


「そういう話、先にしないでよ」


 則人は眉を寄せ、唇を少し尖らせた。


「ぼく、毎週楽しみに見てるんだから」


 ジコンは一瞬きょとんとしたあと、ようやく則人の言いたいことが分かったらしい。


「ああ、ごめん。まだ決まった話じゃなくて、今ちょっと思いついただけなんだ」


「でも、聞いちゃったら、出てきた時に分かっちゃうじゃん」


「そっか。そうだね」


 ジコンは頷き、続けかけた説明を飲み込んだ。


「じゃあ、続きは言わない」


「うん」


 則人は、それを確かめるようにジコンを見ていた。


 作者と話せるのは嬉しい。今日だって、自分の話を聞いてもらえたことは嬉しかった。けれど、次にどんな怪人が出てくるかまで、先に知りたいわけではない。


 テレビに初めて現れた姿を見て驚きたいし、キッドがどうやって立ち向かうのかも、自分で考えながら見たい。


 今ここで聞いてしまったら、せっかくのその時間に、「あの時聞いた話だ」が混ざってしまう。


 ミドリがジコンの隣で小さく笑った。


「打ち合わせは、また今度ね。ここには、楽しみに見てくれてる人がいるんだから」


「分かった。僕が悪かったよ」


「俺も、つい聞きたくなっちまった。悪い悪い」


 ゴンさんまで謝ったので、則人はようやく肩の力を抜いた。


「まだ見てないところは、テレビで見るんだからね」


「了解」


 ジコンが素直に頷くと、悟も安心したように麦茶へ手を伸ばした。


 少しして、ジコンがゴンさんへ向き直る。


「さっきの、昔の怪獣の話なら大丈夫かな」


「それは、いいよ」


「ちゃんと許可が必要になったな」


 ゴンさんが笑う。則人もつられて笑ったが、まだ見ていない話だけは、ちゃんと秘密にしておいてほしかった。


     ◇


 注文が重なってゴンさんが厨房へ戻ると、特撮談義はいったん途切れた。


 ジコンも食事を再開し、ミドリの言葉に時々頷いている。則人と悟は出してもらった料理を食べながら、棚の怪獣が出ている作品を見たことがあるか、互いの記憶を確かめていた。


 店の端では、ぬらりひょんが湯呑を手にしていた。


 美緒が近くの空いた席を拭いていると、ぬらりひょんはジコンの方を見たまま、低く笑った。


「子供に叱られておったな」


「時根さん、悪気はないんですけどね」


 美緒も声を落とす。


「でも、則ちゃんが毎週楽しみにしてるのは、本当ですから」


「うむ。作った本人が先を教えてしまっては、待っておる方も困るのう」


 片づけを終えた咲子が、お盆を抱えて近くへ来た。


 猫耳をつけている今の美緒には、咲子と同じように、ぬらりひょんの姿がはっきり見えている。二人は周囲の話し声に紛れるほどの小声で応じ、ぬらりひょんも湯呑を置かずに話を続けた。


「あの男は、好きな話をしておる時に、いい顔をするのう」


「ゴンさんと会うと、いつもああですよ。この前の話の続きが、すぐ始まるんです」


「見ておれば分かる。わしも、ああいうところは好ましいと思うよ」


 ジコンがミドリに何か言い返し、少し困った顔で笑った。ぬらりひょんも目を細めたが、やがて思案するように首を傾げる。


「ただ、どうにも嗅ぎ慣れん匂いがするんじゃ」


 美緒の布巾を動かす手が止まった。


「時根さんの?」


「うむ」


「臭いってこと?」


「いや、そういうのではないよ」


 ぬらりひょんは軽く首を振った。


「馴染みのある匂いなら、何の匂いかと、いちいち考えんじゃろう。だが、あの男のは、どうにも覚えがない」


 美緒はジコンの方へ目を向けたが、自分には何も分からなかった。咲子も同じ方を見てから、ぬらりひょんへ視線を戻す。


「前に会った時も、気になっていたんですか」


「うむ。何度会っても、そこだけはな」


「何の匂いかは、分からないんですね」


「分からん。わしの知っておるものとは、どこか違うんじゃが……うまく言えんものじゃな」


 ぬらりひょんは、困ったように口元を緩めた。


 誰かを遠ざける時の言い方ではなかった。ジコンを睨むこともなく、いつもの席で落ち着いて茶を飲んでいる。


「あの男が嫌いなわけではないんじゃ。ただ、親しくなったからといって、何の匂いかまで分かるものでもないらしい」


「ふうん……」


 美緒が相槌を打ったところで、別の席から声が掛かった。


「美緒ちゃん、注文いい?」


「はい、今行きます」


 美緒はすぐに顔を上げた。咲子もお盆を戻しに向かい、ぬらりひょんは話を切って湯呑へ口をつける。


 少し向こうでは、ジコンがミドリへ皿を寄せていた。


「こっち、食べる?」


「話すのに夢中で、忘れてたんでしょう」


「まだ温かいよ」


「そういう話じゃないんだけど」


 そう言いながらも、ミドリは差し出された皿へ箸を伸ばした。ジコンもようやく落ち着いて食事を始める。


 ぬらりひょんはそのやり取りを眺め、湯呑を持ったまま肩を揺らした。


     ◇


「則ちゃん、そのお兄さんには、ちゃんとお礼を言えた?」


 咲子に尋ねられ、則人は口の中のものを飲み込んでから頷いた。


「言ったよ。分かりやすかったって」


「帰る時も、挨拶した」


 悟が付け加える。


「勉強してたから、声は掛けなかったけど。こうやって」


 小さく頭を下げると、則人も真似をした。


「そしたら、お兄さんも顔を上げて、頷いてくれたんだ」


「それなら、よかった」


 咲子は二人の前の皿を少し寄せ、置き場所を整えてから仕事へ戻った。


 則人は麦茶のコップを両手で持った。


 図書館では、聞きたいことが次々に出てきた。青年がいなかったら、コウモリは飛ぶネズミなのか、小さくなった恐竜なのかと、二人でずっと言い合っていたかもしれない。


「また会えたら、ほかのことも聞いてみたいね」


 則人が言うと、悟も頷いた。ただ、すぐに少し考える顔になる。


「でも、勉強してるかもしれないよ」


「そっか」


 青年の机には、問題集や参考書が何冊も重なっていた。教えてくれたあとも、すぐにノートへ戻っていたことを思い出す。


 則人はコップを置いた。


「じゃあ、先にぼくたちで調べよう」


「何を?」


「今日、見てないところ。読んでみて、それでも分かんなかったら聞く」


「その方が、何を聞いたらいいか分かるね」


 悟が頷くと、則人も嬉しくなった。


「分かったことも、話せるし」


「お兄さん、知ってるかもしれないけど」


「じゃあ、ぼくたちも分かったよって言うんだよ」


 悟は少し目を見開いてから笑った。


「それなら、言えるな」


 空いた皿を下げに来た美緒が、二人の顔を見比べる。


「次に図書館へ行く相談?」


「うん。今度は、違うページもちゃんと読んでみる」


「また面白いことが分かったら、聞かせてね」


「いいよ」


 則人が答えると、悟もすぐに続いた。


「今度は、ぼくたちで見つけてくる」


「楽しみにしてる」


 美緒は皿を持って離れていった。途中でゴンさんに呼ばれて返事をし、そのまま次の料理を受け取る。


 カウンターの近くでは、ジコンがまた棚を指さしていた。則人が念のため顔を向けると、ちょうど目が合う。


「昔の作品の話だよ」


 先に言われて、則人は頷いた。


「なら、いい」


「見張られてるな、俺たち」


 ゴンさんが言うと、ミドリが笑った。


「私が言うより、効いてるみたいですね」


「ミドリの話も聞いてるよ」


「ええ。聞いてはいるわね」


 ゴンさんが吹き出し、ジコンも何か言い返しかけて、結局笑った。則人と悟もつられて笑う。


 図書館で教えてもらったことを話したら、コウモリから恐竜へ、そこから映画や怪獣へと話が広がった。途中ではジコンを止めなければならなくなったけれど、皆に聞いてもらえてよかった。


 まだ、誰かに話せることがあるかもしれない。


 則人が悟へ顔を寄せると、悟もちょうど、図鑑の別の写真を思い出していたらしい。どの辺りのページだったか、二人で小声の相談が始まった。


 向こうでは大人二人が、こちらでは子供二人が、それぞれ少し前かがみになって話している。


 ゴンさんの奥さんは、出来上がった料理を並べながら、その様子を見て笑った。


「好きな話になると、みんな同じだね」


 則人は顔を上げ、それから悟と目を合わせた。


 二人の間に図鑑はなかった。それでも、手を広げれば、さっき見た翼の形を思い出せた。


 あのお兄さんも、こんなふうに笑っていた。


 則人はもう一度指を開き、悟の話の続きを聞いた。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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