第10話「まだKIDだった!」
第10話「まだKIDだった!」
内田紀人 作
「お茶飲む?」
「飲まんわ!」
「えー!」
「なぜ残念そうなんじゃ!」
則人の笑い声が響く。
ぬらりひょんは、また大きなため息をついた。
その横では。
狐が、静かに二人を見ている。
「まったく、お前というやつは……」
「へへへ」
則人は笑いながら、自分の胸をぽんと叩いた。
ぽふっ。
「…………あ」
手に当たった感触に。
則人の動きが止まった。
改めて。
自分の姿を見る。
大きな頭。
手作りの身体。
腰には、ゴンさんにもらった変身ベルト。
「…………」
ぬらりひょんが眉を上げる。
「どうした」
則人の顔が。
みるみる青くなった。
「ぼく……」
「なんじゃ」
「ぼく……まだKIDだった!」
「今気づいたのか!?」
ぬらりひょんの声が響いた。
「だって、さとる君が戻って、妖怪が見えて、ぬらりひょんの名前当てて――」
「最後のは関係ないじゃろ!」
「あるよ! すごかったもん!」
「自分で言うな!」
則人は笑いかけて――。
また止まった。
「…………児童館」
「ん?」
「児童館ーーーっ!」
今度は。
則人の声が町に響いた。
そもそも今日は。
学校から児童館へ向かう途中だったのだ。
怪人を見つけて。
KIDになって。
さとるの話を聞いて。
妖怪と話して。
ぬらりひょんの名前を当てて。
すっかり忘れていた。
「遅れちゃう!」
則人は、その場で着ぐるみに手をかけた。
「待て待て待て!」
ぬらりひょんが慌てて止める。
「なに!?」
「ここで脱ぐつもりか!」
「だって急がないと!」
「だからといって、こんなところで着替えるやつがあるか!」
「下に服着てるよ?」
「そういう問題ではない!」
則人は首を傾げた。
「じゃあ、どこで脱ぐの?」
「人から見えんところへ行け!」
「めんどくさいなあ」
「当たり前じゃ!」
少し離れた。
人目につかない場所へ移動する。
則人は急いで着ぐるみを脱いだ。
「よいしょ……!」
大きな頭。
身体。
変身ベルト。
全部まとめて。
大きな袋へ押し込む。
ランドセルを背負い直す。
「よし!」
袋を持つ。
「じゃあ、ぼく行くね!」
則人はぬらりひょんへ手を振った。
狐にも。
「狐も、じゃあね!」
「おい。走るなら気をつけ――」
ぬらりひょんが言い終わる前に。
「児童館ーーーっ!」
則人は走り出した。
「……聞いとらんな」
ぬらりひょんは。
また。
深いため息をついた。
◇
「はあ、はあ……!」
児童館へ着いた頃には。
則人は息を切らしていた。
職員が則人を見る。
そして。
ランドセルの横にある。
大きな袋を見る。
「則ちゃん、今日もその大きい袋持ってきたの?」
「うん!」
「お母さんに、置いてきなさいって言われてなかった?」
「言われた!」
「じゃあ、どうして持ってきたの?」
則人は胸を張った。
「大事だから!」
「……そう」
職員は。
それ以上聞かなかった。
則人は。
何事もなかったような顔で。
児童館へ入っていった。
◇
夕方。
児童館を出た則人は。
いつものように。
ゴンさんの店へ向かった。
扉を開ける。
「ただいまー!」
「おう、ノリちゃん」
「ノリちゃんって言わないで!」
いつものやり取り。
それだけで。
則人は、なんだか少し安心した。
「ゴンさん! 聞いて聞いて聞いて!」
「一回で聞こえてる」
「今日ね! 本物の怪人がいた!」
「へえ」
「セミスピーカ!」
「テレビに出てるやつか?」
「そう!」
則人は。
大きくうなずく。
「でもね、さとる君だった!」
「ほう。そりゃまた、すごい話だな」
「本当なんだって!」
「はいはい。それで?」
「それでね、ぼくKIDになって――」
「ほうほう」
「さとる君の話を聞いたの!」
「へえ」
「それからね――」
「待て待て」
ゴンさんが手を上げた。
「一個ずつ話せ」
「え?」
「お前の話の方が、セミスピーカより大音量になってるぞ」
「…………あ」
則人は。
口を閉じた。
さっきまでの出来事を思い出す。
「……じゃあ、一個ずつ話す」
「そうしてくれ」
則人は椅子に座った。
そして。
今日あったことを。
最初から話し始めた。
本物のセミスピーカを見つけたこと。
怖かったけれど。
KIDになったこと。
怪人の中にいたのが。
隣のクラスのさとるだったこと。
さとるは。
本当は自分の話を聞いてほしかったこと。
大きな声にすればするほど。
みんなが遠ざかっていったこと。
そして。
最後には。
さとる自身が。
「元に戻りたい」
と言ったこと。
ゴンさんは。
時々相槌を打ちながら。
黙って聞いていた。
「それでね!」
「うん」
「さとる君、元に戻ったんだよ!」
「へえ。そりゃよかったな」
「うん!」
則人は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、めでたしめでたしか?」
「まだある!」
「まだあるのか」
「ぬらりひょんにも会った!」
「今度はぬらりひょんか」
ゴンさんは苦笑した。
「今日はずいぶんにぎやかな日だったんだな」
「そうなの!」
則人は身を乗り出す。
「ぼく、ぬらりひょんの名前当てたんだよ! 本人が名乗る前に!」
「へえ。そりゃ大したもんだ」
「すっごい変な顔してた!」
「そりゃ、本人もびっくりしただろうな」
「それでね、狐も見えるようになった!」
「狐まで出てきたのか」
「うん。でも誰なのか分かんない」
「そうかあ」
ゴンさんは。
まるで。
子供の不思議な冒険話でも聞くように。
のんびりとうなずいた。
「そのうち分かるかな?」
「さあなあ」
ゴンさんは肩をすくめる。
「でも、会えたんなら」
「うん」
「また会うこともあるんじゃないか?」
「そっか!」
則人は。
簡単に納得した。
ゴンさんは笑う。
そして。
ふと。
大きな袋へ目をやった。
「ところでノリちゃん」
「ノリちゃんって言わないで」
「じゃあ則人」
「なに?」
ゴンさんは袋を指さす。
「さっき、KIDになったって言ったな」
「うん!」
「どこで着替えた?」
「セミスピーカの前!」
即答だった。
「人がいるところで?」
「いたよ」
「…………」
ゴンさんは額を押さえた。
「……お前なあ」
「だって怪人がいたんだよ!」
「まあ、お前の話が本当なら」
「本当だって!」
「分かった分かった」
ゴンさんは笑いながら手を振った。
「その時は仕方ないとしてだな」
「うん」
「怪人と戦うために変身するとき以外は」
「うん」
「人前で着替えないこと」
「えー」
「えー、じゃない」
「でもKIDだよ?」
「KIDでも着替えは着替えだ」
「変身だもん」
「着替えだ」
「変身!」
「着替え!」
「変身!」
「着替え!」
「変身!」
「着替え!」
二人は。
しばらくにらみ合った。
「…………」
「…………」
先に目をそらしたのは。
則人だった。
「…………分かったよ」
「本当か?」
「怪人と戦うためじゃない時は、人前で着替えない」
「よし」
ゴンさんがうなずく。
則人は。
少しだけ口を尖らせた。
それでも。
大きな袋は。
ちゃんと自分の横にある。
今日。
本当に怪人を見た。
怖かった。
逃げたくもなった。
それでも。
さとるの話を聞いた。
そして。
さとる自身が。
元に戻りたいと言った。
「…………」
則人は。
大きな袋を見て。
少しだけ笑った。
「ゴンさん」
「今度はなんだ?」
「ぬらりひょんってさ」
「うん」
「本当に勝手に人んち入って、お茶飲むのかな?」
「…………」
ゴンさんは。
則人を見る。
セミスピーカ。
さとる。
KID。
妖怪。
ぬらりひょん。
あれだけ。
いろいろ話したあとで。
一番気になっているのは。
そこらしい。
「……そこが一番気になるのか?」
「うん!」
則人は。
元気よく答えた。
――第一章 セミスピーカ編 完
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
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ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




