05「殴りてぇ」
とりあえずわかったことが一つ。
誰かからの好意でステータスが一時的に上がる。軽度な好意で微上昇。なら、もっと好かれたならどうなるんだろうか。
でもこのスキル、どうしたらいいんだろうか。
察するに、側にいる人間から好かれていれば強く、嫌われればダメージ、というスキル。
俺がちゃんとイケメンとして生まれ変わっていたら大当たりのスキルだっただろう。
なんでこの顔のままでこんなスキルなんだよ……これならスキル無しの方がマシだったんじゃないだろうか。中途半端な所だけ願いを叶えやがって、あのクソ天使。
この感じだと生まれ変わりっていう所が叶えられなかった訳で、それ以外は叶えられたという事だろうか。
記憶の引き継ぎに関しては、まあ俺がそのまま転移させられた訳だから問題なく叶えられている。
封印スキルをランダムで一つ、これもまあ叶えられている。ただこれが封印されるほど強いスキルなのか、使えなくて封印されていたのかはまだ不明だ。
戦争とは遠い地方、これもまだ不明だ。でも、町を見る限りは平和そうだから、たぶん叶えられているんだろう。
裕福で容姿端麗な両親の元に生まれ変わる。
ここだ、ここが叶えられていない。
一番大事な所じゃないか。やっぱりあの天使にもう一度会う事があれば、殴るなりしておいた方がいいな。
「ちょっと奥さん見てあれ……」
「あの恐ろしい顔……あれは犯罪者の顔ね……」
色々と考えていたらどうにも顔に出ていたらしい。
道端で話をしている奥様方が俺をちらちら見ながら話をしていた。
ちょっと考え事をしているだけでそんな顔に見られるとかやってられないな……。
しかし日本でもこっちの世界でも、人の反応っていうのはあまり変わらないもんだな。
男は笑うだけで済むことが多かったが、女は露骨に怖がることがあった。
どちらも嫌ではあったが、何もしていないのに怖がられて、勝手に嫌悪感を抱かれるのは納得がいかなかった。
学校でも陰で色々言っていたのは大体女だ。やだーきもーいとか俺に聞こえるように言ってくる奴もいたな。思い出すとイライラする。
「ひっ! 凄い顔でぷるぷる震えてる……!」
「衛兵さん呼んだ方が……」
ああ、また顔に出ていたか。いかんな、昔の事なんか思い出すもんじゃない。
『恐怖心からの嫌悪を確認。ダメージを受けます』
「ぐはっ!」
不意のダメージによって俺はその場にうずくまる。マジなんなんだよこのスキル……。
「ちょっと突然へたり込んだわよ……」
「関わり合わない方がいいわよ、行きましょう……」
ひそひそと話しながら奥様方はその場を去っていった。うん、さっさとどっか行ってくれ。
脱力して俺は少しその場に座り込む。
ああ、なんで俺ってこんなに不幸なんだ……。
しかもこれって前世より生きるのハードモードじゃねえか。この歳で金も無く、住むところも無く、人に嫌われる度にダメージ。耐えられなくはないが突然だし、結構痛い。
「あの~、どうかされましたか? こんな場所で座り込んでいたら危ないですよ?」
俺がその場で悲観的になっていると、女の子の声が聞こえた。
心配そうなその声の方に、俺は顔を向ける。
美少女だった。
桃色の髪を両サイドで纏めて、そこには可愛いリボンが付けられている。ツーサイドアップとかツインテールとか呼ばれているやつだろう。
ボリュームはそこそこで、肩に髪が少しかかるくらいだ。それに、綺麗な青みがかった瞳の色。こんな髪色、髪型、瞳の色なんて日本じゃそうそう見ないから、俺は少し感動した。
まだ俺と歳はそれほど違わないだろう。
しかも、俺なんかに対して心配そうに声をかけてくれるなんて。
この子は天使か何か? とも一瞬思ったのだが、俺が顔を向けた瞬間、その女の子は少し困ったような顔をした。
ああ、俺の顔を見ずに声をかけたのか。
本当は優しい女の子なんだろうな。ただ、声をかけた相手がこんなのだと思わなかっただけだろう。
困惑気味の女の子は、俺の顔を少し見つめて、今度はまた違う言葉をかけてきた。
俺も、今までに経験したことのない言葉だった。
「ウホホ、ウホ?」
いい発音だった。芸人さんとかがガチな真似をするやつに思えた。
この子は天使かと思ったけど、天使じゃなかった。いや、俺の知る天使と同類だと考えるなら、ある意味この子は天使なのかもしれない。
そうして俺は思った。
……殴りてぇ、と。




