42「続・ミリィに質問タイム」
さて、色々と聞きたい事があったはずなのだが、ミリィへの天界からのお仕置き? とやらで頭の中にあった色んな疑問が吹き飛んでしまった。
「あー……そういえばさ、さっき失礼な事を考えてるのは分かる、とか言ってたけどよ。……お前って、人の心とか読めたりするのか?」
とりあえず気になった事を聞いてみる。
そう言えば何度かミリィは俺が妙な事を考えたりすると、釘を刺してくることがあった。もしもそういった能力があるなら、俺も今後は気を付けた方がいいだろう……。
「心を読む……ですか? 天使長だった昔でしたら、そういった能力もありましたけど……今のわたしには無いですね。でも、表情から考えてる事はある程度推測するのは得意ですよ。元々は読めていた訳ですからね。……それと、ゴンゾーさんはもの凄く表情に出やすいので、そういう時は非常にわかりやすいだけです」
ああ、そういう事か。
確かに日本に居た頃も友人たちに、お前は表情に出やすい、なんて言われたことがあったっけ。でも、ミリィがそんな能力を持って無くてよかった……。
「そういえばわたし、ゴンゾーさんのステータスをまだ見てませんでしたね。『情緒の天秤』は間違いなくゴンゾーさんの中にあるとは思うんですが、直接は確認できていませんでしたから……確認してもいいですか?」
そう言えばこいつの本来の任務は俺の中にあるスキルの回収だったな。
何度か発動しているのを見ているだろうけど、直接確認はしておかないといけないんだろう。
「ああ、いいけど……ちょっと待ってろよ。確かギルドカードは無くさないようにバッグに入れといたはず……」
俺はミリィに自分のステータスを確認させるために、ステータスも表示できるというギルドカードをバッグから取り出そうとした。
「いえ、そういうのは無くても大丈夫ですよ。……ステータス、オープン!」
ミリィがまたよくわからない呪文を唱えたが、さすがに何をしたのかくらいは分かる。
だが、俺からは何も見えていない。何か勝手に覗き見されているようで、ちょっとだけ不快だが……ああ、だから確認していいかって許可を取ったのか。
「カードに頼らなくても他人のステータス見れるんだな。何だったか……鑑定、とかいうスキルなのか?」
「いえ、これは鑑定スキルではなくて天使としての能力……あ! 下級天使見習い補佐代理心得ですけどね! 詐称じゃないですよ!?」
さっきの天界からのお仕置きが怖かったのか、今の自分の階級を強調している。さすがに種族としての天使、という事くらいは分かると思うんだが、面倒くさいな。
「ふんふん……レベル十ですか! ステータスもですが、結構高いんですね。それに剣術レベル一に格闘術レベル一……あ、言語習得レベル一もちゃんとあって良かったです! あった方がいいと思って転生設定の時に付けておいたんですが、役に立ちましたね!」
やっぱりあの言語習得とか言うスキルはミリィが付けておいてくれたのか。確かにこれが無かったら、今頃は言葉も通じないまま、ミリィが来るまで何もできなかっただろう。
まあ、こいつが転生を間違えなければ一番良かったんですけどね! もっと言うなら間違って殺すとかありえないミスもありましたね!
「えっと……ああ、ちゃんと情緒の天秤はありますね。よかったですけど……そういえば、気を付けてくださいね? このスキルの説明、まだあまりしてなかったと思うんですが、二、三十人から一度に強く拒絶されたり嫌われたりすると、今のゴンゾーさんだと最悪死んじゃいますから……」
「怖ぇーよ! そういう大事な事はだからもっと早く言っとけ!」
実際一人に嫌われるだけでも結構痛いんだ。確かに三十人近い人数だと俺の体は持たないだろう。
「まったく……恐ろしいスキルだな。プラスの効果があるとはいえ、頼れるのはやっぱり自分の剣術とか格闘術だな……」
「それは元々ゴンゾーさんが長年鍛えて習得できたものですからね。継続は力なり、努力が実を結ぶ、っていうやつですよ!」
「努力ね……ああ、そういえば俺も魔法ってやつを使ってみたいんだが、できるようになるのか? メルみたいに生活魔法スキルを持てたりとか」
さすがにいきなりメルのように生活魔法レベル二、何ていうのは無理だろう。スキルレベルは一でも結構凄いというのは、この短い異世界生活でも充分にわかった。スキルのレベルの一の差はかなり大きい。
「そうですね……ゴンゾーさんはこの世界に来る際に体を作り替えた事で、魔力がある体になったので何も問題無いですよ。ですが、魔法は学問に近いので、しっかり勉強しないと……」
うん、今ちょっと聞き捨てならない事があった。
「ちょっと待ってくれる? 体を作り替えたって何なのかしらミリィちゃん?」
とりあえずなるべく怒気を出さないように優しく聞いてみる。
「こ、怖いですよゴンゾーさん……? あ、あの、最初にわたしがゴンゾーさんを死なせてしまった時点で肉体が無くなったわけですから……。というか、最初に天界で会った時も、ゴンゾーさんは既に魂だけの存在だったんですよ? だから転生なんかの際には、この世界に適応した肉体へ作り替えられるんです。地球とこの世界では環境も全然違いますからね。……まあ、わたしが転移と転生のボタン押し間違えちゃったせいでややこしくなったんですけど……」
衝撃の事実だ。まあ、転生じゃなくて転移だよなと最初から思っていたけど……結局こいつのボタンの押し間違えとか言うしょうもないミスかよ。
「そんなケアレスミスで俺は裕福で美男美女の両親の元に生まれ変われずにこんな事になってんのか!」
「うわーん! だから責任感じて一生お仕えするつもりで来たんじゃないですか! 上からの命令だってありますけど、本当に悪いと思ってるんですよー!」
涙目でミリィは訴えかけてくる。
まあ起きてしまった事はもうどうしようもないし、今の生活そのものはそんなに嫌いじゃない。
「……はぁ、もういいよ。しかし、作り替えたって言っても日本に居た頃と何も変わった感じはしないな」
魔力とかは何も感じないし、体を動かしても何かが変わった感覚は無い。ステータスが上がったという時に体の軽さや力が入る感覚はあるが、それくらいだ。
「元々あった肉体を再現してこちらの世界に最適化しただけですからね。だからゴンゾーさんの得意だった剣術なんかもそのままなんですよ」
……なんか、軽く言ってるけど改めて考えると、やっぱりちょっと怖いな天界とか天使ってやつは。ミリィは悪い奴じゃないってのはさすがにもうわかるけど、天界とかのそういう技術力みたいなものとか、倫理観が恐ろしい。
ミリィは茶化したり小馬鹿にしてもまあ……って感じだが、あいつの上司とか関係者にもしも会う事があればちゃんとした態度で向き合った方がいいな。怖いし。
「まあ、魔法はそのうち勉強するか。……しかし、お前の伝手とかコネで何かできたりしないのか? これだけミスが続いたんなら、代わりのスキル何かくれるとかそういうの」
そう、そもそも間違いで俺を殺したお詫びにスキルをくれたんだ。そこから更にミスが続いた上にくれるはずのスキルさえもミス。せめて何かしら使えるスキルとか特典があってもいいんじゃないだろうか。
「今のわたしの階級ではコネとかは何も……。ですが、加護なら知り合いに頼めば何とかなるかもしれませんよ。『アイテムボックス』っていう加護なんですけど」
アイテムボックス!
ゲームなんかでも定番の便利スキルじゃないか。
「俺の知ってるゲームとかだと超絶便利スキルだな。空間にアイテム入れ放題、時間が経過しないから食べ物も腐らない、っていう感じなんだが」
「スキルでは無く正確には加護ですけど……まあ、概ね合ってますよ。天使長だった頃に仲良くしてた、時空の神のティムスちゃんに定期報告の際にお手紙を送っておきます。ティムスちゃんもこの世界の担当ですし、同じ加護を持った人もこの世界にそこそこ居るはずですから、珍しいですけど隠さなきゃいけない程の加護では無いですし、丁度いいと思います!」
いいね! やっぱりそういう分かりやすく強いスキル……いや加護か。違いがよくわからんがまあ今はいいだろう。
アイテムボックスがあるだけで正直食いっぱぐれる事は無いだろう。運送だけでもかなり稼げるだろうし、食べ物の長期保存ができればそれだけでもかなり役に立つ。
「あ、でも仮に加護を貰えたとしても、魔法が少しは使えるようになっていないとアイテムボックスの開閉ができないかもしれませんから……結局魔法は勉強しておいた方がいいですよ」
「む……ああ、それもそうだな」
確かにアイテムボックスという空間を開くには多少なり魔法の力が必要だろう。今の俺は魔法について何もわからない素人だ。なら基本くらいは最低でも知っておかないとな。
まあミリィの言う事だし、貰えない可能性だってあるが……魔法の勉強は無駄にはならないだろう。
とりあえず、また一つ希望が持ててきた。




